マクルーハンはメッセージ
メディアとテクノロジーの未来はどこへ向かうのか?

未 読
マクルーハンはメッセージ
ジャンル
著者
服部桂
出版社
イースト・プレス 出版社ページへ
定価
1,400円 (税抜)
出版日
2018年05月20日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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メディアとテクノロジーの未来はどこへ向かうのか?
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服部桂
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1,400円 (税抜)
出版日
2018年05月20日
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総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
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レビュー

メディアとは、辞書的な意味を述べると「新聞やテレビ、ラジオなどの情報媒体」となる。今の時代なら、代表格としてインターネットが加わるだろう。ところが、メディア論の大家、マーシャル・マクルーハンが提示したのは、極めて広範囲なメディアの世界だった。マクルーハンにとっては、メガネや電話、衣服でさえメディアである。それぞれ人間の視覚、聴覚、皮膚という身体を拡張するものとして捉えているのだ。

時代をさかのぼって、活字メディアの大革命といえば、誰しもが口を揃えてグーテンベルクの活版印刷を挙げるだろう。この新しいメディアが当時の社会に与えた影響は計り知れない。新しいメディアはいとも簡単に社会のルールを崩壊させ、新たな構図を生み出すことがある。例えば、携帯電話の誕生により広がった波紋は、海外の王室にまで忍び込んだ。新しいメディアの誕生が貴族社会を成立させているルール、ひいては権威すらも危うくさせていく――。こうした事実を露呈したのは、実に興味深い。

ではメディアとはいったい何なのか。また「メディアはメッセージである」というマクルーハンの言葉は、何を意味するのか。マクルーハン独自のアプローチでメディアについて考えを深めてみると、その本質が次第に明らかになる。それは例えば、なぜヒトラーがあれだけ大きな支持を得たのかを、メディアの観点から考察することも可能にする。インターネット全盛期の今だからこそ、マクルーハンの探究の軌跡は新鮮さを帯びている。ぜひ堪能いただきたい。

金井美穂

著者

服部 桂 (はっとり かつら)
1951年、東京都出身。早稲田大学理工学部で修士取得後、1978年に朝日新聞に入社。80年代の通信自由化の際、米通信系ベンチャー企業に出向。87年から2年間、米MITメディアラボ客員研究員。科学部を経て、出版局で「ASAHIパソコン」副編集長、「DOORS」編集委員、「PASO」編集長。94年に新聞紙面で初のインターネット連載。その後、企画報道部でデジタル面、科学部でbeを担当。2011年から同社ジャーナリスト学校シニア研究員。メディア研究誌「Journalism」編集を担当。16年に朝日新聞社を定年退職後フリーに。著書に『人工現実感の世界』(日刊工業新聞 技術・科学図書文化賞優秀賞)、『人工生命の世界』『メディアの予言者』など。訳書に『ハッカーは笑う』『人工生命』『デジタル・マクルーハン』『パソコン創世「第3の神話」』『ヴィクトリア朝時代のインターネット』『謎のチェス指し人形「ターク」』『チューリング』『テクニウム』『<インターネット>の次に来るもの』。また『デジタルテレビ日米戦争』(共訳)、『「複雑系」を超えて』(監修)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    「メディアはメッセージである」。これはマーシャル・マクルーハンの最も有名な言葉である。メディアとはコンテンツ自体ではなく、それを成立させている背景を指す。
  • 要点
    2
    マクルーハンにとってメディアとは、視覚や聴覚などの人間の身体を拡張するものすべてをいう。
  • 要点
    3
    メディアと権力は密接に関連し合い、通常は社会組織のルールに則って利用される。しかし、携帯電話などの新しいメディアは、時として社会的な空間構造を破壊する。
  • 要点
    4
    インターネットの普及は一消費者を企業と対等たらしめ、さらには、その立場を逆転させた。

要約

メディアの本質を探る

マクルーハンのメディアに対するアプローチ
Sergey Khakimullin/iStock/Thinkstock

「メディアはメッセージである」。この言葉はマーシャル・マクルーハンの最も有名な言葉といってよい。マーシャル・マクルーハンはカナダの英文学者だった。1950年代から60年代にかけて、テレビを中心とした電子メディアの本質を、短いフレーズに表現したことで、彼は一躍有名になった。

だがマクルーハンの言葉は、メディアの定義や定理を表そうと企図したものではなかった。それよりもむしろ、メディアという宇宙を探査するための道具として、役立ててもらおうと考えていた。

例えば、マクルーハンの提示した「ホットとクール」「聴覚的空間と視覚的空間」などの対立概念を、いろいろなメディアに当てはめてみよう。すると、各メディアの持つ違いが鮮明になる。そしてそこから、メディアの特性の本質が浮かび上がってくる。

われわれはたいてい物事を理解するとき、常識に当てはめて考えることが多い。しかし、未知のメディアを既知の言葉に置き換えたところで、われわれの想像力の壁に阻まれ、本質にはとうてい辿り着けない。真に有効なのは、自ら変化を起こして「場」を変えることなのだ。

メディアの環境変化がもたらすもの

人は客観的に自己を見ることが得意ではない。要するに、魚は釣り上げられて初めて、自分がそれまで「水」というものの中にいたことを認識する。これは20世紀初頭のキュビスム運動にも当てはまる。

19世紀末から20世紀初頭にかけて、人間の空間認識を大きく変えるメディアが登場した。例えばX線の発明。これにより、人間の体の透視画像を、外側から撮影できるようになった。また、動力飛行機の発明は、平面の世界だった地図を、三次元の世界へと一気に拡張した。

こうした変化をいち早く感じ取ったのが芸術家たちである。変化の兆候を形にしたのがキュビスム運動だった。時代の変化は、その渦中にいる人たちには認識されにくい。外から観察し、感覚的あるいは直感的に感じ取れる芸術家のほうが、先に感知できた。

テレビという電子メディアも同様だ。テレビ放送が本格的に始まったのは戦後のことである。そのため戦後生まれのベビーブーマーや団塊世代にとっては、新鮮なものに映ったに違いない。しかしそれ以降の世代にとっては、テレビは生まれたときから慣れ親しんだ「水」のような存在になっている。

今やテレビはパソコンの付加機能となってインターネットと融合し、デジタル放送になっている。デジタル・メディアという大きな枠組みの一つとなった今こそ、テレビなどの電子メディアを客観視し、その本質に迫ることができる。

メディアと権力

社会構造を破壊するメディア
DaLiu/iStock/Thinkstock

2000年11月14日、英国のエリザベス女王によって、バッキンガム宮殿内における王室スタッフの携帯電話使用が禁止された。同様のことは、20世紀初頭のオーストリア・ハンガリー帝国でも起こっていた。当時のフランツ・ヨーゼフ皇帝が、宮廷での電話の使用を禁止したのだ。

なぜ禁止とされたのか。宮廷とは、しかるべき社会的地位にある人のみがアクセスできる、神聖な場所である。にもかかわらず、電話は召使いの取次ぎも招待状もなく、庶民と王室をつなげてしまう。すると、君主との距離をもって特権的地位が決まるという、貴族社会のルールが無視される。挙句に、社会的な空間構造が破壊されてしまうのだ。よって電話は、権威の基底にある情報の非対称性を消失させ、均等化させる存在と呼べた。

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