マンガ『ONE PIECE』(以下、ワンピース)は、主人公である少年ルフィが仲間を集めながら海賊王を目指すストーリーだ。現在、ルフィの一味は9人いる。ルフィ、ロロノア・ゾロ、ナミ、ウソップ、サンジ、トニートニー・チョッパー、ニコ・ロビン、フランキー、ブルックだ。本書では、ワンピースに詰め込まれた「仲間力」のヒントが紹介される。
大学教授である著者によると、学生たちはとても優しく、その場に順応する能力が驚くほど高いという。しかしそれだけでは本当の仲間を作ることはできない。
1つ目の問題点は、優しさの範囲が限定されていることだ。自分の周囲の人には優しくするが、それ以外の人には関心をもたず、その場限りになってしまい、深くて強いつながりができない。
2つ目の問題点は、思考の基準を相手側に置くことだ。自分の意見があっても、空気を読んで発言しない。すると周囲からは何を考えているのかわからないように見えてしまい、嫌われもしないが愛されもしないのだ。
孤立するのが怖いのは仕方ないが、その場の雰囲気に合わせて態度を変えることはやめよう。意識すべきは、1年先、2年先にも長続きする人間関係だ。それを構築するためにベストな行動が何か、考えるようにしたい。
素直になることは難しい。自分の感情や思いを素直に表現できなかった経験は、誰もが持っているだろう。私たちは社会で生きる中で、悲しみや辛さを人前で見せてはいけないと教えられてきた。しかし、それが仲間作りのさまたげになっていることもある。
ナミは8年間、故郷の村をとり戻すためにお金を貯めていた。しかしもう少しで目標額に達するころ、故郷を支配しているアーロンに財産を取り上げられてしまう。それまで弱音を吐かなかったナミは初めてルフィに助けを求める。
また、「妖怪女」「悪魔の子」と言われ続けて育ったニコ・ロビンは、生きたいという感情を押し殺していた。仲間に迷惑をかけるくらいなら自分が死んでしまったほうがいいと考えていたのだ。しかし最後には、ルフィたちに向かって「生きたい」と叫ぶ。
助けを求められたルフィは「当たり前だ」「必ず助ける」と応える。危機的な状況に陥ったときには助けを求め、助けを求められたら絶対に応えるのが仲間というものだ。
ワンピースと同様に人気を博したマンガが『DRAGON BALL』(以下、ドラゴンボール)だ。ワンピースとドラゴンボールでは、主人公たちが作る集合体のあり方が異なる。
ドラゴンボールでは、父と母と子どもという「家族」が基本になっている。家族の安全を脅かす敵と闘いながら成長していくストーリーだ。一方ワンピースでは、家族という縛りが希薄である。ルフィの祖父や父親、義兄は登場するものの、ルフィらと共に行動することはない。
この違いの背景にあるのは、家族という存在の変化だろう。父親が一番偉かったかつての時代には、家族の存在が絶対だった。ドラゴンボールの読者世代は、家族のしがらみが残っていた最後の世代だと言えるだろう。
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