ルフィの仲間力

『ONE PIECE』流、周りの人を味方に変える法
未読
ルフィの仲間力
ルフィの仲間力
『ONE PIECE』流、周りの人を味方に変える法
著者
未読
ルフィの仲間力
著者
出版社
出版日
2018年06月15日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

大ヒットマンガ『ONE PIECE』(以下、ワンピース)を知らない人はいないだろう。麦わら帽子に赤いシャツがトレードマークの海賊、ルフィを主人公とした冒険物語である。そのストーリーの中で繰り返し強調されるのが「仲間」の存在だ。本書は「仲間」、つまりワンピースのキャラクターたちの関係性に注目し、社会学的な視点も交えながら分析している。

人間関係が希薄になってきている現代では、心から頼れる「仲間」を持つことは難しい。しかし誰しも本心では、心から信頼でき、共に困難に立ち向かう仲間が欲しいと思っているはずだ。本書では、仲間関係に欠かせないものからはじまり、仲間を集める力、仲間と助け合う力、仲間を信頼する力、仲間と成長する力、仲間と乗り越える力という「仲間力」を、ルフィたちをめぐるエピソードから読み解いている。

さらに著者は、ワンピースとドラゴンボールを比較し、キャラクターたちの関係性の違いを指摘する。単なるストーリー比較にとどまらず、時代とともに変化してきた社会構造にまで考察が及び、興味深い内容となっている。

ワンピースの名場面、名セリフを例に挙げて論じられるので、ファンにとってはとくに理解しやすいだろう。もちろんワンピースを読んだことがない人にも十分に配慮されているので、人間関係に悩むすべての人に手に取ってほしい。

ライター画像
池田明季哉

著者

安田 雪(やすだ ゆき)
関西大学社会学部教授。京都在住。国際基督教大学教養学部卒業。コロンビア大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。東京大学大学院経済学研究科・ものづくり経営研究センターなどを経て現職。人や組織のつながりかたを考察する「社会ネットワーク分析」が専門。ネットワークの形が人や組織に及ぼす影響力を、大学、企業、NPOなどと連携して研究している。『ONE PIECE』研究にも定評があり、NHK『クローズアップ現代 ~漫画“ワンピース”メガヒットの秘密~』(2011年2月放送)に出演。ルフィとロビンとの関係の進展を例にした「ゆるぎない信頼」についての独自の解説は、大きな反響を呼んだ。著書に『パーソナルネットワーク』『ネットワーク分析』(ともに新曜社)、『つながりを突き止めろ』(光文社)等がある。本書(単行本)をはじめ、著書の一部は韓国、台湾でも翻訳・出版されている。2018年から、毎日放送「VOICE」のコメンテーターも務める。

本書の要点

  • 要点
    1
    危機的な状況に陥ったときには素直に助けを求め、助けを求められたら絶対に応えるのが仲間だ。
  • 要点
    2
    さまざまな長所と短所を持つ人々が集まっているのが仲間である。仲間の弱点は、他の誰かの長所で補えばいい。
  • 要点
    3
    仲間には、厳しい階級構造はいらない。寛容でフラットな関係こそが鍵だ。遠慮せずに本音をぶつけ合える風通しのいい関係が、「仲間」という集団の力を伸ばす。
  • 要点
    4
    仲間がさらに仲間を作り、ネットワークを広げていく。仲間というネットワークをつなぎ、挫折や失敗を乗り越えてチャレンジを続けよう。そうすればどんな大きな夢でも実現できるだろう。

要約

仲間関係に欠かせないもの

ワンピースの「仲間力」
oatawa/iStock/Thinkstock

マンガ『ONE PIECE』(以下、ワンピース)は、主人公である少年ルフィが仲間を集めながら海賊王を目指すストーリーだ。現在、ルフィの一味は9人いる。ルフィ、ロロノア・ゾロ、ナミ、ウソップ、サンジ、トニートニー・チョッパー、ニコ・ロビン、フランキー、ブルックだ。本書では、ワンピースに詰め込まれた「仲間力」のヒントが紹介される。

大学教授である著者によると、学生たちはとても優しく、その場に順応する能力が驚くほど高いという。しかしそれだけでは本当の仲間を作ることはできない。

1つ目の問題点は、優しさの範囲が限定されていることだ。自分の周囲の人には優しくするが、それ以外の人には関心をもたず、その場限りになってしまい、深くて強いつながりができない。

2つ目の問題点は、思考の基準を相手側に置くことだ。自分の意見があっても、空気を読んで発言しない。すると周囲からは何を考えているのかわからないように見えてしまい、嫌われもしないが愛されもしないのだ。

孤立するのが怖いのは仕方ないが、その場の雰囲気に合わせて態度を変えることはやめよう。意識すべきは、1年先、2年先にも長続きする人間関係だ。それを構築するためにベストな行動が何か、考えるようにしたい。

仲間に助けを求める

素直になることは難しい。自分の感情や思いを素直に表現できなかった経験は、誰もが持っているだろう。私たちは社会で生きる中で、悲しみや辛さを人前で見せてはいけないと教えられてきた。しかし、それが仲間作りのさまたげになっていることもある。

ナミは8年間、故郷の村をとり戻すためにお金を貯めていた。しかしもう少しで目標額に達するころ、故郷を支配しているアーロンに財産を取り上げられてしまう。それまで弱音を吐かなかったナミは初めてルフィに助けを求める。

また、「妖怪女」「悪魔の子」と言われ続けて育ったニコ・ロビンは、生きたいという感情を押し殺していた。仲間に迷惑をかけるくらいなら自分が死んでしまったほうがいいと考えていたのだ。しかし最後には、ルフィたちに向かって「生きたい」と叫ぶ。

助けを求められたルフィは「当たり前だ」「必ず助ける」と応える。危機的な状況に陥ったときには助けを求め、助けを求められたら絶対に応えるのが仲間というものだ。

「家族」から飛び出す
jacoblund/iStock/Thinkstock

ワンピースと同様に人気を博したマンガが『DRAGON BALL』(以下、ドラゴンボール)だ。ワンピースとドラゴンボールでは、主人公たちが作る集合体のあり方が異なる。

ドラゴンボールでは、父と母と子どもという「家族」が基本になっている。家族の安全を脅かす敵と闘いながら成長していくストーリーだ。一方ワンピースでは、家族という縛りが希薄である。ルフィの祖父や父親、義兄は登場するものの、ルフィらと共に行動することはない。

この違いの背景にあるのは、家族という存在の変化だろう。父親が一番偉かったかつての時代には、家族の存在が絶対だった。ドラゴンボールの読者世代は、家族のしがらみが残っていた最後の世代だと言えるだろう。

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要約公開日 2018.09.22
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