炎上とクチコミの経済学

未 読
炎上とクチコミの経済学
ジャンル
著者
山口真一
出版社
朝日新聞出版 出版社ページへ
定価
1,650円(税込)
出版日
2018年06月30日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.5
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炎上とクチコミの経済学
炎上とクチコミの経済学
著者
山口真一
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定価
1,650円(税込)
出版日
2018年06月30日
評点
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4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.0
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レビュー

インターネットを使っていて“ネット炎上”を目にしたことがないという人は、おそらくほとんどいないはずだ。それだけネット炎上はありふれた現象で、本書によれば年間1000件以上発生しているという。

その一方でネット炎上が深刻化した際の被害は凄まじい。うまく対応できなかった場合、社会的に抹殺されることすらありえる。多くの日本の企業がソーシャルメディア活用を躊躇しているのも、こうしたリスクを踏まえてのことなのだろう。

だがソーシャルメディアは実りも大きい。リスクを恐れてチャンスを逃すには、あまりにもったいない話だ。著者の指摘するように、重要なのはネット炎上の実態を正しく把握し、過度に恐れないことである。

本書はこれまで起きたいくつもの炎上事件を参照しつつ、ネット炎上がどのような性質をもったものなのかを分析、その対策を講じている。いちネットユーザー視点から見ても、書かれていることは至極まっとうで、これからのソーシャルメディア活用における基礎教養といってもいい。

個人としても企業としても、ネット炎上はまったく他人事ではない。巻きこまれないように意識することはもちろんのこと、巻きこまれたときにどう対応するかで、その後の運命は大きく変わってくる。

ネット炎上の実態を正しく理解し、ソーシャルメディアを最大限活用していきたいのであれば、読むべき一冊はこれだ。

石渡翔

著者

山口 真一 (やまぐち しんいち)
1986年生まれ。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター講師。2010年慶應義塾大学経済学部卒、2015年同大学経済学研究科で博士号(経済学)を取得し、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター助教を経て、2016年より現職。専門は計量経済学。研究分野は、ネットメディア論、フリービジネス、プラットフォーム戦略等。「あさイチ」「クローズアップ現代+」(NHK)をはじめとして、テレビ・ラジオ番組にも多数出演。組織学会高宮賞受賞(2017年)、情報通信学会論文賞受賞(2017年)、電気通信普及財団賞受賞(2018年)。主な著書に『ネット炎上の研究』『ソーシャルゲームのビジネスモデル』(ともに共著、勁草書房)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ソーシャルメディアがビジネスに与える影響は大きい。ネット炎上を回避しつつ、うまくソーシャルメディアを活用するべきである。
  • 要点
    2
    炎上もクチコミも「一部の人の声が非常に大きい」性質をもっており、極端な意見や批判的な意見に偏りやすい。
  • 要点
    3
    炎上に書きこむ人の多くは「正義感」をモチベーションとしている。
  • 要点
    4
    大炎上する背景には、ネットメディアやマスメディアの影響がある。
  • 要点
    5
    炎上してしまった場合、重要なのは事実関係の公表に徹することだ。迅速な謝罪と今後の対応の明確化が求められる。

要約

一億総メディア時代の経済的インパクト

変わりゆくマーケティングトレンド
CarlosAndreSantos/iStock/Thinkstock

現代社会で欠かせないインフラ、それがインターネットだ。なかでもソーシャルメディアの普及は、誰もが自由に情報発信できる社会をつくった。総務省の調査によれば、すでに79%の人がソーシャルメディアを利用しており、20代に限れば98%だという。消費者は企業が提示する情報や身近な友人のクチコミだけでなく、多種多様な媒体から情報を得られるようになったわけだ。

こうした時代の趨勢にともない、マーケティングのトレンドも変わりつつある。1980年代は「シングルメッセージ」、つまりマスをターゲットとした旧来型のマーケティング手法が主流だったが、1990年に入ると、年代や性別によって消費者を分類する「セグメンテーション」が流行した。2000年代になると、個人を選別し、個人の属性や購買履歴などから適した広告を打つ「個人ターゲット」がおこなわれるようになり、現在は「バイラル・ソーシャルインフルエンス」が台頭してきている。これはソーシャルメディアで消費者が紹介(クチコミ投稿)しやすいようにする広告のことで、バイラル(viral)という言葉が示すように、ウイルスのように拡散されることを目的としている。

ネット炎上というリスク

ソーシャルメディアがビジネスに与える影響は大きい。ソーシャルメディアを活用している企業について調べたところ、ソーシャルメディアが売り上げや顧客増につながっていると考えている企業はとても多いことがわかった。またソーシャルメディア上の消費者同士のクチコミが、市場全体の消費額そのものを押し上げることも判明している。その額はじつに年間1兆円以上だ。

このようにビジネスにおいて、ソーシャルメディアの活用はとても重要だといえる。しかし日本企業のソーシャルメディア活用は、いまだ発展途上の段階だ。総務省の「平成28年通信利用動向調査」によれば、ソーシャルメディアを活用している企業はいまだ5社に1社程度である。ビジネスのソーシャルメディア活用の効果は多くの人が認めているものの、いまだ活用している企業は多くない。

ソーシャルメディア活用が日本企業でなかなか進まないのは、単純に「人材や知見がない」からである。逆にいうと、確かな知見をもってソーシャルメディアを運営すれば、それだけで他社との差別化につながるといえる。そこにビジネスチャンスも見いだせるだろう。

ただしソーシャルメディア活用にはリスクもある。その代表例が“ネット炎上”だ。ネット炎上とは、ある人や企業の行為・発言・書きこみに対して、インターネット上で多数の批判や誹謗中傷がおこなわれることを意味する。当然のことながら拡散を狙えば狙うほど、炎上リスクは高くなる。

ビジネスを進化させるために
Ukususha/iStock/Thinkstock

炎上リスクはいたるところに存在する。どんなに発信に気を使っていたとしても、従業員の悪ふざけ写真が店の倒産を招くこともあるし、被災時に通常の営業活動を発信しているだけで炎上することもある。ネット炎上は年間1000件以上発生しているといわれ、とくにツイッターやスマートフォンが普及した2011年以降の増加は凄まじい。

とはいえ「炎上を避けるためにソーシャルメディアを極力使わなければいい」と安易に考えるべきではない。前述したように、それでは多くのビジネスチャンスを逃すことになる。大切なのは炎上のリスクを回避しつつ、ソーシャルメディアをうまく活用することなのだ。

【必読ポイント!】 炎上とクチコミの間違った常識

炎上の参加者は全体の0.5%

炎上にうまく対応するには、炎上の実態を正しく理解することが必要である。

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