うっかりドーピング防止マニュアル

未読
うっかりドーピング防止マニュアル
うっかりドーピング防止マニュアル
著者
未読
うっかりドーピング防止マニュアル
著者
出版社
リバネス出版
出版日
2014年02月11日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.0
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おすすめポイント

あなたは、「うっかりドーピング」という言葉をきいたことがあるだろうか。2020年の東京オリンピック招致プレゼンテーションでは、日本はドーピングに対する意識が高いことがアピールされていたが、事実、日本のドーピング陽性率は、世界平均値に比べて格段に低い。それでも毎年10例前後のドーピング検査陽性報告があるが、その多くは、風邪薬などに含まれる禁止物質を確認せずに摂取してしまったうっかりドーピングによるものだという。このうっかりを防ぐべく、日本には、世界で類いを見ない「スポーツファーマシスト」という専門薬剤師が5000人以上存在する。

本書では、なぜうっかりドーピングが起こってしまうのか、日常生活に潜むドーピングの罠をいくつか紹介している。風邪薬だけでなく、サプリメントの摂取、食べ物に含まれた残留薬物の摂取によってもドーピングとなってしまうのだから驚きだ。スポーツに係わる選手、コーチやトレーナー、その他トップアスリートのケアにあたる人を対象とした書籍ではあるが、うっかりドーピングを引き起こす要因があまりにも身近なものに溢れているだけに、ぜひ自身でスポーツを楽しむ方や、家族のために正しい知識を得たいと思う方にもおすすめの一冊となっている。

また、ドーピング検査の制度や、ドーピング検査を受けることになったときの手順、禁止成分の概論など、ドーピングの基礎知識が欲しいアスリートには、ぜひ自身をうっかりドーピングから守るための必読書としていただきたい。

著者

遠藤敦
1978年、千葉県生まれ。薬剤師。東京薬科大学薬学部卒業後、国立病院にて病院薬剤師業務に2年間従事。その後、調剤薬局業務、ドラッグストアでの一般用医薬品販売などを経て、2011年、公認スポーツファーマシス認定。同年、日本初のドーピング防止活動を事業として行う株式会社アトラクを設立し、代表取締役に就任。同社にて、スポーツファーマシストの業務支援や教育活動を行う他、調剤薬局事業、薬剤師業務コンサルティングなどに携わっている。

本書の要点

  • 要点
    1
    「うっかりドーピング」とは、禁止物質を含んだ風邪薬などを摂取したがために起こる、本人が意図してないドーピングである。
  • 要点
    2
    生薬や漢方薬にも禁止物質が含まれていることがあり、さらに海外製のサプリメントには包装の含有成分に表記されずに混入している例もある。
  • 要点
    3
    ドーピングはスポーツ精神に根本的に反するものである。
  • 要点
    4
    スポーツファーマシストが活躍する世界の実現によって、スポーツ界が支えられる。

要約

本人が意図しない「うっかりドーピング」はこうして起こる

dolgachov/iStock/Thinkstock
日々の練習の成果を最大限発揮するために、うっかりはあってはならない

本書のタイトルにもあたる「うっかりドーピング」とはなにか。

著者はこんな場面を紹介している。たとえば、あなたは有名大学の駅伝部のマネージャーで、部員のサポートをずっとやってきたとする。入学から毎日休まず、誰よりも頑張ってきた部員がやっと掴んだレギュラーの座。そして訪れた、最後の箱根駅伝の大会の前日、彼がちょっとした風邪をひいてしまった。これまで頑張ってきた成果を存分に発揮して欲しい。そう思って差し出した1粒の風邪薬。もしも、そこに禁止物質が入っていたら……。

そう、実はうっかりドーピングとは、こんなにも身近で実際に「あり得そう」な場面で起こってしまうのだ。市販の風邪薬のほとんどに、ドーピングに該当する禁止物質が含まれていることを知っているだろうか。選手やコーチならば、ドーピングに関する教育を受ける機会があったとしても、マネージャーやサポート役はほとんどその知識を得る機会がないのが日本の現状だ。このように、意図して競技能力を上げるために薬物を摂取するのではなく、風邪薬や喘息、花粉症などの薬を(必要な申請をせずに)服用し、意図せず禁止物質を摂取してしまったとしても、もちろん「失格」となってしまうのがうっかりドーピングの怖いところなのだ。

2020年の東京オリンピック招致において、日本はドーピング防止先進国としてその陽性率の低さをアピールしてきた。実際、2007〜2012年の日本の陽性事例報告から算出した陽性率は約0.13%であり、これは世界平均値(2003〜2011年データ)の1.39%と比較しても1/10以下と、格段に低い陽性率だ。

ところが、うっかりドーピングによる陽性事例は毎年報告され続けているのもまた実状だ。スポーツの成果は一朝一夕で出せるものではない。長い時間をかけて、文字通り血のにじむ努力を続けてきたアスリートに、つい「うっかり」なんてことでその成果が無効となってしまうことがないよう、正しいドーピングに関する知識の定着が必須なのだ。

意図しないドーピングを防ぐには
ClaudioVentrella/iStock/Thinkstock

ドーピングの種類には、①競技成績の向上のため意図的に行う「ドーピング」、本書で取り上げている②意図せず、風邪薬などから禁止物質を摂取してしまった「うっかりドーピング」の他にも、③優秀なライバルをおとしいれるために行う「パラ・ドーピング」の3種類がある。3番目に関しては、自分の成績を伸ばすのではなく、ライバルを失格にしてしまえという考え方だ。もし知らない間に自分のスペシャルドリンクに禁止物質が含まれる風邪薬などがこっそり入れられていたとしたらどうだろう。

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要約公開日 2014.04.22
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