好きになったら博士

「博士号」の使い方WOMAN
未読
好きになったら博士
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好きになったら博士
出版社
リバネス出版
出版日
2011年04月26日
評点
総合
3.3
明瞭性
3.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

理系女子、略して「リケジョ」。科学立国を標榜する日本はここ数年、リケジョを増やそうと様々な取り組みを進めている。女性で理系というだけでそんな固有名詞がついてしまうほどに、他とは差別化された存在になるようだが、世の中にはそんなリケジョを凌駕する至高の人々がいる。それが女性博士、女性研究者だろう。

研究の世界はまだまだ男性が多い社会であるし、博士号を取得する二十代後半は、結婚や出産など様々なライフイベントと重なり、取得に困難を感じる女性も多いようだ。しかしそんなハードルをものともせず、自分の好きな研究分野を究め、自分だけの道を着実に歩み続ける女性博士の生き方。これは、理系、文系に限らず、女性がキャリアアップする際のヒントや道しるべになるのではないだろうか。

本書、好きになったら博士は「博士号」の使い方の第3弾。博士課程で身につけた専門性や経験を活かし、様々な方面で活躍する博士たちを取材している。本書では、その中でも女性博士に取材を敢行し、13人の生の声を紹介している。章構成は第1弾、第2弾と同様、第1章では大学や公的機関で研究を行う女性博士たちを紹介する。ポスドク、助教、准教授、教授と様々なフェーズの女性が登場する。第二章では、企業で自分の専門を活かして技術開発を行う女性博士を取り上げる。第三章では、科学コミュニケーターや経営コンサル、アナウンサーなど、研究や技術開発以外の分野を切り開く女性博士を紹介している。

本書に登場する女性はとにかく力強い。理系女性、それも、博士号取得者という、ニッチな存在を取り上げながらも、そこから見えてくるのは、普遍的な力。「やるかどうかを悩むより、やりたいことをどうすればやれるか」を考え抜く力だ。この力は、性別の違いにかかわらず、これからの社会を生き抜くために、すべての人が必要なものになっていくだろう。

著者

incu-be編集部編

本書の要点

  • 要点
    1
    大学や公的機関で研究を行う女性博士にとって、妊娠や出産はキャリアアップを阻害することはあるが、まずは自分のやりたいことを貫き、研究も人生も同時に楽しむことが重要。
  • 要点
    2
    1970年代はまだ少なかった企業の女性研究者であるが、現在、女性研究者のキャリア支援の取り組みが全国の大学に広がりつつある。
  • 要点
    3
    研究経験を活かす道は、研究だけではない。疑問に思った事をつきつめて考えていく人には研究の道が開かれており、「思い立ったらやってみる」という考え方が大切。

要約

女性博士の研究の哲学

自分の研究の道を突き進む
David Sacks/Digital Vision/Thinkstock

独立行政法人理化学研究所の清水智子さんは、研究をしながらも出産を経験し、子育てと研究を両立する1人。自分の体よりも大きな顕微鏡を操作し、物質の表面の微小な世界を観察したり、原子や分子の挙動を探っている。ナノの世界(ナノはミリの10万分の1)を探索することに、毎日夢中になっている。清水さんが行う実験は、一度始まるとかなりの日数を拘束される。また、よいデータがとれ出すと、日夜を問わず実験を続けたいというのが研究者の本音。しかし、毎日夕方5時半には子どものお迎えにいかなくてはいけないし、子どもが体調を崩すと、完全に実験を中断しなくてはいけない。このように子育てをしながらも、自分のやりたい研究を続けていられるのは、周囲の方々のおかげだと感謝しているという。研究第一だった清水さんが出産を決意したのには、上司の理解も大きかったという。「環境のよい理研にいるうちに産んでおきなさい」と、清水さんを後押してくれたのが、日本の表面化学の第一人者で上司の川合眞紀さんだった。そもそも、清水さんが川合さんの研究室で協力研究員の職を得る事ができたきっかけは、なんと学会で会った川合さんへの「直談判」。「これからは自分で道を切り拓いていかないと」、という清水さんの言葉には、実感がこもっている。

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垣内力さんと、藤幸(垣内)知子さん夫妻は、2人とも東京大学で研究に従事しながら3歳の子どもの子育てに奮闘している。妻の藤幸さんは、「女性にとって、妊娠・出産は、間違いなくキャリアアップを阻害する」、「子育てで仕事をセーブしている間には焦りがある」と認めながらも、海外での留学中に得た経験から、今後のポストや仕事への不安のせいで、子どもを産まないという選択は「ない」、と感じるようになった。それはヨーロッパで「研究は人生の一部であって、人生を楽しまないと、研究はうまくいかない」と言われたことがきっかけだ。それまでストイックに研究すべきという考えだけをもっていた藤幸さんは、研究も生活も楽しむという視点を持てるようになったという。またアメリカでは、夫婦で研究をしている方が主催するホームパーティーに参加したり、女性研究者が産まれたばかりの子どもをセミナーにつれてきたりと、研究以外の生活の営みもきちんとしながら、研究を続けている女性たちが多くいることがわかったという。
ildogesto/iStock/Thinkstock
東京大学グローバルCOEプログラム 機械システム・イノベーション国際拠点の原田佳奈子さんは、東京大学で修士号を取得したあと企業の研究所に3年間勤め、その後早稲田大学大学院博士課程に進学するという、めずらしい経歴の持ち主だ。

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要約公開日 2014.02.28
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