なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか?

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なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか?
ジャンル
著者
岡崎大輔
出版社
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定価
1,400円 (税抜)
出版日
2018年09月25日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.5
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岡崎大輔
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1,400円 (税抜)
出版日
2018年09月25日
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レビュー

本書では、著者が所属する京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センターが提供する「ACOP/エイコップ(Art Communication Project)」という美術鑑賞プログラムが紹介されている。これは、複数人でひとつのアート作品を見ながら、それぞれの発見や感想、疑問などを話し合うというプログラムだ。「みる・考える・話す・聴く」という4つの能力を駆使してアート作品をじっくり鑑賞し、コミュニケーションを通じて解釈を深めていく。

なぜいま、このメソッドが注目されているのか。著者によると、明確な答えがない時代において、私たち一人ひとりに考え抜く力が求められているからだ。その力を獲得するには、多様な捉え方が可能な、つまり正解が必ずしもひとつではないアート作品に向き合い、そこから感じられたものを言語化し、さらに他の参加者の発想に耳を傾けることが有効だというのである。

そしてこのメソッドのカギは、「解釈」の裏付けとなる「事実」を見つけ、共有することだ。これはビジネスにおける「現場」の重要性を想起させる。同じ現場に立っても、そこから得る情報の質や量、導き出す解釈は人それぞれだ。だから「事実」を十分に吟味せずに判断を下すと、重大な損失を招きかねない。ここには、ロジックと感性の両方が求められるビジネス社会を生き抜くヒントが隠されているのではないだろうか。

しいたに

著者

岡崎 大輔(おかざき だいすけ)
京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センター専任講師 副所長。
阪急阪神ホールディングスグループの人事部門にて、グループ従業員の採用・人材育成担当を経た後、同センターに着任。対話を介した鑑賞教育プログラム「ACOP/エイコップ(Art Communication Project)」を、企業内人材育成・組織開発に応用する取り組みを行っている。
企業、行政、NPOほか各組織を対象に、セルフラーニング、チームビルディング、ダイバーシティをテーマとした研修プログラムや組織開発ワークショップを多数開発・実施。

本書の要点

  • 要点
    1
    「ACOP」という美術鑑賞プログラムでは、グループを組み、「みる・考える・話す・聴く」という4つの能力を駆使して鑑賞を深める。そのメリットは、鑑賞者間の相乗効果が起き、より多面的に作品を鑑賞できることにある。
  • 要点
    2
    ACOPのような対話型鑑賞では、作品名や作家名、制作年、制作意図などといった情報に頼らず、アート作品に直接向き合い、解釈を深めることに重きを置く。
  • 要点
    3
    対話型鑑賞を通して、自ら考える力、物事から複数の可能性を見出す観察力、事実に基づいて論理的かつ体系的に思考する力など、これからの時代のビジネスパーソンに求められる能力を獲得することができる。

要約

「ACOP」とはどんな鑑賞法か

対話型で鑑賞者間の相乗効果を起こす
guruXOOX/gettyimages

あなたはアート作品を鑑賞するとき、1作品あたりどのくらいの時間をかけているだろうか。ある美術館の調査によると、来館者が1作品を鑑賞するのに費やす時間は平均10秒前後だったという。著者の行っている研修で同じ質問をすると「1分くらい」という答えが返ってくることが多い。多くの来館者は、作品を見たつもりでも実は十分に見ていないし、その内容もほとんど覚えていないだろう。

いま世界のエリートが実践している美術鑑賞法に、ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ(以下、VTS)というものがある。ニューヨーク近代美術館で教育部部長を務めていた人物が中心となって開発した美術鑑賞法だ。この鑑賞法では、1作品あたりおよそ10分以上、純粋に作品を見ることだけに費やす。その際、「誰によって制作されたのか?」「いつ制作されたのか?」「何のために制作されたのか?」といった作品の背景を問うことはない。作品そのものへの理解だけではなく、作品を見て感じることや考えることを重視している。

VTSで採用されている鑑賞法、「対話型鑑賞」は、グループをつくって1つのアート作品を鑑賞し、各人の発見や感想、疑問などを話し合うメソッドである。著者らが実施するプログラム「ACOP(エイコップ:Art Communication Project)」は、ニューヨーク近代美術館のメソッドを源流にしている。ACOPでは、「みる・考える・話す・聴く」という4つの能力を駆使して鑑賞を深める。そのメリットは、参加者一人ひとりの見方や視点を共有することで鑑賞者間の相乗効果が起き、より多面的に作品を鑑賞できることにある。

著者らはこのプログラムを用いて学校教育、美術・博物館の教育普及、企業内人材育成など、様々な領域における研修やワークショップを行っている。

アート作品そのものに注目する

著者らが行っている研修では「アート作品」という言葉と「アート」という言葉を使い分けている。アート作品とはアーティストが制作した作品のことで、基本的にモノである。それに対してアートとは、アート作品と鑑賞者の間に起こるコミュニケーションを指す言葉で、モノではなくコトである。

アート作品を見たときに何を感じ、何を考え、どんな疑問を抱くかは、人それぞれ異なる。好みも人それぞれだ。「この作品の意味することは何だろう?」と考える人もいれば、「なんだかよくわからない」と思う人もいるし、作品からインスピレーションを受ける人もいる。アートには、「こう感じなければならない」「こう考えなければならない」という「正解」はない。

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