ゴールドプランなら4,000冊以上が全文読み放題! 7日無料体験はこちらから
宇宙が始まる前には何があったのか?の表紙

宇宙が始まる前には何があったのか?


本書の要点

  • 宇宙論で今最も注目を集めている二つの謎は、暗黒の世界にあり観測することができない「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」だ。

  • 暗黒エネルギーは宇宙の膨張と縮小のバランスをとるのに理論上必要なエネルギーと考えられる。

  • これまでの宇宙像によると現代は宇宙観測に適した時代だ。宇宙は膨張を続け、2兆年後にはほとんどの星が離れすぎて見えなくなってしまう。

  • 宇宙に挑む科学者のあるべき姿勢は「自分の想像に宇宙を合わせるのではなく、宇宙に自分の想像を合わせること」である。

1 / 4

暗黒の世界に隠された質量を求めて

暗黒の空間に「物質」が存在しているかも知れない

photouten/iStock/Thinkstock

宇宙の成り立ちを探求する学問「宇宙論」はここ100年で激動を迎えてきた。かつて永遠に不変とされていた宇宙への認識に大きな変化が起こったのだ。著者の最近の研究によると、宇宙の成り立ちとその性質というのは、理論上は存在するはずであるものの、未だ観測できていない「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」による所が大きいという。この考えに至るまでには、多くの科学者による理論構築と観測・検証、そして仮説の棄却が繰り返えされてきた。本要約では、宇宙研究者を惹きつけてやまない謎の多い二題テーマである「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」を中心に紹介する。

「暗黒物質」とは、観測はできないが、暗黒の空間に存在すると考えられている、質量をもった物質のことである。なぜ観測できないモノの存在がわかったのか?それは「ビッグバン」「宇宙の膨張」「宇宙の空間的性質」、この3つの発見が大きく関係している。

ビッグバンという言葉を聞いたことがあるだろうか。宇宙の全てのはじまりを説明するビッグバンモデルは、カトリックの司祭にして二つの博士号を持つルメートル氏によって提唱された。宇宙のはじまりとは、つまり「無」の空間から、「有」が生まれたということだ。

以前は宗教的な観点から宇宙は変わらないものと考える研究者も多くいたが、星までの距離を観測する技術の進歩により、我々から遠くにある銀河ほど大きな速度で我々から遠ざかっていることがわかった。我々から二倍遠くにある銀河は二倍だけ大きな速度で、三倍遠くにある銀河は三倍だけ大きな速度で遠ざかっているというのだ。つまり、我々の「宇宙は膨張している」のだ。

そして、あらゆる銀河が互いに遠ざかっているということは、過去においては、どの銀河もお互いにもう少し接近していたことになる。二倍の距離にある銀河が二倍の速度で遠ざかるのだから、時間を逆向きにすれば、つまり宇宙のすべてがある一点に集中していたはずだ。そう、これこそが、ビッグバンにほかならない。

そして、第三の重要な発見である「宇宙の空間的性質」も忘れてはならない。過去の研究から、この宇宙は光が延々とまっすぐ進む空間的性質(「平坦な宇宙」タイプと呼ばれている)をもつことが、証明されている。

しかし、宇宙空間に存在する物質の質量に注目すると理論上の計算と観測でその量が合わない。平坦な宇宙を前提とした時に、この宇宙が理論的に持っているはずの質量と、観測された天体の質量との間に大きな差があることがわかった。ここで暗黒の空間に観測できない物質の存在、つまり暗黒物質の存在が示唆される。

宇宙が平坦であるために必要とされる膨大な質量はどこに隠されているのか。私たちが観測できない暗黒の世界にある物質を求めて研究者達の探求は続いており、未だ謎が多い。

2 / 4

ミクロの世界から発見された暗黒のエネルギー

何も観測できない暗黒の空間にエネルギーが存在しているかも知れない

ここでは、もう一つの謎である「暗黒エネルギー」について紹介しよう。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2789/4061文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2014.05.01
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

宇宙になぜ我々が存在するのか
宇宙になぜ我々が存在するのか
村山斉
やわらかな生命
やわらかな生命
福岡伸一
気候変動はなぜ起こるのか
気候変動はなぜ起こるのか
ウォーレス・ブロッカー川幡穂高(訳)眞中卓也(訳)大谷壮矢(訳)伊左治雄太(訳)
科学の扉をノックする
科学の扉をノックする
小川洋子
滅亡へのカウントダウン
滅亡へのカウントダウン
鬼澤忍(訳)アランワイズマン
その科学があなたを変える
その科学があなたを変える
リチャード・ワイズマン
人体探求の歴史
人体探求の歴史
笹山雄一
立花隆の「宇宙教室」
立花隆の「宇宙教室」
立花隆岩田陽子

同じカテゴリーの要約

非常識な「ハイブリッド仕事論」
非常識な「ハイブリッド仕事論」
文化放送 浜カフェ(著)入山章栄(編)
新版 科学がつきとめた「運のいい人」
新版 科学がつきとめた「運のいい人」
中野信子
ハーバードの心理学講義
ハーバードの心理学講義
ブライアン・R・リトル児島修(訳)
スマホ脳
スマホ脳
アンデシュ・ハンセン久山葉子(訳)
一流の研究者たちが教える 快眠の科学
一流の研究者たちが教える 快眠の科学
伊藤和弘三島和夫(監修)
FACTFULNESS
FACTFULNESS
ハンス・ロスリングオーラ・ロスリングアンナ・ロスリング・ロンランド上杉周作(訳)関美和(訳)
無料
最強に面白い 睡眠
最強に面白い 睡眠
柳沢正史(監修)
新版 「空腹」こそ最強のクスリ
新版 「空腹」こそ最強のクスリ
青木厚
なぜゲームをすると頭が良くなるのか
なぜゲームをすると頭が良くなるのか
星友啓
科学的に元気になる方法集めました
科学的に元気になる方法集めました
堀田秀吾