立花隆の「宇宙教室」
「正しく思考する」技術を磨く

未 読
立花隆の「宇宙教室」
ジャンル
著者
立花隆 岩田陽子
出版社
日本実業出版社
定価
1,400円 (税抜)
出版日
2014年07月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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「正しく思考する」技術を磨く
著者
立花隆 岩田陽子
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出版社
日本実業出版社
定価
1,400円 (税抜)
出版日
2014年07月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
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レビュー

この本は、著者のひとり立花隆氏の発案により始まった『新しい宇宙最前線のリアルな知識を小学生の子どもたちに与え、子どもたち自身に自分たちの未来を考えさせるという野心的な試み』の記録である。この実験授業は、「系外惑星が続々発見されている」という、子どもたちがまるで知らなかった現状報告から始まり、子どもたち自身の「調べ学習」の成果発表と、それを踏まえてのディスカッションを中心に進められた。

小学生に、宇宙の最先端研究がどれほど理解できるのか。そして、どれくらい深いディスカッションができるのか――。そんな心配は無用だ。授業のあと、こんなことを言った児童がいたという。「先生、僕ね、なんかこれまでニュースとか見ててもあんまりよく聞いてなかったんだけど、この勉強を始めてから、いろいろなことが耳に入るようになったよ。勉強ってこういうことだよね」。こうした発言が子どもたちから出てくることが教育の成果なのではないか、ともうひとりの著者である岩田陽子氏は言う。

子どもたちは、この授業の中で宇宙のことについて学び、新たな宇宙時代への未来構想を考えた。だが、最も大きな成果といえるのは、子どもたちが物事の見方、考え方を身につけることにつながったことだ。「新たな宇宙時代を自分たちが築いていくんだという『自覚を持つこと』を学んだのであり、これこそが今回の学びの本質だった」と岩田氏は言う。この本を読んで、子どもたちが立花氏から学んだ「正しく思考する技術」をのぞいてみようではないか。

著者

立花 隆
評論家・ジャーナリスト。1940年、長崎県生まれ。1964年、東京大学文学部仏文科卒業後、文藝春秋社入社。1966年に退社。1967年、東京大学文学部哲学科に学士入学。その後、ジャーナリストとして活躍。1979年、『日本共産党の研究』で第一回講談社ノンフィクション賞受賞。1983年、「徹底した取材と卓越した分析力により幅広いニュージャーナリズムを確立した」として第31回菊地寛賞受賞。1998年、第1回司馬遼太郎賞受賞。主な著書に『宇宙からの帰還』『立花隆の書棚』(以上、中央公論新社)、『「知」のソフトウェア』(講談社)、『ぼくはこんな本を読んできた』(文藝春秋)ほか。

岩田 陽子
お茶の水女子大学特任准教授。慶応義塾大学卒業後、産業能率大学総合研究所にて人材育成のコンサルティング業務に従事。その後、宇宙航空研究開発機構(JAXA)にて初代の人文・社会科学コーディネータとして活躍。2013年よりお茶の水女子大学に勤務。

本書の要点

  • 要点
    1
    ケプラーによって発見され、すでに天体であることが確認されたものと、ケプラー以前に確認されていたものを合わせると現在までに約1700もの系外惑星が確認されているという。
  • 要点
    2
    逆転の発想で、推力の弱いイオンエンジンを主推進に使用した「はやぶさ」は、地球から3億キロ離れた小惑星イトカワを往復し、人類初のサンプルリターンに成功した。
  • 要点
    3
    「正しく思考する」とは、まさに「物事の本質をつかむ」ことである。

要約

続々発見される系外惑星

WokinghamOwl/iStock/Thinkstock
ケプラーのデータが教科書を変える

本書は2部構成になっており、第Ⅰ部は「宇宙科学の最先端をのぞく」として、宇宙科学の研究者と立花氏による2つの対談から、最先端の宇宙科学の知見を紹介している。第Ⅱ部は、子どもたちが第Ⅰ部の対談で話されているような内容を勉強し、理解し、立花氏と議論するレベルにまで成長を遂げ、「正しく思考する技術」を獲得していった授業について書いている。

1つめの対談の相手は、東京大学大学院理学系研究科天文学専攻教授で、国立天文台の太陽系外惑星プロジェクト室室長の田村元秀氏。田村氏は1988年、アメリカのアリゾナ州にクウィンラン山頂にある米国立キットピーク天文台で、当時、世界でも数少ない赤外線カメラを使って、二次元撮像観測を行なった。可視光で銀河の中心付近を観測すると、チリの影響で何も見えない。しかし、赤外線カメラをのぞいたら、銀河中心に星がたくさん集まっている様子がいきなり画面に映った、と田村氏は言う。二次元化することによって、確認できる天体数が増えるだけでなく、細かい構造がわかるようになった。さらに、これまでは粗い像しか得られなかったのが、補償光学が発達し、シャープな画像が得られるようになった。

ここ数年の天文関連で最も大きな話題と言えば、宇宙望遠鏡「ケプラー」による系外惑星(太陽系の外にある惑星)の発見だ。姿勢制御装置の故障から2013年8月に観測が中止されたが、ケプラーのデータからはたくさんの系外惑星が確認され、その中には地球によく似た惑星もいくつか含まれている。ケプラーによって発見され、すでに天体であることが確認されたものと、ケプラー以前に確認されていたものを合わせると現在までに約1700もの系外惑星が確認されているという。

多くの系外惑星を観測する中で、太陽系の姿とは異なる惑星がどんどん見つかっているという田村氏は「太陽系は宇宙の中では標準形ではない、太陽系は特殊でもおかしくない」と考えるようになった。ケプラーが発見した系外惑星の姿が明らかになるほど、太陽系が最終的に現在のような配置になったことに必然性が見出だせないのだという。「ケプラーのデータからすると、現在の太陽系形成理論はどこか間違っているというふうに思われます」。教科書を見直さなければならないところまできていて、理論の先生は非常に困っているそうだ。

学生は、教科書に書いてあることは正しいと思って読む。しかし、サイエンスの教科書は、確立されたことと、これから変わることの両方が載っているものであり、特に系外惑星はまだ研究が始まったばかりで確立されたものではない。だからこそ面白い、と話す田村氏は、今後、大学に系外惑星の研究室をつくりたいと考えている。「まだ系外惑星天文学を謳っている研究室というのはありません。けれど、そうした枠組みをつくっていかなければ、せっかく若い人が系外惑星に興味を持ってくれても次世代につながっていきませんから」。

逆転の発想が「はやぶさ」を長距離飛行させた

Jose Perez/iStock/Thinkstock
推力の弱いイオンエンジンを主推進に使用

2つめの対談には、初代「はやぶさ」のイオンエンジンの開発を担当し、「はやぶさ2」ではプロジェクトマネージャーを務めるJAXAの國中均氏が登場する。

「はやぶさ」が長距離を飛行できたのは「イオンエンジン」の功績によるものだ。

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