気候変動はなぜ起こるのか
グレート・オーシャン・コンベヤーの発見

未 読
気候変動はなぜ起こるのか
ジャンル
著者
ウォーレス・ブロッカー 川幡穂高(訳) 眞中卓也(訳) 大谷壮矢(訳) 伊左治雄太(訳)
出版社
講談社
定価
860円 (税抜)
出版日
2013年12月20日
評点
総合
3.2
明瞭性
3.0
革新性
3.5
応用性
3.0
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気候変動はなぜ起こるのか
気候変動はなぜ起こるのか
グレート・オーシャン・コンベヤーの発見
著者
ウォーレス・ブロッカー 川幡穂高(訳) 眞中卓也(訳) 大谷壮矢(訳) 伊左治雄太(訳)
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出版社
講談社
定価
860円 (税抜)
出版日
2013年12月20日
評点
総合
3.2
明瞭性
3.0
革新性
3.5
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レビュー

1997年に採択された「京都議定書」。「地球温暖化防止条約」の締約国のうち、東欧を含む38カ国の先進国(と欧州委員会)が二酸化炭素を含む温室効果ガスの削減目標数値を決め、期間内にそれを達成することを義務づけられたことは、日本人ならば頭の片隅に残っている方も多いのではないだろうか。これを機に、日本では地球温暖化を食い止めるべく、温室効果ガス削減が声高に叫ばれるようになった。

こうして二酸化炭素と気候変動の関係について関心が高まると同時に、古気候の研究活動も盛り上がりを見せているのをご存知だろうか。古気候学とは、過去の気候変化について研究する学問分野である。ところが過去の気候データは直接得られないため、堆積物や氷床コアといったサンプルから間接的に過去の気候を復元し、その時代の気候の性質や変化などを探っていくのだ。そんな面倒なことをせずに、コンピューターでシミュレーションをすればいいではないかと思うかもしれないが、今最も有力な手がかりとされている大気-海洋カップリンクモデルのシミュレーションですら、古気候学における重要な特徴を再現できずにいるという。

著者は大気と海洋という2つのシステムの相互作用を調べることで、水温と塩分濃度の違いによって約1000年単位で沈み込みと湧昇を繰り返す地球規模の海洋大循環が、気候の変動を引き起こしていることを提唱した。数年後の二酸化炭素削減目標を追いかけるのも良いが、本書を通じて数万年単位で地球の気候変動の全貌に目を向けてみるのはいかがだろうか。

著者

ウォーレス・ブロッカー
アメリカ・コロンビア大学卒業。1959年から、コロンビア大学地球環境科学部地質学科教授。同時に、コロンビア大学ラモント・ドハティー地球観測研究所研究員、地球研究所の委員も兼ねる。気候変動と海洋の関わりを明らかにし、人類に起因する二酸化炭素の増大に対して警鐘を鳴らしている。

本書の要点

  • 要点
    1
    海洋大循環とは、水の温度の違いが生み出す地球規模の水の循環である。
  • 要点
    2
    過去に大西洋に淡水が流れだし、低塩分濃度の水が海洋の表面を覆ったことで、海洋大循環が停止したことがある。
  • 要点
    3
    産業革命以降、人間が大気や海洋に及ぼす影響力が大きくなり、「アントロポセン」と呼ばれる時代に突入した。
  • 要点
    4
    二酸化炭素量の増加による、海洋大循環の停止は考えにくいが、深刻な水供給の減少につながる可能性は否定できない。

要約

海洋大循環の発見

水の寒暖の差が生み出す、海の大循環
Dorling Kindersley/Thinkstock

足元の海岸に、打ち寄せては引いていく波。目を上げれば、美しく静かに曲線を描く水平線。水が流動的に流れることは、もちろん承知のことだと思うが、海洋でもまた、地球表面を横断する大規模な流れ、「海洋大循環」(グレート・オーシャン・コンベヤー)が生じていることをご存じだろうか。

著者がこのことに気付いたのは、グリーンランドの氷床に見られた突発的な寒冷化の理由を探していたときだったという。一見、突発的に見えたこの寒冷化だが、これは海洋大循環の要でもある、大西洋を南北の方向に流れる海洋循環の流れが乱れたことが関係しているという。

お風呂にお湯をためるとき、上層のお湯を触ってちょうどいい湯加減だと思っても、浸かってみると底の水は冷たかったという経験はないだろうか。水は温度によって密度が変わり、温かい水は上層へ、冷たい水は底の方に沈む性質をもっている。海洋大循環とは、その水の温度の違いが生む密度の変化によって、大西洋を北上する比較的温暖な上層水が(グリーンランド付近の)最北端に到達すると、やがて寒冷な冬の風にさらされ、冷却作用を受け、上層水が深層へと潜り、南下を始めるという一連の海の循環のことを指す。

しかし、この循環の流れが突然閉ざされてしまったとき、グリーンランドで見られたような急な寒冷化現象を招くのではないかと著者は考えたのだ。この仮説は、著者を取り巻く多くの研究による苦労と悩みを超え、やがて大発見へとつながっていく。本書では、この決して一筋縄ではいかない研究の道のりが描かれている。

「科学」は多少の間違いと論争の上でつくりあげられていく

地球の気候変動の歴史を調べようにも、そもそも、過去の気候を現在の我々が知り得ること自体、奇跡に近いことである。温度計や雨量計など、測って記録することでデータとして残るものは18世紀までは存在しなかった。つまり現在残っている何らかの痕跡を分析することで、過去の気候状態を解釈するしか方法はない。

言うまでもなく、その解釈は決して完璧ではなく、時には筋違いの結果や解釈を生み出してしまうことがある。著者自身、『科学において確定的に知られていることなんてほんの一握りで、(中略)多少の間違いや誤認、また論争があっても、特段不思議なことではない』と述べている。

研究の世界にあまり馴染みのない方には、科学に誤認などあってはならないと思うかもしれない。しかし、著者はさらにこう続けている。『時にはこれらのいわゆる「間違った事実」も、重要な発見へと導いてくれることだってある。こうして世の中の構造をより明らかにすべくもがき続ける、その過程こそ本物の「科学」の姿なのだ』と。

海洋大循環が停止したとき

海洋の流れと気候変化には関係がある
MagicDreamer/iStock/Thinkstock

本書では、著者が二十年余りをかけて解き明かしてきた古気候学の記録が残すメッセージや、今我々が生きている地球の気候システムが大規模なモードシフトにどれだけ耐え得るかといった研究内容と、科学的解釈が一冊にまとめられている。

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