CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略

顧客の心とつながる経験価値経営
未読
CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略
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CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2018年09月27日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

あなたは最近、商品やサービスの購入、問い合わせなどで「神対応」を受けて驚いた経験がないだろうか。そして、そうした企業やブランドへの愛着がグッと高まり、ファンになっていく――。そんなストーリーを促すキーワードが、CX、カスタマー・エクスペリエンスである。

CXは「顧客経験価値」「顧客体験価値」と訳されるが、いわば「おもてなし」に近い考え方といえる。本書では、CX戦略の導入の進め方やマネジメントするための方法(人材、権限、予算、プロセス、評価など)を多くの先駆事例や著者の実体験を踏まえて整理し、読者の実践を促していく。

米国の小売業界は、アマゾン・ドット・コムなどネット通販の台頭により、厳しい状況にある。しかし、そのような環境下でも店舗数を拡大し、成長し続けている企業がいることも事実だ。これらの企業が共通して掲げる中核的な戦略、それがCXなのである。CXでは感情的な価値を訴求する。つまり、顧客を感情的に満足させることをめざす。これにより、顧客ロイヤルティが高まり、再購入・継続・接触回数などが高まって、収益向上につながっていく。これが、CXが企業収益に貢献する仕組みだ。

これからの時代、全ビジネスがCX戦略とは無縁でいられない。CX戦略の導入・運営に必須の視点や手順を学ぶのに最適なガイドブックである。ぜひ本書を手にとり、フルに活用していただきたい。

著者

田中 達雄(たなか たつお)
野村総合研究所 上級研究員
コンピューターメーカー、広告系ベンチャー持ち株会社を経て、2001年野村総合研究所入社。専門はカスタマー・エクスペリエンス/顧客チャネル戦略、デザイン思考、CLO/ロボ・アドバイザー/PFMなどのFinTech、APIエコノミー、Webサービス、セマンティックWebなどの統合技術、経営とIT、アジャイル、DevOpsなどの開発技術/開発方法論など。著書に『「おもてなし」のIT革命』『ITロードマップ』(共著、いずれも東洋経済新報社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    CX(カスタマー・エクスペリエンス)とは、「心理的・感情的な価値」を提供することである。
  • 要点
    2
    CX戦略の3つのキーワードは、「エンパワーメント」「クローズド・ループ」「トップマネジメント」である。
  • 要点
    3
    従来のCS(顧客満足)では、収益向上に貢献する顧客ロイヤルティを計測できない。
  • 要点
    4
    CXでは、顧客ロイヤルティをNPSなどの指標で計測し、その向上をめざす。

要約

CXとは何か?

CXとは「心理的・感情的な価値」を提供すること

CXは、2000年頃から欧米で注目され始めたコンセプトである。CXの定義は、「商品やサービスを購入する過程、利用する過程、その後のサポートの過程における経験的な価値(心理的・感情的な価値)」とされる。

日本では、「顧客経験価値」「顧客体験価値」と訳される。企業側には、企業目線・企業都合ではなく、徹底的に顧客目線・顧客本位で価値提供することが求められる。

コトラーによると、顧客が受け取る価値は、特定の商品やサービスの顧客が期待する利益や見返りを総合した「総顧客価値」から、顧客が商品やサービスを評価・獲得・使用・処分する際に発生すると予測したコストの総計である「総顧客コスト」を引いた価値となる。総顧客価値、総顧客コストのいずれにも、心理的・感情的な価値が含まれている。

心理的・感情的な価値の5つのタイプ
Tomwang112/gettyimages

CXにおいては、心理的・感情的な価値の付加が差別化・競争力の源泉となる。バーンド・H・シュミットは、著書『経験価値マネジメント』で、心理的・感情的な価値を次の5つに分類している。

Sense(感覚的)は顧客の視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚といった知覚(五感)を刺激する経験のこと。美しい外観・心地よい音楽・落ち着く匂い・美味しい・良い手触りなどを価値として提供する。

Feel(情緒的)は顧客の内面の感覚・感情に訴求する経験のこと。かっこいい・かわいい・安心・信頼・感動・熱狂などを価値として提供する。

Think(知的)は顧客の創造性や知的欲求に訴求する経験のこと。興味深い・勉強になる・面白い・自分を高められるなどを価値として提供する。

Act(行動、ライフスタイル)は顧客の行動やライフスタイルに訴求する経験のこと。今までにない・普段の生活では体験できない価値を提供する。

Relate(社会性)は顧客に特定の集団や文化に属しているという感覚を訴求する経験のこと。所属への誇りや特別感などを価値として提供する。

「合理的に満足」と「感情的に満足」

著者は、「CSを拡張・強化したものがCXである」と定義している。CSとは顧客満足度のことであるが、CSは収益と相関性が低い。一方、一般的に顧客ロイヤルティが高ければ収益に好影響をもたらすことがわかっている。つまり、CSでは顧客ロイヤルティが測定できないのである。

米国の世論調査会社ギャロップによると、CSで「非常に満足」と回答した顧客は、「合理的に満足」と「感情的に満足」の2つに分けられるという。感情的に満足した顧客は、企業に収益をもたらす行動をとる。しかし、合理的に満足した顧客は、不満の顧客とあまり変わらない行動をとるという。

「合理的に満足」とは、商品・サービスの機能、性能、価格、情報の豊富さなど、物理的・実質的な価値に対する満足を指す。つまり、良いか悪いかが判断基準となる。それに対し、「感情的に満足」は、安心、信頼、尊重、敬意など、顧客の心に訴えかける経験的な価値に対する満足であり、好きか嫌いかが判断基準となる。

顧客離反においても、感情的に満足している顧客は、合理的に満足している顧客と違って顧客ロイヤルティが高い。そのため、多少、商品・サービスの機能や性能が劣っていたり、価格が高かったりしても、簡単に他社の類似商品・サービスに乗り換えることはないと考えてよい。

【必読ポイント!】 CX戦略の3つのキーワード

エンパワーメント
gustavofrazao/gettyimages

CX戦略の3つのキーワードは、「エンパワーメント」「クローズド・ループ」「トップマネジメント」だ。

第1のエンパワーメントとは、権限委譲のことである。コンプライアンスの名のもとで厳しい統制を敷き、画一的・均質的な接客を行うことは、相手に応じた接客の妨げとなる。これにより、不満を抱く顧客も出てきてしまう。

一方、CXに取り組んでいる企業は、現場の社員への権限委譲を積極的に進めている。権限委譲することで、接客プロセスの自由裁量の度合いが大きくなり、相手に応じた接客を行える。これにより、高い顧客評価を得られるというわけだ。

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要約公開日 2019.01.11
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