シグナル&ノイズ
天才データアナリストの「予測学」

未 読
シグナル&ノイズ
ジャンル
著者
ネイト・シルバー 西内啓(解説) 川添節子(訳)
出版社
日経BP社
定価
2,592円
出版日
2013年12月02日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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天才データアナリストの「予測学」
著者
ネイト・シルバー 西内啓(解説) 川添節子(訳)
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出版社
日経BP社
定価
2,592円
出版日
2013年12月02日
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3.5
革新性
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レビュー

本書「シグナル&ノイズ」の著者、ネイト・シルバー氏の統計家としての経歴は面白い。シカゴ大学経済学部を卒業、「マネー・ボール」で有名になった野球データ予測モデル「PECOTA」の開発者であるとともに、大統領選挙の結果を正確に予測することでも有名である。そのような経歴を持つ著者が書き起こした書として、本書は多くの統計実務家に興味を持って受け入れられている。

何事かを予想するにあたり、過信とも言えるような自信家のことを、本書では「ハリネズミ」と称しているが、彼らは大きく予想を外しがちなのだという。確かに本書の書きぶりは、著者の性格が謙虚そのものであることを伺えるほど、慎重であり過剰に実績を主張しない。しかしそのようなスタンスを保つことこそが、正確な予測を行う王道であり、タイトルにもなっている真実を表す「シグナル」と真実から目をそらす「ノイズ」を見分ける要点なのである。

読み進めるとわかるが、本書には複雑な数式は一切出てこない。統計家のためだけに書かれたものではなく、ビジネスパーソンなどの広い対象に向けられた書であると言えるだろう。将来を予測することは企業経営者、ギャンブラー、投資家、証券アナリストや選挙予想家といった各領域の予測専門家など、多くの人に求められるとともに、その成功を左右するとも言える重要な事項である。その複雑かつ魅力に満ちた領域に一歩踏み出す上で、本書は読者の指針となる良書であり、是非とも一読を薦めたい。

大賀 康史

著者

ネイト・シルバー
1978年生まれ、ニューヨーク・ブルックリン在住の統計専門家。『マネー・ボール』で有名になった野球データ分析会社ベースボール・プロスペクタスの予測モデル「PECOTA」の開発者。2008年の米大統領選挙の結果を予測し、ほぼ完ぺきに(50州のうち49州)的中させたことで一躍脚光を浴びた(2012年の大統領選はすべて的中)。タイム誌の「世界でもっとも影響力のある100人」(2009年)にも選出された。政治予測ブログ「FiveThirtyEight.com」を主宰し、各種の選挙結果の予測をはじめ、政治、経済、スポーツなど幅広い分野の話題について統計学の視点から独自の見解を提示し、世界的に注目を浴びている。

本書の要点

  • 要点
    1
    統計的に実施したにも関わらず、予測を失敗する理由として代表的なものは、今までに経験しなかったことを予測の対象とする「アウト・オブ・サンプル」である。
  • 要点
    2
    予測の精度を高めるためには、自信過剰になるのではなく、①確率論的に考える、②情報が増えるごとに軌道修正を施し精度を上げていく、③予想の大胆さではなくコンセンサスを求める、という3つのポイントを押さえておくのが良い。
  • 要点
    3
    定量的に要素を分解して確率を試算することが統計予測の基本である。その上ではベイズの定理を正しく理解し、数多く実践で用いることが有効だろう。

要約

はじめに

本書の概要

本書は、情報・テクノロジー・科学の進歩などを俯瞰し、それらが交わるところにある予測について語られている。予測が当たる、または外れる要因を分析した上で、将来をどのように予測していくべきかが述べられる。

前半部分は金融危機などの予測の失敗が語られ、動的システムの予測の難しさへの考察を深めた上で、予測の精度を高める方法に言及されている。特に著者はベイズの定理を用いて、ランダム性や不確実性への理解を深めることに重点を置いている。

それでは統計における、真実を表すシグナルと真実から目をそらすノイズについて、理解を深めていこう。

壊滅的な予測の失敗

Robert Churchill/iStock/Thinkstock
哀れな人々の最悪の予測 ~CDOの結末~

2008年、名門投資銀行の一角、リーマン・ブラザーズの経営破たんに端を発した金融危機により、金融市場は麻痺状態に陥る。株価は5週間で30パーセント下落、ラスベガスの住宅価格も40パーセント下落し、失業率も急上昇を続けた。

大統領選挙が近づき、政府は大手格付会社である、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、ムーディーズ、フィッチ・レーティングスの責任者を呼び、モーゲージ証券のデフォルト率の予測に関して責めたてた。これは大規模な予測の誤りを象徴する出来事だろう。

格付会社は、通常は世界でもっとも支払い能力の高い政府や優良企業にのみ与える、トリプルAをCDO(債務担保証券)に気前よく割り当てた。S&PでトリプルAとは向こう5年間で支払い不能となる確率がわずか0.12パーセントであることをいう。

それが実際はS&PのトリプルAと格付されたCDOの28パーセントがデフォルトしたのだ。何と予測した率の200倍である。

更に格付会社は自分たちの非を認めようとしない。公聴会においても、「住宅や住宅ローン市場の急落に驚いているのはS&Pだけではありません。実際、予想していた人はいないのです。(後略)」という弁明をしたのである。既に住宅バブルへの警笛を鳴らす専門家が多かったにも関わらず。

格付会社が間違った理由
stuartmiles99/iStock/Thinkstock

詳しくCDOに関して見てみよう。CDOとは、数多くのローン債権を集めて資産のかたまりをつくり、「トランシェ」と呼ばれる部分に切り分けて組成する金融商品だ。

5つの住宅ローンがあるとする。それぞれのデフォルト率は5パーセントで、それらを組み合わせていくつかの投資商品をつくる。最も安全なのは、すべてのローンがデフォルトしなければ、約束通りの金額が支払われる商品である(これをアルファ・プールと呼ぶ)。一方で、もっともリスクが高いのは、5つのローンのうちどれか1つでもデフォルトしたら一巻の終わりとする商品だ(これをエプシロン・プールと呼ぶ)。

ではアルファ・プールはどれだけ安全なのだろうか。ここに統計のマジックがある。

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