悪魔のサイクル(2013年新装版)
日本人のよりかかり的思考

未 読
悪魔のサイクル(2013年新装版)
ジャンル
著者
大前研一
出版社
株式会社インプレスR&D
定価
825円(税込)
出版日
2013年11月25日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.0
応用性
4.0
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悪魔のサイクル(2013年新装版)
日本人のよりかかり的思考
著者
大前研一
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出版社
株式会社インプレスR&D
定価
825円(税込)
出版日
2013年11月25日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.0
応用性
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レビュー

「ほどほどに」とか「常識」といった周囲への適合が善とされる日本社会。しかしながら、それは自分で考えることを放棄し、「周囲」とか「常識」といった判断基準に依存してしまっている状態に他ならない。こうした横並び意識に警鐘を鳴らし、その発生原因や対処法について述べたのが本書『悪魔のサイクル』だ。

原著となる単行本は昭和48年(1973年)に発刊されており、大前研一氏が「よりかかり」心理の弊害について指摘してから既に40年以上が経過していることになる。それにもかかわらず、大前氏がこの本の中で言及している日本の教育制度や会社風土の問題点は未だに改革されていないものばかりだ。

本書を読むに当たって、企業や組織の事例や日米貿易摩擦などの国際情勢は刊行当初のものが掲載されているため、真新しさを感じにくい部分もあるかもしれないが、本書のテーマはいまでも十分に読む価値のある内容であることを改めて述べておきたい。むしろ、2011年の東日本大震災で露呈した日本の原子力発電が抱えるリスクを40年も前から指摘していたという点に、この問題の根深さが表れていると言えよう。

独創性やチャレンジ精神なしには日本の発展は望めない。これらを育むためには、どのような変革が求められるのか。本書を読めば、そのヒントをつかむことが出来るはずだ。高度経済成長が終わりを迎えた発刊当時よりも、むしろ現代の方がこの本に向き合う必然性は高まっていると思う。

この要約が多くの方に本書を読んでいただくきっかけとなり、「悪魔のサイクル」から脱け出す日本人が増えることを期待したい。

苅田明史

著者

大前 研一
1943年、福岡県若松市(現北九州市若松区)生まれ。早稲田大学理工学部卒業。東京工業大学大学院原子核工学科で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を取得。経営コンサルティング会社マッキンゼー&カンパニー日本社長、本社ディレクター、アジア太平洋地区会長等を歴任。94年退社。96~97年スタンフォード大学客員教授。97年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院公共政策学部教授に就任。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長。オーストラリアのボンド大学の評議員(Trustee)兼教授。
また、起業家育成の第一人者として、05年4月にビジネス・ブレークスルー大学大学院を設立、学長に就任。2010年4月にはビジネス・ブレークスルー大学が開学、学長に就任。02年9月に中国遼寧省および天津市の経済顧問に、また10年には重慶の経済顧問に就任。04年3月、韓国・梨花大学国際大学院名誉教授に就任。『新・国富論』『新・大前研一レポート』等の著作で一貫して日本の改革を訴え続ける。『原発再稼働「最後の条件」』(小学館)『洞察力の原点』(日経BP社)『日本復興計画』(文藝春秋)『「一生食べていける力」がつく大前家の子育て』(PHP研究所)『稼ぐ力』(小学館)『日本の論点』(プレジデント社)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本人に蔓延している「よりかかり」思考(自分で考えることなく、周りと同化することを善しとする考え)は、幼少期から醸成され、社会人になる頃には行動規範として組み込まれてしまう。
  • 要点
    2
    共属的な「よりかかり」思考は、理屈が通らないことを生じさせ、しかもそのことに対して疑問を感じなくなってしまい、問題が放置されたままになるという「悪魔のサイクル」を生み出す。
  • 要点
    3
    閉じた「悪魔のサイクル」を打ち破るのは非常に困難だが、安易な技術提携に頼らずに、自社エンジニアによる技術開発を推進することは、このサイクルを断ち切るきっかけになるかもしれない。

要約

悪魔のサイクル

日本人の共属心理

大前研一氏は、世界的に有名な経営コンサルティング会社マッキンゼー&カンパニーで日本社長、本社ディレクター、アジア太平洋地区会長などを務めたが、その前には日立製作所で原子炉の設計に関わる仕事をしていた。当時、大前氏は周囲の人間の行動に困惑し、不満を感じていたという。そして数年間を経て、不満の根源にあったのは日本人の「よりかかり」の思想だということが明らかになる。

このことに気づいたのは大前氏が入寮していた独身寮の寮規則がきっかけだった。そこには事細かに「暖房使用規則」が書かれていた。「倒れても安全な石油ストーブ」を販売し、「スイッチを止め忘れても、高温になると自動的に止まる電器ストーブ」を宣伝している企業が、こともあろうか自社員に対して火災上の理由からそれらの器具の使用を禁じていたのである。

規則自体も理解しがたいのだが、「この程度の規則ならどこにでもある」「(こんな規則を)守っているバカはいないだろう」とすましてしまう周りの従業員も問題であった。理屈で説明のつかないことに対して疑問に思うことなく、疑問を感じたとしても「不思議に思う自分の精神のほうがおかしいのかも」という気分にかられてしまっているのである。

以降、大前氏はこの現象を「悪魔のサイクル」と名付けるとともに、日本人の共属心理に依拠した「よりかかり」の性格の解明に着手することになった。

「よりかかり」の人生

幼少期から始まる「よりかかり」
oksun70/iStock/Thinkstock

日本人の「よりかかり」思想は、成長の過程においてどのように形成されるのだろうか。

赤ん坊に添い寝することは子育てにおいてよく見られる光景だが、実はこの添い寝からすでに「よりかかり」が始まっている。突然泣き始めた赤ん坊のために添い寝してあげているつもりの親が、「泣けば添い寝してくれる」と打算的に考えている赤ん坊に馴らされてしまっているのだ。スキンシップそのものが悪いわけではないが、過度なスキンシップは幼少期の原始感覚を失わせ、精神的な「よりかかり」からなる連帯感をいたずらに促進させてしまう。「悪魔のサイクル」はたった一歳の頃から日本人のなかに植え付けられているのである。

また、子供が小学校に上がるまでの6年間、大人は自分たちを犠牲にして子供中心の家庭生活を送り、幼稚園の時分から子供に楽器を習わせたりしている。こうした早期教育は一見、芸術領域での有能な新人を生み出すことに繋がっているように見えるかもしれない。

しかしながら、エゴイズムと愛情を錯覚したこれらの行動は結果的に子供の感受性を奪ってしまっていることに大人たちは早く気付くべきだ。日本の若き音楽家が結局大成できないのは、こういった大人たちの共属感情に基づく行動にあるのではないか。

小学生~大学時代の「よりかかり」

小学校の時代はもっとも日本人の画一性を潜在的に促進する時期である。「前へ倣え」という号令で一直線に並ぶ児童たち。もしこれに従わなければ担任の先生から怒られるか、仲間から爪弾きにあってしまう。十歳前後は自我の形成期であるにもかかわらず、この時期に子供たちは自己埋没を強いられている。

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