サピエンス異変
新たな時代「人新世(じんしんせい)」の衝撃

未 読
サピエンス異変
ジャンル
著者
ヴァイバー・クリガン=リード 水谷淳(訳) 鍛原多惠子(訳)
出版社
定価
1,950円
出版日
2018年12月31日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.5
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新たな時代「人新世(じんしんせい)」の衝撃
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ヴァイバー・クリガン=リード 水谷淳(訳) 鍛原多惠子(訳)
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定価
1,950円
出版日
2018年12月31日
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革新性
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レビュー

いま人類は「人新世(じんしんせい)」という地質年代にいる――この前提から本書は始まる。「人新世」は新しい地質学の言葉で、今後正式な地質年代名として認められる予定だ。

著者は「人新世」について、衝撃的な事実がわかってきたと述べる。この年代になってから人間の免疫系の調節機構が変化し、慢性的な炎症状態になっている可能性があるというのだ。炎症は非常に悪い兆候であり、うつ病や2型糖尿病、心臓管疾患などの危険な病気にかかるリスクが非常に高まることで知られている。これらを対策するためのヘルスケアのコストも急増しており、少なくとも数カ国で保険サービスがいずれ破綻すると考えられているという。

なぜこのような状況に陥ってしまったのか。本書では230万年に及ぶ人類史を通じ、人類の辿ってきた変化を振り返る。そして人類に起きている異変をさぐり、未来に生きようとする人類に警鐘を鳴らし、その対策を提案する。

本書を読み進めるにつれ、椅子に座っていられなくなるほどの事実を目の当たりにするだろう。人類が経験しているいまの環境変化は、最終氷河期が残した変化と変わらないほど大きいのだ。

私たち人類は、自らの手で運命を良い方向にも悪い方向にも変えてきた。だからこそこの世界にもっと目を向け、どのように生きるかを考えなければならない。その際の羅針盤として、何度もお読みいただきたい一冊である。

加藤 智康

著者

ヴァイバー・クリガン=リード (Vybarr Cregan-Reid)
英ケント大学准教授。専門は環境人文学と19世紀英文学だが、扱うテーマは人類史、古典文学、健康、環境問題まで幅広い。ケント大学の名物教授として学生に絶大な人気をほこり、2015年には同大の「ベスト・ティーチャー賞」を受賞。ガーディアン紙、インディペンデント紙、ワシントン・ポスト紙などに寄稿多数。
人類が生み出した文明の速度に、人類の進化が追いついていない問題を大胆に提起した本書『サピエンス異変』は、2018年秋の刊行と同時にBBCワールドサービスで番組化され(全3回)、フィナンシャル・タイムズ紙の2018年ベストブックに選出されるなど、大きな反響を呼んでいる。

本書の要点

  • 要点
    1
    産業革命を経て座業が一般的になったことで、人類は新しい病気に苦しめられている。
  • 要点
    2
    生活を便利にするための道具を、人類はいくつも発明してきた。だが活動量が大幅に減っていることにより、死亡リスクは高まっている。運動は魔法の治療薬だと捉える必要がある。
  • 要点
    3
    身体が何を望んでいるかを考えながら、今後進むべき道を探さなければならない。個人の活動だけで根本的な解決は難しいため、国や地球単位で解決に取り組むべきだ。

要約

身体に異変が起きている

人新世という新しい世界
Patrick_Lienin/gettyimages

著者は1990年代はじめごろから腰痛を患っている。ちょうど仕事でコンピュータを使い、座ったままで長時間過ごし始めるようになった時代だ。

たしかにコンピュータのおかげで仕事は楽になった。だが動かなくてもさまざまなことができてしまうライフスタイルは、腰痛の原因になっている。実際にこうした仕事や環境の変化で、腰痛だけではなく反復運動過多損傷(RSI)、眼精疲労、坐骨神経痛などで悩む人は増えた。多くの人が自然死ではなく、「ミスマッチ病」という身体と環境との緊張関係によって生じる病が原因で亡くなっているのもそのためだ。

近いうちに現代は「人新世(じんしんせい)」の時代と認められる予定である。人新世は「人間」を意味する言葉と、「近年」または「新しい」を意味する言葉に由来する。「人新世」において私たちの身体が作り変えられ、今までにない病に襲われる問題を解明することが、本書の最大のテーマである。

異変は足から始まった

著名な動物学者であるチャールズ・ダーウィンは、人類がすぐれた種になれたのは足のおかげだと主張していた。たとえば類人猿は、モノをつかみやすい足の構造になっており、足の指のデザインや筋肉の付き方が人とは違う。一方で人の足は、あくまで移動するための構造になっており、長距離の移動が可能である。足だけで移動できるようになったおかげで、手を自由に使えるようになり、繊細で高度な能力の獲得につながった。この手の器用さが、言語の発達につながった可能性は高い。足のおかげで手の進化も始まったのだ。

また足が発達するにつれて、狩りに適した身体に人類は変化していった。四足歩行の動物の方が走るのは速いかもしれないが、人類はその代わりにスタミナを手に入れた。これにより獲物が倒れるまで追いかける狩りができるようになった。

そして4万年前、人類は「靴」を使うことを覚えた。靴のおかげでさらなる長距離移動ができるようになり、気候変動による致命的な影響も回避できた。しかし便利になればなるほど、本来の足の強さは奪われていくことになる。

ホモ・エレクトスの強みはお尻だった

約800万年の歴史において、人類はたしかに進化を遂げてきた。ゆえに初期の人類と現代人では、類似点もあれば相違点もある。身体の違いを比較すれば、いま起きている変化も見えてくる。

「人新世」以前で、歩きぶりが現生人類に近かったのはホモ・エレクトスだ。足跡から、足の構造も近かったことがわかっている。現生人類と異なる特徴としては、尻の筋肉(臀筋)が発達していたことが挙げられる。ホモ・エレクトスは、時間のほとんどを歩いたり走ったりすることに費やしていた。いまのような椅子に座って作業するのではなく、長距離を移動したり狩りをしたりする必要があったからだ。つまり臀筋は働きっぱなしだったのである。

現代社会における障害の原因は腰痛である

産業革命以降の関節痛が問題を引き起こしている
kitzcorner/gettyimages

産業革命が起きた18世紀に、人類の身体の変化は加速した。労働がどんどん分化し、動かないでひとつの仕事に集中するようになったからだ。この止まった姿勢が、

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ヴァイバー・クリガン=リード 水谷淳(訳) 鍛原多惠子(訳)
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飛鳥新社 出版社ページへ
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1,950円
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2018年12月31日
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