両利きの経営
「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く

未 読
両利きの経営
ジャンル
著者
チャールズ・A・オライリー マイケル・L・タッシュマン 入山章栄(監訳) 冨山和彦(解説) 渡部典子(訳)
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
2,400円 (税抜)
出版日
2019年02月28日
評点
総合
4.5
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
4.5
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両利きの経営
両利きの経営
「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く
著者
チャールズ・A・オライリー マイケル・L・タッシュマン 入山章栄(監訳) 冨山和彦(解説) 渡部典子(訳)
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出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
2,400円 (税抜)
出版日
2019年02月28日
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4.5
明瞭性
4.5
革新性
4.5
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レビュー

本書が提示するイノベーションの枠組みは、きわめてシンプルなものだ。既存の事業を深めていく「深化」と、新しい事業を開拓する「探索」。両者を同時に推進する「両利きの経営」の実践である。これはイノベーションの普遍的モデルといえる。

両利きの経営の実践には、きわめて高度なマネジメントが要求される。たとえば「サクセストラップ(成功の罠)」。一般的に、事業の規模が大きくなるにつれて、企業は既存の事業に偏り、探索がおろそかになってしまう。監訳者の入山章栄氏によると、現在イノベーションに課題を抱える日本企業の多くはこの罠に陥っているという。

中核事業を維持しながら、イノベーションを起こし、新たな成長を追求していくにはどうしたらよいか――。最終的に命運を握るのはリーダーシップだというのが、著者らの結論だ。リーダーの属人的な判断と采配が両利きの経営の成否を決める。これについてはいくつかの必要条件(ただし十分条件ではない)が提示されており、これらも必読の内容といえる。

本書の魅力はなんといっても、入山氏による理論の背景、冨山和彦氏による実務の最前線からの日本企業への示唆という「W解説」が収録されている点だ。これらが読者の理解の助けとなってくれる。

クリステンセン氏自身が「『イノベーションのジレンマ』を越える最重要理論」と激賞した「両利きの経営」。経営者やリーダー層はもちろん、あらゆるビジネスパーソンが本書を読み、破壊的イノベーションの果実を、自社の成長に結びつけることを願う。

しいたに

著者

チャールズ・A・オライリー
Charles A. O’Reilly Ⅲ

スタンフォード大学経営大学院教授
カリフォルニア大学バークレー校で情報システム学の修士号、組織行動論の博士号を取得。同校教授、ハーバード・ビジネススクールやコロンビア・ビジネススクールの客員教授などを経て現職。専門はリーダーシップ、組織文化、人事マネジメント、イノベーションなど。スタンフォード大学のティーチングアワードやアカデミー・オブ・マネジメント生涯功労賞などを受賞。また、ボストンのコンサルティング会社、チェンジロジックの共同創業者であり、欧米やアジアの幅広い企業向けにコンサルティング活動やマネジメント研修(破壊に対応するための企業変革や組織刷新、リーダーシップなどのプログラム)に従事してきた。スタンフォード大学のSEP(エグゼクティブ・プログラム)でも教鞭を執る。
主な著書にWinning Through Innovation: A Practical Guide to Leading Organizational Change and Renewal(邦訳『競争優位のイノベーション』ダイヤモンド社)、Hidden Value: How Great Companies Achieve Extraordinary Results with Ordinary People(邦訳『隠れた人材価値』翔泳社)などのほか、論文や記事の執筆も多数。

マイケル・L・タッシュマン
Michael L. Tushman

ハーバード・ビジネススクール教授
コーネル大学で科学修士号、マサチューセッツ工科大学(MIT)で組織行動論の博士号を取得。コロンビア大学教授、MIT客員教授、フランスINSEAD教授などを経て現職。専門は技術経営、リーダーシップ、組織変革など。アカデミー・オブ・マネジメント特別功労賞や全米人材開発機構(ASTD)生涯功労賞などを受賞。また、ボストンのコンサルティング会社、チェンジロジックの共同創業者であり、コンサルティング活動やマネジメント研修に従事。ハーバード・ビジネススクールのAMP(アドバンスト・マネジメント・プログラム)、マネジメント育成・変革リーダーシップ・組織刷新プログラムのファカルティ・ディレクターも務める。
主な著書にWinning Through Innovation: A Practical Guide to Leading Organizational Change and Renewal(邦訳『競争優位のイノベーション』ダイヤモンド社)、Competing by Design: The Power of Organizational Architecture(邦訳『競争優位の組織設計』春秋社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    両利きの経営は、深化と探索の活動を自在に、バランスよく高い次元で行うことである。深化では漸進型イノベーションと絶え間のない改善が重視され、探索では実験と行動を通じた学習が重視される。
  • 要点
    2
    探索を担うユニットは組織内にとどまり、成熟事業が築いた資産と組織能力を充分活用できる状態でなければならない。
  • 要点
    3
    両利きの経営は内部に矛盾をはらんだものとなる。探索と深化を共存させるには、リーダーの包括的で感情に訴えるビジョン、戦略、基本的価値観、幹部チームの強い結束力が重要となる。

要約

【必読ポイント!】 両利きの経営

イノベーションとはリーダーシップである

成功している企業が変化を前にして革新を求められたとき、なぜこれほど適応しづらいのだろうか。著者らは、研究者として、またコンサルタントとして、多くの組織やリーダーたちと交流を重ねてきた。多くの企業は、戦略的なビジョンを掲げ、巨大な資本を持ち、優秀な人材を揃えている。ところが、そうした企業がイノベーションや変化に直面したとき、それに適応できず、目も当てられないほど凋落してしまうケースもある。それはなぜなのか。

著者らの結論は「リーダーシップ」の問題だということだ。問われているのは、変化に直面したときにリーダーがどう行動するかである。

本書の目的は、そうしたリーダーに「両利きの経営(ambidexterity)」という武器を提供することにある。両利きとは、左右の両手がどちらも利き手であるかのように自在に使えることを意味する。企業経営においては、既存の事業を深めていく「深化(exploitation)」と、新しい事業の開拓をめざす「探索(exploration)」の活動が、高い次元で両立している状態を指す。これが企業の継続的なイノベーションと、サバイバルを可能とする。

サクセストラップに陥らないために
golubovy/gettyimages

しかし、企業にとって深化と探索のバランスをとるのは難しい。短期的な成功を保証するのは深化である。深化があるからこそ、企業は安定して質の高い製品・サービスを世に出し、社会的な信用を得られる。探索はそもそも非効率的で、リスクが高い。しかし、探索に取り組まない企業は、変化に直面したときに破綻する可能性が高いのも事実だ。

ある経営学者は次のように予言している。「老舗企業は常に深化に専念し、すでに知っていることの活用にかけては腕を上げていく。それで短期的に優勢になるが、徐々に力を失い、つぶれてしまう」。

このように、成功すればするほど深化に偏り、長期的に失敗の危険性が増してしまう。これを「サクセストラップ」という。著者らは、この罠に落ちた例としてコダックを、この罠から免れた例として富士フイルムを挙げている。サクセストラップから企業を救うのが、両利きの経営だ。

破壊的イノベーションに立ち向かう
ipopba/gettyimages

両利きの経営が求められる次のケースは、成熟市場で成功した事業が、「破壊的イノベーション」の挑戦を受けたときである。ハーバード・ビジネススクール教授のクレイトン・クリステンセンの著書に、『イノベーションのジレンマ』がある。1997年に出版されて以来、そのインパクトが広く知られるようになった。

挑戦を受けた企業は成熟事業で何とか競争をしながら(深化)、実験や試行錯誤で新しい技術やビジネスモデルを探求する(探索)必要がある。しかし、クリステンセンは、組織が探索と深化を同時に進めることは不可能なので、探索にあたるユニットを切り離して外に出す、つまり「スピンアウト」をしなければならないと考えた。

それに対して、本書の著者らは、探索と深化を分断すれば先細りになるという。そして、探索のユニットにも、既存の経営資源を最大限活用できるような仕組みが必要だと主張する。それこそが両利きの経営である。

破壊的イノベーションに飲み込まれた企業は数知れない。たとえば、アマゾンの挑戦に敗れて消えていった企業群がそれにあたる。

リードし、破壊せよ

本書の原題は、「Lead and Disrupt(リードし、破壊せよ)」である。これには、読者に対し「業界をリードするとともに破壊を仕掛ける側でいてほしい」という、著者らの希望が込められている。

それを体現している企業の一例がアマゾンだ。著者らは、1994年にインターネット書店からはじまったアマゾンの歴史を、3つのフェーズに分けた。失敗も含めてイノベーションをリストアップすると、その数は25項目にものぼる。

アマゾンは、既存の組織能力と市場を深化しつつ、新しい組織能力や市場を開拓してきた。それを支えているのは、「顧客満足へのこだわり」「低価格」「長期展望の重視」という一連の基本的価値観(コアバリュー)である。アマゾンのCEO、ジェフ・ベゾス氏は次のように語っている。「長期志向になれば、顧客の利益と株主利益は一致する。短期的に見れば、必ずしもそうではないのだ。(中略)発明には長期のアプローチが欠かせない。というのは、その途中で多くの失敗を経るからだ。」実際に、リーダーシップを発揮して、この方針を貫き続けている。

両利きの経営を成立させるには、組織を調整するリーダーの手腕が欠かせない。

両利きの経営を実践する

2つの組織ユニットをマネジメントする

それでは、成熟事業における「深化」とは、どのようなものなのか。トヨタの工場を思い浮かべてほしい。成功要因として重視されるのは、コストダウン、効率性と生産性の向上、漸進型イノベーションといったことだろう。効率性、コントロール、確実性に力点がおかれる。

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リーダーシップ・マネジメント 経営戦略
著者
チャールズ・A・オライリー マイケル・L・タッシュマン 入山章栄(監訳) 冨山和彦(解説) 渡部典子(訳)
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