アナログの逆襲
「ポストデジタル経済」へ、ビジネスや発想はこう変わる

未 読
アナログの逆襲
ジャンル
著者
デイビッド・サックス 加藤万里子(訳)
出版社
インターシフト 出版社ページへ
定価
2,310円(税込)
出版日
2018年12月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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「ポストデジタル経済」へ、ビジネスや発想はこう変わる
著者
デイビッド・サックス 加藤万里子(訳)
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定価
2,310円(税込)
出版日
2018年12月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
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レビュー

書類のやりとりがデータで行われ、電子書籍が普及し始めたとき、「紙が完全になくなる日は近い」と誰もが予想したことだろう。ところが実際にはいまも紙とインクは生き残っている。それどころかアメリカでは紙の書籍を扱う書店が増加し、ノートブランドである「モレスキン」は世界的に売り上げを伸ばしている。これはどういうことなのだろうか。

本書ではこうしたアナログへ回帰する流れを「アナログの逆襲」と称して紹介する。アナログなものを好む流れは、意外にもデジタル・テクノロジー企業や、若者の間で起きているのだという。著者はそれを「デジタルでは代替できない魅力がアナログにはあるからだ」と説明する。そしてふたたび増え始めた個人書店やレコードなどに焦点を当てながら、デジタル時代の先にある「ポストデジタル」世界を考察していく。

なお断っておくと、本書の主題は「デジタルを捨て、アナログ時代に戻るべし」というものではない。デジタルのよさや必要性は著者も認めている。しかしデジタルの弱点を指摘しつつ、アナログの持つ「経験」や「感覚」の価値を再考すべきというのが著者の考えだ。人はもはやアナログだけでは生きられないが、デジタルだけでも生きられない。人はアナログの身体に住み、フィジカルな感覚を求めているのである。

日々デジタルに囲まれて忙しく生活している人は、快適なソファでコーヒーでも飲みながら、本書を「読む」というアナログ体験をぜひ味わってみてほしい。

池田明季哉

著者

デイビッド・サックス (David Sax)
ジャーナリスト。ビジネスやカルチャー分野を得意とする。『ブルームバーグ・ビジネスウィーク』『ニューヨーク・タイムズ』『ニューヨーカー』『ガーディアン』などに寄稿。本書は3冊目の著作である。トロント在住。

『ニューヨーク・タイムズ』紙 TOP10ブックス2016(Michiko Kakutani選)
『グローブ・アンド・メール』紙 年間ベストブック2016
『ナショナル・ポスト』紙 年間ベストブック2016
『Inc.』誌 起業家のための年間ベストブック2016
★アンドリュー・カーネギー優秀賞(最終候補作)2017

本書の要点

  • 要点
    1
    若者世代ほどアナログに回帰している。デジタルは万能ではない。五感を使って「経験」できるアナログのほうが、単純に優れている場合もある。
  • 要点
    2
    デジタル企業ほどアナログを重視している。創造性を高め、強固な企業文化を形成するには、人と人が実際に触れあい、会話する空間が欠かせない。
  • 要点
    3
    教育において、テクノロジーはかならずしも有効ではない。今後必要とされるのは、共感やコミュニケーション能力であり、それらを育てるにはアナログ的手法が必要である。

要約

増え続けるアナログな「モノ」

アナログを求める人々

デジタル・テクノロジーは、確実に私たちの生活を変えた。テクノロジーは日々進化し、古いテクノロジーは絶えず新しいテクノロジーに取って代わられている。紙の書籍、実店舗、CDやレコードは絶滅し、学校教育もすべてオンラインで行われるようになる――多くの人はそう考えていた。

しかし実際は逆のことが起きている。人々はふたたびアナログを求めるようになった。デジタルに囲まれる現代生活のなかで、商品やサービスに直接触れたいと望み、そのための余分な手間や出費をいとわなくなったのだ。

ここで重要なのは、「デジタルかアナログか」の二者択一ではないということである。アナログの逆襲から見えてくるのは、過去と共存しながらテクノロジーの未来を築く、新しいポストデジタル経済だ。

紙が好きな若者たち
undefined undefined/gettyimages

紙は真っ先にデジタルに取って代わられる技術だと思われていた。しかし現実として、いま世界中でノートメーカー「モレスキン」のノートの売り上げが伸びている。

アナログ技術は、特定の用途においてはデジタル技術よりも実務面で勝る。紙のノートはその好例だ。アナログは、生産性と機能性ではデジタルにかなわない。しかし「クリエイティビティ」「イマジネーション」「アート」といった分野においては、アナログのほうが有利である。人間は、五感を使った感覚によって肉体的な刺激を受ける必要がある。デジタルにはないアナログの強みは「経験」だ。フィジカルなものは、より魅力的な経験を生む。

いま紙に一番興味を持っているのは、若いデジタル世代なのだという。ノスタルジックな気持ちからではなく、「紙はデジタルよりも実用的である」という理由の人が多い。紙はデジタルではできないやりかたで情報を整理できる。新しいアイデアを考えるとき、デジタル・デバイスだけを使うよりも、まず紙の上に自由にスケッチしてからのほうが成功しやすくなったという企業もある。デジタル・デバイスは絶えずバージョンアップを繰り返すので、その都度使い方に慣れなければならないのに対し、紙とペンはただ取り出して使うだけという利点もある。

しかしながら「紙かデジタルのどちらか一方を選ばなければならない」というわけではない。紙に書いたものをスキャンして、オンラインで共有したりデータとして保存したり加工したりすることもできる。紙とデジタルは競合するのではなく、共存できるのだ。

欠点を魅力に変えたフィルム
Giorez/gettyimages

デジタルカメラはフィルムカメラよりも利便性が高く、瞬く間に普及した。一方でフィルムはそのまま絶滅の一途をたどるかに思われた。しかしいま新たな需要が広がっている。「ロモグラフィー」という、フィルムを使うロモ・カメラで撮影されたアナログでレトロな写真が、若者を中心にブームとなったのだ。

ロモグラフィーを撮る人々は、完璧さやスピードといった「質」は求めない。「シャッターを切って写真を撮る」というプロセスと、その仕上がりに魅力を感じている。

かつてデジタル写真の最大の課題は画質であり、画質が向上すれば問題は解決すると考えられていた。しかしデジタル写真の最大の問題は、写真が実在しないということだった。家族アルバムは消滅し、紙に印刷された写真は激減した。

人々は写真に必ずしも画質だけを求めているわけではない。フィルムカメラは、予測のつかない仕上がりや画面のぼやけといった、アナログの欠点を強みに変えたことで成功したのである。

解決策はアナログにあり

収益の出ないデジタル出版

印刷出版物は、デジタル出版物よりも製造・流通にコストがかかる。それにもかかわらず印刷は特定の分野で成長しており、いまやデジタル出版物のアナログ版すら生み出されている。

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