MiND
心の哲学

未 読
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ジャンル
著者
ジョン・R. サール 山本貴光(訳) 吉川浩満(訳)
出版社
定価
1,650円(税込)
出版日
2018年11月10日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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心の哲学
著者
ジョン・R. サール 山本貴光(訳) 吉川浩満(訳)
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定価
1,650円(税込)
出版日
2018年11月10日
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明瞭性
4.0
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3.5
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おすすめポイント

現代哲学はフランスやドイツを中心とした「大陸系」と、アメリカとイギリスを中心とした「分析系」に二分されるが、本書の著者ジョン・R・サールは、後者を代表する大家である。

分析系の哲学は、記号や論理式を多用した数学のような記述で構成されることが多い。ゆえにとっつきにくく感じるかもしれない。またそのせいもあってか、日本ではハイデガー、フーコー、デリダといった大陸系の哲学者と比べると、一般的に馴染みが薄い分野となっている。

だが世界的に見ると、分析系の哲学の影響力は大きい。本書で取り上げられる「心の哲学」は、言語、論理の哲学と並び、分析系の哲学における最大のトピックのひとつだ。本書は心の哲学における議論を整理し、これまでの議論がいかに誤っているかを解き明かす。行動主義、機能主義、同一説、随伴現象主義やチューリングテスト、中国語の部屋、哲学的ゾンビといった、心の哲学における論点がくまなく解説されており、サールによるそれぞれの批評も平易だ。現代哲学の主要な論点を学ぶための格好の入門書と言えるだろう。

また入門のための解説だけに留まらず、サールの「生物学的自然主義」という心の哲学の立場について、わかりやすく解説されているのも興味深い。いまだ決着のつかない心の哲学の議論を、今後さらに深めていくための土台となる一冊だ。

ライター画像
大賀祐樹

著者

ジョン・R・サール (John Rogers Searle)
1932年生まれ。アメリカの哲学者。ウィスコンシン大学に入学後、オクスフォード大学にて学士、修士、博士号を取得。帰国後、カリフォルニア大学バークレー校の助教授となり、のちに同校教授。言語哲学を出発点として、心の哲学に関心を広げ、生物学的自然主義の立場からさまざまな論争を繰り広げる。2000年、ジャン・ニコ賞を受賞。2004年、米国人文科学勲章を受章。おもな邦訳書に、『言語行為』『志向性』『意識の神秘』などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    心の哲学は現代哲学における主要な論点にもかかわらず、影響力のある理論はすべて誤っている。本書はこれまでの議論を整理、解説したうえで、何故それが誤りなのかを提示する。
  • 要点
    2
    現代では心と脳の機能を同一のものとする唯物論が主流になっている。だが唯物論は意識や志向性の存在という、常識的な感覚を忘れがちである。心の哲学の問題を解決するためには、伝統的な前提を捨て去らなければならない。
  • 要点
    3
    ヒューム以降、自己なるものは存在せず、あるのは瞬間ごとの「知覚の束」というのが、哲学における一般的な考えになった。だが自己は理性のもと、志向性を組織する能力も有している。

要約

心の哲学とは何か

これまでの心の哲学の理論は全部誤っている?

心の哲学は、現代哲学における最も重要なテーマのひとつである。それにもかかわらず、有名で影響力のある理論がすべて誤っているという点で、哲学のなかでも類を見ないテーマだ。

二元論と唯物論を中心として、行動主義、機能主義、計算主義、消去主義、随伴現象主義など、心の哲学にはさまざまな理論がある。だが著者サールによると、これらすべての理論が誤っているという。

サールは誤った理論へ向かおうとする欲求から真実を救い出すため、現代におけるさまざまな理論の問題と議論、歴史的背景を整理し解説したうえで、自身が正しいと考えるアプローチを提示する。

デカルトの実体二元論
Photos.com/gettyimages

心の哲学は、17世紀の哲学者デカルトによって始まった。心についてのデカルトの考えは、有名な「われ思う、故にわれ在り」という文章に要約されている。

デカルトによると、世界は心的な実体と物理的な実体という二種類の存在者に分けられる。また心の本質は意識であり、心が意識的な状態にあることで私たちは存在している。一方で物理的実体としての身体は、物理法則に制約されている。

このように心と身体という二種類の実体が存在すると考えるのが、デカルトの「実体二元論」だ。だがデカルトのこの見解は、問題を解決するのではなく、むしろ多くの問題を残した。

デカルトが残した問題

デカルトが正しければ、心と身体は完全に別の領域として区別されるはずだ。だが実際は、腕を動かそうと意識すれば腕は動くし、身体に衝撃を受ければ意識に痛みが生じる。

このような心と身体の因果関係の問題は「心身問題」と呼ばれる。私たちは自分の心を直接知ることができるので、私の意識がある限り、私の存在は確実である。ところが意識を持っていることがわかるのは自分の心だけであり、他人の心を自分の心と同じように知ることはできない。

ではどうやって他人に心があると知ることができるのか。これを突き詰めて考えると、確実に心を持っているといえるのは世界で自分一人であるから、世界には自分一人しか存在しないとする「独我論」に行き着くこととなる。

人が確実に得られる知識は、心が直接知覚しているものだけだ。たとえば私が見ている山や川は、心の中に山や川の「観念」として知覚されたものである。心の外の世界に、心が知覚したありのままの姿で山や川が存在しているかどうかは定かではない。では知覚が外部世界を正しく表象しているということを、私たちはどのようにして確信できるようになるのか。あるいはそもそも外部世界は本当に存在しているのか。

こうした問題意識は、哲学の歴史において「人は本当の対象を知覚している」とする見解から、「人は対象の観念を知覚しているにすぎない」とする決定的かつ重要な移行をもたらした。だがサールはこれを「過去4世紀間の哲学史における最大の災い」だと述べている。

【必読ポイント!】 本当に心は存在しないのか?

唯物論の問題
PPcavalry/gettyimages

現代の心の哲学において、最大の影響力をもっている学説は唯物論である。唯物論とは、二元論は誤りであり、心的現象は存在せず、物質的もしくは物理的なものだけが唯一存在するとする一元論だ。

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