東京格差
浮かぶ街・沈む街

未 読
東京格差
ジャンル
著者
中川寛子
出版社
定価
950円
出版日
2018年12月05日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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東京格差
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浮かぶ街・沈む街
著者
中川寛子
未 読
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定価
950円
出版日
2018年12月05日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
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レビュー

東京は明治維新以降、常に変化を続けてきた。バブル期までは東京全域がより便利になり、地価が上がるという恩恵にあずかれていた。だが著者の中川寛子氏によれば、近年ではその変化に地域格差が出ているのだという。バブル期のピークと比べると、2018年の東京の住宅地の平均単価は半分以下だ。そのなかでも都心とそれ以外で格差ができつつある。

本書はいまの住宅観・住宅街観が生まれた背景を解説しつつ、これからのまち選びのあり方を提示する。著者が疑問を投げかけるのは、「閑静な住宅街」「職住分離」「住みやすいまち」「東京は冷たい」そして「大都市だから」という、5つの常識についてだ。そもそも日本の古くからの伝統のように語られる「専業主婦」や「長距離通勤」の文化は、比較的新しいものとされている。これまでの住居の選択には、こうした価値観が大きく影響を与えていたが、働き方が大きく変わり、人口減少が予想される現代では、まち選びの基準も大幅に変わることになるだろう。

私たちは「住みやすさ」を評価するときに、いまのまちの状況だけで判断しがちであり、「誰かがまちを住みやすいものにしてくれる」と無意識に期待しがちだ。しかしこれからの数十年で、自分が何もしなくてもまちが住みやすいということは期待できなくなると著者は指摘する。これからの住み方を考えるにあたっては、主体的に「住みやすさ」を作り出すことが期待されることになるかもしれない。東京そして日本における「まち」のあり方を再考させられる一冊だ。

池田 明季哉

著者

中川 寛子 (なかがわ ひろこ)
1960年生まれ。住まいと街の解説者。オールアバウト「住みやすい街選び」ガイド。不動産一筋に30余年、買う、借りる、貸す、売る、投資するなど、それぞれの立場を踏まえた上での不動産市場の変化の解説で人気。著書に『解決! 空き家問題』(ちくま新書)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    かつて庶民にとって住宅の所有は現実的ではなかった。だが第二次世界大戦後の法改正を受けて、住宅所有熱は高まっていく。
  • 要点
    2
    「閑静な住宅街」「長距離通勤」といった価値観は比較的最近のものであり、現在の多様化しつつある働き方とは相容れない部分がある。
  • 要点
    3
    人々が「住みやすさ」の指標としてきた自治体の補助金や「サービス」などは、今後の人口減少で立ちいかなくなる可能性が高い。私たちは「住みやすさ」を受動的に期待するのではなく、自ら主体的な行動を持って「住みやすさ」を追求していく必要がある。

要約

まちの単純機能化が進んだ江戸から2000年代まで

江戸から明治の都市私有へ
Yue_/gettyimages

江戸時代後期の江戸は、町民と武士がそれぞれ50万人ほどの100万都市だったことが推定される。当時の江戸は世界一の稠密(ちょうみつ)都市であった。人口そのものが多かったことに加えて、身分によって居住地が定められていたことが、その要因である。

明治に入ると土地私有が始まるが、土地価格は驚くほど安かった。当時の町の開発状況によって価格が決まっていたため、現在の東京の地価とは逆に、西側の台地が安く東側の低地が高かった。また土地を所有する人は偏っており、100人余が東京の宅地の4分の1を保有している状況だったという。

明治から大正初期には賃貸経営が始まった。大正中期以降に爵位保持者の土地解放が行われ、こうした土地は宅地化されたものの、住宅地に土地を買うことができたのはごく一部の人であり、多くの人は賃貸に住んでいた。

関東大震災を機に、西へと移動する首都圏

大正12年(1923)の関東大震災を機に、東京の重心は被害の少なかった首都圏の西側へ移動する。この時期に作られたまちの特徴を見ると、現在の東急電鉄の前身であり、渋沢栄一が自身の理想を実現すべく作った田園都市株式会社が、近年の人々の価値観の基礎を築いたことがわかる。

渋沢の考えたまちづくりのポイントは、住環境を最優先して、住むだけのまちを作ることである。当時の都心部は工場からの騒音や煙、排水などに汚染され、そこに自動車の排気ガスが加わり、住環境としては劣悪だった。そこで住宅地と商業地を分けて、清潔な住環境を作ろうとしたのである。

いまの感覚では買い物に不便ではないかと思われるが、当時の住宅を買う層であれば女中がいることが普通であり、御用聞きに回って配達する商店も多く、商業施設が遠くにあっても問題なかったのだ。

第二次世界大戦後の法制度改正で、土地を所有する人や財産を相続できる人、住宅を所有する人が増えたが、安全性に問題のある粗末な住宅も多く、庶民の住宅や住環境の質は低レベルのままであった。それでも土地や住宅を取得できるという感覚が人々を高揚させたのか、昭和30年代以降は住宅取得熱が高まっていく。

狭くて遠い住宅を量産したバブル時代
metamorworks/gettyimages

この時代から、まちへ影響を与える出来事がいくつも起こっている。法の面では、土地造成が盛んになったことを受けての宅地造成等規制法、高層ビルへの布石となる建築基準法の改正が挙げられる。人々の生活スタイルについては、自動車の所有が一般的になり、地方から都会へ人が移動するようになった。職住分離、専業主婦を前提としたようなスタイルの団地が増え、まちは人為的で単純化されたものになっていった。

1986年から1991年のバブル経済の時期、不動産価格はどんどん高騰していった。これがいまにまで続くマイナスを生み出している。ひとつは「不動産は楽して儲かる、値上がりする」という刷り込みである。この時代から不動産投資がビジネスとして成功するようになり、サラリーマン大家が急増。土地所有者にアパート建設を持ちかける例も多かった。その結果、現在の個人の大家は大半が素人で、いまだに将来の空き家量産に他ならないアパート建設が盛んに行われている。

また住宅価格の高騰は、狭くて遠い住宅を量産した。価格高騰に焦る人々は、住みたい場所を選ぶという発想がなく、借りられる場所で借りるという時代であった。だがいまでは都心部から30~40キロ圏以遠の住宅は空き家化し、地域自体も人口減少に悩まされている。

そして関東大震災で移動した重心は、バブル期に行われた都庁の移転で、さらに西へ進むことになった。

まち選びのはじまり

土地価格の急落でまち選びが可能に

バブル崩壊後の1992年から土地価格が急落し、「住みたいまちに買う」ことが可能になった。さらに1994年に行われた住宅ローン金利に関する規制撤廃により、ローンも選べるようになる。

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産業・業界 政治・経済
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中川寛子
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2018年12月05日
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