成功する起業家は「居場所」を選ぶ

最速で事業を育てる環境をデザインする方法
未読
成功する起業家は「居場所」を選ぶ
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最速で事業を育てる環境をデザインする方法
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成功する起業家は「居場所」を選ぶ
出版社
出版日
2019年04月15日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

起業やイノベーションに関する情報は世の中にあふれている。にもかかわらず、起業でうまくいかない人が絶えないのはなぜか。それは知識やノウハウ以外に、成否を分ける要素があるからではないだろうか。

東京大学にて200以上のプロジェクトを支援してきたアクセラレーターの著者は、そうした仮説のもとに、起業を取り巻く「環境」に注目した。最速で事業を育てる環境をデザインするには? 行動科学・社会学・心理学・経営学などのエビデンスをベースに、そのポイントをまとめあげたのが本書である。そのため、実効性の高さはお墨付きだ。

本書が想定している読み手は次のような人たちだ。起業家、またはこれから起業したいと考えている人、そして、自社の企業文化を変えたいと思っている人たちである。とはいえ、優れたビジネス書の例にもれず、本書も、上記に該当しないビジネスパースンにも役立つ普遍的な着想と知恵に満ちている。また、携帯電話向けソフトウェア開発で著名な伝説の起業家・鎌田富久氏と著者との対談も、読み応え満点だ。

本要約では、特にこれから起業をしようという初心者を想定して、環境の「選び方」をメインに紹介する。著者の願いは、最終的には一人ひとりが環境の担い手として、環境を育てていく側にまわってほしいというものだ。新しい事業を生み出す立場になるのなら、起業の成功確率を高めるための秘訣を読まない手はない。

ライター画像
しいたに

著者

馬田 隆明(うまだ たかあき)
University of Torontoを卒業後、日本マイクロソフト株式会社に入社。『Microsoft Visual Studio』のプロダクトマネジャーやMicrosoftの最新技術を伝えるテクニカルエバンジェリストなどを務めた後、スタートアップの支援を行う。2016年6月より東京大学 産学協創推進本部にて学生や研究者のスタートアップ支援活動に従事し、学業以外のサイドプロジェクトを行う『東京大学 本郷テックガレージ』や、卒業生・現役生・研究者向けのスタートアップのインセプション(起点)プログラム『東京大学 FoundX』でディレクターを務めている。著書に『逆説のスタートアップ思考』(中央公論新社)がある他、スタートアップ関連の情報発信を積極的に行っている。

本書の要点

  • 要点
    1
    本書は「自ら環境を創り出し、環境によって自らを変えよ」という考え方を提示する。
  • 要点
    2
    まずは優れた環境に飛び込んでみるとよい。起業家にとって適した環境は、「4つのP」というフレームワークで考えられる。最適な場所(Place)と人(People)を選び、正しく訓練(Practice)をしながらその実践プロセス(Process)を整備することが大事だ。
  • 要点
    3
    「自分の周りの環境を良くすることで自分自身を向上させる」という姿勢をもつことは、起業の成功確率を高めてくれる。

要約

環境から始める

本書が提案するコンセプト
Rawpixel/gettyimages

本書が提案するのは、「起業して成功するために環境を変えてみよう」というコンセプトだ。これは、「自ら環境を創り出し、環境によって自らを変えよ」という言葉に集約できる。

もちろん、最初から自ら環境を創り出せる人は多くない。したがって、自らの足らないところや弱さを認めたうえで、まずは優れた環境に飛び込んでみるとよい。その後うまく行けば、後から続く人たちのために優れた環境を創る側にまわってほしい、というのが著者の願いだ。

そうしたことを念頭におけば、起業とは、自分たちの事業によって良い会社や社会という環境を創り、多くの人たちに居場所を提供することだと定義できるだろう。

4つのP

環境を変えるとは、タイトルにもあるように、まず「自分の居場所」を変えることである。くわえて、目的に合わせて環境を育てていくことで、各自の中に眠る創造性や実行力を刺激するという意味も含まれる。これらは「運を上げる」ことにもつながる。

では、起業家にとって最適な環境はどのようなものなのか。それを深堀りするために、環境を次の「4つのP」に分けて考えていく。

・Place:どこでやるか?

・People:誰とつながるか?

・Practice:どう訓練するか?

・Process:どう仕組みを作るか?

本書の主張は、最適な場所(Place)と人(People)を選び、正しく訓練(Practice)をしながらその実践プロセス(Process)を整備しよう、というものだ。

【必読ポイント!】 環境を選ぶ

Place:直面する課題を解消してくれる場所
Sladic/gettyimages

著者は、東京大学のある文京区本郷に引っ越した。この経験も踏まえて、「住む場所を変える」ことを提案している。引っ越しは、一時的に金銭的コストが発生するものの、一回実行すれば、変化への継続的な意思を持つ必要がない。

見逃せないのは、起業で直面する問題は、場所が解消してくれるというケースだ。選ぶポイントとして、「起業家のつながりができる」場所というのが挙げられる。それは特定の地域の場合もあれば、コミュニティの場合もある。著者が提供しているような、起業家支援のプログラムに参加してみるというのも、居場所を変える一手段となる。他の起業家が物理的に近くにいることの効果は見逃せない。

起業前であれば、スタートアップで働いてみるとよい。起業後のイメージを具体化できるうえに、共同創業者が見つかるかもしれない。何より、先輩起業家の近くで働くことが、起業の「代理体験」となり、起業家として成功できるという自信を高める効果がある。また、すでに起業していても、一定期間他のチームとオフィスをシェアして一緒に働くなど、さまざまな手が考えられる。

創造性を育むうえでは、役割が明確ではない「マージナルな場所」こそが重要となる。シリコンバレーの起業物語でよく耳にする「ガレージ」も、マージナルな場所に類似している。使用のルールがなく、人の出入りが自由で、ものが散乱していても問題ない。そのため、実験に適しており、多くの発明が生まれやすい場所だ。

People:起業家の力を引き出す人の存在

「あなたは、あなたの周りにいる最も近しい人5人の平均だ」という。この言葉のとおり、大きく環境を変えたいのなら、思い切って付き合う人を変えてみるとよい。

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要約公開日 2019.07.11
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