佐藤優直伝! 最強の働き方

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出版社
自由国民社

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出版日
2019年08月08日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

元外交官であり著名な作家である佐藤優氏が、残酷な社会で生き抜くための働き方を伝授する。元号が変わって令和となったいま、社会は自己努力だけで生活を改善していけないほど厳しい状況になっている。非正規雇用は拡大し、そのほとんどは「働いても働いても生活が豊かにならない」ワーキングプアだ。「老後2000万円問題」が話題になったように、公的年金制度があまりにも頼りないことは周知の事実だ。その中で、私たちの労働環境も刻々と変化している。組織内で一生懸命に働き、歯を食いしばって耐えていくだけではもはや生き残れない。本書では、佐藤氏がこの厳しい労働環境を生き抜いていくための考え方や、具体的な策を示す。

本書は、朝日カルチャーセンターでの連続講義の内容がもとになっている。マルクスの『資本論』に基づいた経済理論や、『聖書』やピーパーの『余暇と祝祭』に踏み入る哲学的考察が展開される。と同時に、元外交官だからこそ語れる裏話や、テレビドラマの話、コミカルに語られる経験談も織り交ぜられ、重厚でありながら読みやすい一冊となっている。今まで思いもよらなかった考えが、身近な実例とともに次々に頭に入ってくる。

「働く」ということは、誰しもが避けて通れない大切なテーマである。働くということに疲れてしまった方、働くことの意味に迷ってしまった方、組織で働くことがしんどいと感じている方にぜひ、手に取って読んでいただきたい。佐藤氏が提示する「最強の働き方」は、今後の人生の羅針盤となり、大いに役立つであろう。

ライター画像
木下隆志

著者

佐藤 優(さとうまさる)
1960年東京生まれ。85年同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在英日本国大使館、在ロシア連邦日本国大使館に勤務した後、95年より外務本省国際情報局分析第一課において勤務。98年より主任分析官として、対ロシア外交の最前線で活躍。2002年、背任と偽計業務妨害罪容疑で東京地検特捜部に逮捕され、以後、東京拘置所に512日間勾留される。09年、最高裁で上告棄却、執行猶予付有罪が確定し、外務省を失職。13年に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。05年に発表した『国家の罠』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞を受賞。翌06年には『自壊する帝国』(新潮社)で、第5回新潮ドキュメント賞、07年第38回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『獄中記』(岩波現代文庫)、『十五の夏』(幻冬舎)、『友情について』(講談社)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    働き方改革は、資本家(経営者)の利益に合致したかたちでの労働再編だ。そして、資本主義の根本的な構造とは、金と命を交換するということである。働き過ぎてはいけない。
  • 要点
    2
    資本主義システムの中で持続的に賃金を稼いでいるということは、見えなくても誰かの役に立っているということだ。このリアリティを持てるかどうかで生き方は変わる。
  • 要点
    3
    仕事の目的とは休むことだ。余暇を楽しく過ごせば、日々の仕事に潜んでいる問題をあらい出すこともできる。仕事の論理だけで全てを考えようとしないことだ。

要約

【必読ポイント】働き過ぎてはいけない

低賃金のままで、一生使い切られる
watoson/gettyimages

安倍政権が考えている働き方改革は労働法制を根本的に変えていくことである。まずは残業の上限規制がある。これは、カール・マルクスの『資本論』を読んでいればわかるように、資本主義システムを守るためにやっていることだ。残業を極端に多くすると、人間が死んでしまうので、次世代の労働者を生み育てることもできなくなり、資本主義システムを再生産できなくなってしまう。

ほかに同一労働同一賃金がある。これは同一企業内の正社員と契約社員を同じにするということを意味する。年功序列の賃金制度を不合理だと考えて、正社員の賃金を切り下げて契約社員に近づける。それによって、低賃金のまま、一生正社員を使い切ろうという発想が根本にある。

さらに雇用関係によらない労働、つまり自分自身が個人事業主だということにして請負契約をすることを促進すれば、会社は社会保険料や雇用保険を払わなくていいので節約できる。

なので、基本的にこうした改革は、まさに資本家(経営者)の利益に合致したかたちでの、労働再編なのである。

労働者の自己実現はない

労働者と資本家の関係性を考えてみる。労働者は自由で平等な関係で資本家と契約し、契約時間内、職務の範囲内だけ資本家のいうことを聞けばよい。しかし、例えば労働者を時給1000円で雇っているとすれば、企業は絶対に1000円以上儲けている。その儲けは資本側からみると「利潤」で、労働者からみると「搾取」なのである。資本主義社会において、「搾取」は合法だ。雇用契約をして労働者に賃金を払っていても、労働者が生み出している付加価値に対しては支払われないことになる。

労働者自身に働く能力はあるが、生産手段がないため、雇用されないとそれを使うことができない。雇用されたら、企業の命令に従って働くしかない。つまり労働者は労働の主体にはなっていない。「私はこの仕事がしたい」「自己実現をはかりましょう」といっても、資本主義において、労働者は自己実現できない。資本主義においては資本家の自己実現しかないのだ。

労働力を買っている資本家の権利は、少しでも労働者を合理的に、効率的に使って、利潤を増大させることだ。対して、労働力を売っている労働者の権利は、生活したり仕事を続けたりする、生きる権利ということだ。買い手の権利は金の問題、売り手の権利は命の問題である。つまり、金と命の交換をしているというのが、資本主義の根本的な構造なのだ。

しかし、人間の価値からして明らかに、金より命のほうが上である。無理をかければ、労働者が再生産できなくなり、資本主義システムがつぶれるということは、マルクス経済学を知っていれば感覚としてわかる。だから、日本国憲法や労働基準法で、資本家だけでなく労働者の生きる権利を守ることは、永続的に資本主義を発展させるための仕組みでもある。

職業選択を間違えてはいけない

資格をとっても、なんとかならない資格もある
bee32/gettyimages

著者が大学で講義を行うときには、初回に『逃げるは恥だが役に立つ』(TBSドラマ)の第1話の出だしを見せるという。主人公の森山みくり(新垣結衣)は就活が上手くいかなかったので大学院に進学して、臨床心理士になった。だがその後も就職先が見つからず、派遣会社で勤めていたが、派遣切りにあってしまう。

著者によると、そもそも就職できないから大学院に行くという選択も間違いなのだが、その上で臨床心理士の資格取得を選ぶというのも間違っている。臨床心理士の世界とは、精神科医が牛耳っている世界である。その業界では簡単に就職先が見つからない。資格をとればなんとかなるといっても、なんとかなる資格と、なんとかならない資格があるのだ。

ほかにも、有望と思われていてもなんとかならない資格が2つある。1つ目が

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要約公開日 2019.09.24
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