「家族の幸せ」の経済学

データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実
未読
「家族の幸せ」の経済学
「家族の幸せ」の経済学
データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実
未読
「家族の幸せ」の経済学
出版社
出版日
2019年07月30日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「子どもが幼いうちは母親がつきっきりで育てるべき」「ミルクでなく、母乳を与えたほうがよい」「離婚した夫婦の子どもは不幸になる」――テレビやインターネットなどでよく耳にする話だ。本書では、経年のデータを検討することによって、科学的な「確からしさ」をわかりやすく紹介し、こういった「常識」にメスを入れていく。本書を読めば、政府統計にすら数字のマジックが潜んでいることや、これまでの研究の多くが示してきた「結果」を鵜呑みにしてはいけないということがわかるだろう。

著者は本書で、著者自身の意見を提示しつつも、決してそれを押し付けることはない。データに基づいていくつかのあり方を示した上で、どうすれば自分(たち)がより「幸せ」になれるかを自分(たち)で考えるように水を向けているところに、著者のデータに対する誠実さが現れている。それは、「あとがき」に記された次の言葉からも読み取れる。「すべての物事には良い側面もあれば、悪い側面もあります。だから、それらを総合的に考慮した上で、あなたと家族にとって何が幸せにつながるのかを、あなた自身が選びとってください。科学的研究は、私たちがよりよい選択をする上での助けにはなりますが、『何が自分にとっての幸せなのか』までは教えてくれません」

これから結婚しようとしている人、子どもをもうけようとしている人はもちろん、未来を担う子どもたちを等しく支えるこの社会の構成員のみなさんに、ぜひお読みいただきたい一冊である。

著者

山口 慎太郎(やまぐち しんたろう)
東京大学経済学部・政策評価研究教育センター准教授。1999年慶應義塾大学商学部卒業。2001年同大学大学院商学研究科修士課程修了。06年アメリカ・ウィスコンシン大学経済学博士(Ph .D)取得。カナダ・マクマスター大学助教授、准教授を経て、17年より現職。専門は、結婚・出産・子育てなどを経済学的手法で研究する「家庭の経済学」と、労働市場を分析する「労働経済学」。

本書の要点

  • 要点
    1
    母乳育児は、生後1年間の乳児に健康面のメリットをもたらす。だが、長期的にみるとメリットがないこともわかっている。
  • 要点
    2
    ノルウェーでは、同僚や兄弟といった近しい男性が育休を取得した場合、周囲の男性の育休取得率が11〜15パーセント上昇したというデータがある。
  • 要点
    3
    幼児教育によって、生涯労働所得の増加、犯罪の減少、社会福祉利用の減少など、社会全体に恩恵がもたらされることがわかっている。

要約

結婚の経済学

結婚にメリットはあるか
Sasiistock/gettyimages

総務省と厚生労働省の調査によると、日本における生涯未婚率や平均初婚年齢は上昇し続けている。男女の収入格差が次第に小さくなってきていることなどにより、「費用の節約」「分業の利益」「リスクの分かち合い」「子どもを持つこと」などといったメリットが崩れていった結果、結婚しない人が増えてきていると考えられる。

特に大きなポイントになっているのは、子どもを持つ費用が上がり続けていることだろう。子どもを持つことの費用には、おむつ代や食費、保育園・幼稚園、習い事、塾通いなどといった直接的な金銭の支出だけでなく、「子育てをしなければ得られたであろう仕事からの収入」という「機会費用」が含まれている。高学歴でキャリアのある女性ほど多額の機会費用が失われるため、結婚にメリットを感じづらくなってしまう。

家庭における分業の利益が少なくなっていることも見逃せない。テクノロジーの発達などによって世の中が便利になるにつれて、自分たちで行う家事の総量が減っているためだ。

どう出会い、どんな人と結婚するのか

かつて結婚成立においては、お見合いが重要な役割を果たしていた。だが今やその役割は小さくなり、オンラインでの出会いが存在感を増しつつある。アメリカでは、カップルの2割がオンラインのマッチングサイトで出会っているというデータもあるほどだ。

本書では、ユーザーの利用動向を分析することによって得られた、マッチングサイトにおける出会いの傾向が紹介されている。たとえば、カップルの組み合わせについて。「似たもの同士がカップルになりやすい」とは、ほとんどの人が直感的に理解できるところだろう。実際、アメリカでは、年齢、容姿、身長、体重、収入、学歴のすべてにおいて似たもの同士がマッチしていることが明らかにされている。

また、オンラインとオフラインを比較すると、オフラインでの出会いのほうがより多くの同学歴カップルを生み出していることもわかっている。オフラインで異なる学歴の人と出会う機会が少ないことがその理由だろう。マッチングサイトを通して、オフラインでは出会いにくかった職業や居住地の人同士の出会いが生まれ、結婚に結びついていることもわかっている。

赤ちゃんの経済学

出生体重は子どもの人生にどう影響するのか
RyanJLane/gettyimages

赤ちゃんに対してはさまざまな「信仰」がまことしやかに囁かれている。なかでも、出生体重や帝王切開、母乳育児はその対象となってきた。要約では、出生体重と母乳育児の「神話」と「真実」を取り上げる。

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要約公開日 2019.09.28
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