僕は君たちに武器を配りたい

未読
僕は君たちに武器を配りたい
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僕は君たちに武器を配りたい
出版社
出版日
2011年09月21日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

2019年8月10日、瀧本哲史氏が亡くなった。享年47歳。あまりにも早すぎる死だった。

瀧本氏は東京大学法学部を卒業後、大学院を経ずして研究科助手に抜擢された傑物だ。それほどの能力があるのなら、そのまま学者として大成することもできただろう。しかし彼はその後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社することを決断し、日本交通等の改革で手腕を発揮。独立してからはエンジェル投資家として活躍しつつ、京都大学客員准教授という立場から「起業論」を説いた。

そんな瀧本氏が、私たちに贈る「武器」として書き上げたのが本書だ。彼の目には私たちの持つ「武器」が、まさに竹槍の如く映っていたのだろう。生前彼は星海社新書「軍事顧問」という肩書を名乗っていたが、それはけっして伊達や酔狂ではない。資本主義という戦場を生き延びるための戦略と戦術を、私たちに伝えたかったのだ。

2011年に書かれた書籍ということもあり、中にはいま読み返すと「あの頃とは社会情勢が変わった」と思わされるところもある。たとえば日本における有効求人倍率は改善されてきているし、米経済界では「株主第一主義」に対する見直しも始まった。

それでも本書のエッセンスは、現在も十分に通用するものばかりだ。これを読めば、現代社会を生きるための「武器」が手に入る。その「武器」を磨き続けるかどうかは、読者である私たちの手にかかっている。

著者

瀧本 哲史 (たきもと てつふみ)
京都大学産官学連携本部イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門客員准教授。エンジェル投資家。東京大学法学部卒業。東京大学大学院法学政治学研究科助手を経て、マッキンゼー&カンパニーにて、主にエレクトロニクス業界のコンサルティングに従事。内外の半導体、通信、エレクトロニクスメーカーの新規事業立ち上げ、投資プログラムの策定を行う。独立後は、企業再生やエンジェル投資家としての活動をしながら、京都大学で教育、研究、産官学連携活動を行っている。全日本ディベート連盟代表理事、全国教室ディベート連盟事務局長、星海社新書軍事顧問などもつとめる。著書『武器としての決断思考』(星海社新書)

本書の要点

  • 要点
    1
    「コモディティ」になってはならない。スペックが明確に定義できて、同じ商品を売る人が複数いれば、それはコモディティだ。
  • 要点
    2
    「スペシャリティ」になるには、既存の枠組みの中で努力するのではなく、資本主義におけるルールをしっかり理解することが求められる。
  • 要点
    3
    いまの資本主義においてコモディティ化せずに、主体的に稼げるようになる近道は、(1)トレーダー、(2)エキスパート、(3)マーケター、(4)イノベーター、(5)リーダー、(6)インベスターのいずれかになることだ。
  • 要点
    4
    ただし(1)トレーダーと(2)エキスパートには、今後厳しい運命が待ち受けているだろう。

要約

「コモディティ」対「スペシャリティ」

「コモディティ」になるな
undefined/gettyimages

日本ではいまだに「勉強して努力をすればかならず幸せになれる」という考えが、メディアを通して流布されている。しかし現実として、勉強(努力)と収入はかならずしも比例しない。

とくに重要なのが、「コモディティ(commodity)にならない」という視点だ。経済学においてコモディティとは、「スペックが明確に定義できるもの」のことを指し、市場に出回っている商品が個性を失い、消費者から見たときに個性が感じられないような状態を「コモディティ化」と呼ぶ。

たとえどんなに優れていたとしても、スペックが明確に定義できて、同じ商品を売る人が複数いれば、その商品はコモディティとなってしまう。それは商品だけでなく、人材の評価においても同じである。

これまでの「人材マーケット」では、資格などの客観的に測定できる指標が重視されていた。しかしそうした数字が同じであれば、企業はより安く雇えるほうを選ぶに決まっている。つまり資格や点数で自分を差別化しようとすることは、コモディティ化された人材になるということであり、最終的には「安いことが売り」という人材にならざるを得ないのだ。

こうしたコモディティ化現象は、世界のあらゆる産業で見られる。その潮流から逃れることは、現代社会に生きているかぎり、誰にもできない。だからこそこれからは企業においても個人においても、「コモディティにならないようにすること」が重要なのである。

生き残れるのは「スペシャリティ」だけ

コモディティ化の潮流から逃れるには、勉強時間を増やすとか、スキルや資格を身につけるといった努力をするのではなく、「スペシャリティ(specialty)」になるしかない。スペシャリティはコモディティの対極に位置し、「ほかの人には代えられない、唯一の人物(とその仕事)」「ほかの物では代替することができない、唯一の物」を意味する。

スペシャリティになるために必要なのは、これまでの枠組みの中で努力するのではなく、資本主義におけるルールを理解したうえで、なにがコモディティとスペシャリティを分けるのか、しっかり理解することだ。その理解がなければ、どれだけハイスペックなモノやサービスを生産しても、コモディティにとどまってしまい、高い賃金を稼ぐことはできないだろう。

本物の資本主義

人間の欲望に合致したシステム
nuvolanevicata/gettyimages

戦後の日本は、資本主義国家でありながら「世界で唯一、もっとも成功した社会主義の国」と言われてきた。政府が主導するかたちでの経済発展が、長いあいだ続いたからだ。しかし経済のグローバル化にともない、日本も激しい国際競争に巻き込まれることになり、世界中の人々と市場で競争する「本物の資本主義国家」にならざるを得なくなった。

資本主義は社会主義などの計画経済と異なり、「頭のいい人がすべてを決めるのは無理」という考えに立脚している。計画経済においては「500円の商品は全員500円で買うべき」とされるが、資本主義では市場で500円で売られているものを、「自分なら400円で作れる」と思ったならば、作って売る権利がある。こうして結果的に価格はどんどん下がり、逆に品質はどんどん向上していく。

こうしたスパイラルを繰り返すことで、世の中が進歩する――これが資本主義の考え方だ。資本主義というシステムがすぐれているのは、

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要約公開日 2019.09.25
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権は瀧本 哲史、株式会社フライヤーに帰属し、事前に瀧本 哲史、株式会社フライヤーへの書面による承諾を得ることなく本資料およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。
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