テンセント
知られざる中国デジタル革命トップランナーの全貌

未 読
テンセント
ジャンル
著者
呉暁波 箭子喜美江(訳)
出版社
プレジデント社 出版社ページへ
定価
2,530円(税込)
出版日
2020年10月19日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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知られざる中国デジタル革命トップランナーの全貌
著者
呉暁波 箭子喜美江(訳)
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定価
2,530円(税込)
出版日
2020年10月19日
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総合
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明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
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おすすめポイント

日本ではアメリカのテック企業群「GAFA」(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)が大きくもてはやされ、多くの書籍で取り上げられている。一方で、急成長している中国の三大企業「BAT」(バイドゥ、アリババ、テンセント)を取り上げたビジネスストーリーの書籍は、数が限られているのが現状だ。

本書は、そんなテンセントの歴史を描いた大著である。1998年の創業から、11億人のユーザーを擁するに至るまでの、同社20年の歩みが克明に綴られている。社史という位置づけでありながら、開発競争や訴訟の内幕、米国企業や日本企業の技術をどのように模倣したのかという点まで、赤裸々に明かされているのが興味深い。

なぜ、テンセントが時価総額・ユーザー数・収益力ともに、中国トップ企業となれたのか。同社の成功は、戦略によるものか、それとも偶然の産物なのか。同社が「模倣ばかり」「閉鎖的」と非難されるのはなぜなのか。これらの謎解きのために、著者は同社の歴史を紐解くことになる。創業者の馬化騰はあまりメディアに出ず、アリババのジャック・マーに比べて、その人となりが謎の人物だとされてきた。そんな馬化騰に、著者は何度もインタビューしており、本書はテンセント創業者の人物像を知る上でも貴重な書籍といえる。そこから、アメリカとは異なる中国のインターネット企業のあり方が浮き彫りになっていくさまは実に面白い。テンセントの軌跡を追うことで、読者は中国、アジアにおけるインターネットビジネスの過去と未来に思いを馳せることになるだろう。

ライター画像
狩野詔子

著者

呉 暁波(ウー・シァオボー)
著名ビジネス作家。「呉暁波チャンネル」主催。「藍獅子出版」創業者。中国企業史執筆や企業のケーススタディに取り組む。著書に『大敗局』(Ⅰ・Ⅱ)、『放蕩三十年』、『跌蕩一百年』、『浩蕩両千年』、『歴代経済改革の得失』など。著作は『亜洲周刊』のベスト図書に二度選ばれる。

本書の要点

  • 要点
    1
    テンセントは、中国のインターネット企業として、2番目に香港証券取引所に上場した。同社が開発したインスタントメッセージサービス「ウィーチャット」のユーザー数は、11億人に達した。
  • 要点
    2
    テンセントはソーシャルネットワーキングサービス「Qゾーン」において、仮想商品販売による収益化を成功させ、大きく躍進した。
  • 要点
    3
    中国のインターネット企業は、応用によるイノベーションの能力とその速度において、どの国の同業者にも引けを取らない。

要約

馬化騰(ポニー・マー)の過去

謎めいたインターネット企業、テンセント
Yijing Liu/gettyimages

テンセントは長い間、インターネット界において謎めいた存在であった。テンセントの創業者である馬化騰が、取材に応じることはめったにない。テンセントの扉は固く閉ざされ、メディアの取材を受け付けないばかりか、学術界からのリサーチの依頼すらも断ってきた。

1998年に創業されたテンセントは、20年間のうちに中国初のデジタル革命の旗手となった。一方でテンセントは、自社の歴史に無頓着な企業だ。同社の歴史に関する資料も、保管されることは少なかった。本書では、そんなテンセントの発展の軌跡を追っていく。

物静かな創業者、馬化騰

「シャイで物静かな馬化騰がよくぞ企業家になったものだ」。馬の中学・高校や大学の同級生、教師は、みな口を揃えてこのように述べる。馬本人ですら、自分がこのような大企業を経営するとは、予想していなかっただろう。

馬とその創業パートナーである張志東(ジャン・ジードン)はかつて、3年目のテンセント社の従業員数を18名と計画していた。そこから企業規模が大きくなるにつれ、馬化騰は何度も会社の売却を検討したが、ついに引き取り手が現れることはなかった。

いまやテンセントの時価総額は世界第8位(2019年6月時点)。同社が開発したインスタントメッセージサービス、ウィーチャットのユーザー数は、11億人に達している。またテンセントは、2004年に中国のインターネット企業として2番目に香港証券取引所に上場した。

深圳大学のハッカー

馬化騰が大学を受験したのは1989年のことだ。この年、中国ではある政治的事件が発生し、ほとんどの大学生の親は、子供が地元を離れることを望まなかった。馬は大学入学のための全国統一試験で、北京の清華大学や上海の復旦大学にも入れる点数を獲得した。だが、他の学生同様、地元の深圳大学に入学した。

電子工学科のコンピュータ専攻を選んだ馬は、C言語の勉強とGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)作成に力を入れた。共同創業者の張らも馬の同級生であった。彼らはよくウイルスプログラムを書き、大学のコンピュータ室のマシンをフリーズさせた。

インターネットに加えられた「中国式改善」

中国のインターネット時代の始まり
AlexLMX/gettyimages

1990年代半ばから2000年のインターネットバブル崩壊に至るまで、中国のインターネット企業は全てアメリカの模倣であった。ニュースポータル、メール、検索サービス、さらにはインスタント・メッセージング・ツールも含めて、一つも例外はない。そもそもアメリカと中国とでは、商業的価値観が異なる。もしアメリカ人が世界をどう変えるかを常に考えているとしたら、中国人が考えているのは、今変わりつつある世界にいかに適応するかだ。

馬化騰が育った深圳は、中国で3番目にインターネット接続サービスを実施した都市である。その中で馬は、全国で最も早くインターネットを使い始めた数百人の一人であった。インターネット黎明期の中国において、馬は掲示板サイト「馬站(マージャン)」の管理人として名を馳せた。電話設置の初期費用が非常に高額だった時代に、馬は家に電話回線を4本引き、パソコンを8台置いた。リアルな生活では社交的ではない彼は、バーチャルな世界では非常にアクティブだったのだ。

テンセント創業時の世界

テンセントが誕生した頃、インターネットの世界ではどのようなことが起きていたのか。マイクロソフトがWindows98を発表した1998年、ネットスケープとマイクロソフトのブラウザ争いが白熱化。アップルがミニマルなコンピュータiMacを発売したのもこの時期だ。

同年に全米で最も絶賛されたインターネットの英雄は、ヤフーの創業者である米国籍の華人青年ジェリー・ヤンだった。ヤンはタイム誌やビジネスウィーク誌の表紙を飾った。ヤンの奇跡に触発された中国のインターネット開拓者たちは、成長の道筋を探り当てようとしていた。まずヤフーの中国版クローンを作ったチームが、「捜狐(ソーフー)」という企業を立ち上げた。つづいて、世界最大の中国語サイトをめざす新浪網(シンランワン)が誕生。ネットイースも、電子メールシステムの販売からポータルサイトの運営へと舵を切った。これらは三巨頭となり、中国のインターネットはポータル時代を迎えた。

マイクロイノベーションを重ねるテンセント

テンセントは長い間、有望な企業とは見なされてこなかった。その大きな理由は彼らが模倣したものにあった。すなわち、イスラエル人が開発し、後にアメリカ・オンライン社(AOL)に買収されたICQ社が、一度も黒字を実現できなかったことが影響していたのだ。

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