17スタートアップ

創業者のことばから読み解く起業成功の秘訣
未読
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創業者のことばから読み解く起業成功の秘訣
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17スタートアップ
出版社
早稲田大学出版部

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出版日
2019年09月05日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

日本には今、スタートアップが必要だ。日本の経済成長は失速している。世界における日本の名目GDPシェアは下がる一方だ。日本がかつての勢いを取り戻す、あるいはせめて失速を緩めるためには、新規事業の立ち上げ、つまりイノベーションしかない。ところが日本の大企業では旧来の組織体制が影響してイノベーションが起きにくい。そこで注目されるのがスタートアップだ。イノベーションを担うスタートアップが日本経済復活の鍵であり、その成功の秘訣とは何かということを、本書は探究する。

本書はタイトルの通り、17のスタートアップ創業者の講演を中心として構成されている。成功談、失敗談、さらには講演の質疑応答までまとめられており、読み応えがある。起業は十人十色だ。まして新しい価値を創造するところから始めるスタートアップでは、前例のない道を歩むのが普通だ。しかし、その成功・失敗の中にもある一定のルールが存在する。本書はビジネスのステージごとの成功要件を「ヒト」「モノ」「カネ」「ジョウホウ」の4つに注目して整理する。ゼロからの起業の他に、企業内起業の例や、M&A、IPOに成功した例など、様々なスタートアップが紹介されており、参考になる。

これ一冊を読むだけで、起業ということをかなり立体的にイメージできるようになるだろう。スタートアップに挑戦しようという人たちの背中を押す本である。

ライター画像
池田明季哉

著者

中村 信男(なかむら のぶお)
早稲田大学商学学術院教授
畠山 和也(はたけやま かずや)
本気ファクトリー株式会社代表取締役

本書の要点

  • 要点
    1
    シード・アーリーステージは資金ショートが大きな問題になる。資金がつきる前にPMFを達成しなければならず、時間との戦いになる。
  • 要点
    2
    ミドル・レイターステージは人材の問題が大きい。事業が拡大するにつれ、社長ひとりでは管理しきれなくなる。必要な人材・組織・文化を明確にしなければならない。
  • 要点
    3
    IPO後は安定した成長を求められ、責任が増す。必要な人材も変化する。近年は資本業務提携としてのM&Aも増えはじめている。

要約

日本経済におけるスタートアップの役割

スタートアップの成功条件とは

人口が減少する日本で経済規模を維持・拡大するには、イノベーティブなプロダクトやサービスが必要になる。こうしたイノベーションを行なうのがスタートアップの役割だ。

スタートアップとは、起業後数年で上場するような「早く成長することを意図して作られた会社」である。フリーランスや飲食業のような「スモールビジネス」とは区別される。

一般に経営の4要素は「ヒト」「モノ」「カネ」「ジョウホウ」と言われる。

いずれの要素も基本的には大企業のほうが豊富に所有しているが、それでも成功するスタートアップは存在する。スタートアップの成功と失敗を分けるものは何か、ステージごとに分析してゆこう。

【必読ポイント!】初期のスタートアップ

事例:株式会社ビットキー
mikkelwilliam/gettyimages

この要約では、スタートアップ創業者の講演をいくつかとりあげ、「事例」として紹介する。

ビットキーは、2018年8月に創業したばかりの企業だ。まだシードステージというタイミングでありながら、総額3.4億の資金調達も実施している。

スマートフォンで鍵の開閉などをできるようにする仕組みをスマートロックという。ビットキーでは、そのスマートロックを低価格で提供するとともに、「bitkey platform」というプラットフォームを通じて、さらに便利に活用できるようにしている。「bitkey platform」は、スマートロックを解錠できる権利である「鍵」を、バーチャル上で受け渡せるようにする。すると、たとえばAirbnbを利用して宿泊する場合、家主と宿泊者がリアルに会う必要がなくなる。このように、シェアリングエコノミーの発展に伴って生じる、人と人との時空間の一致という課題を解決することができるし、家主が不在の間に行うハウスクリーニングなどの「宅内サービス」の拡大も期待できる。

ただ、この事業は「人・カネ・技術」のリソースを大量に必要とする。こんな難易度の高いことを最初からやろうとするスタートアップは世界的にもほとんどない。それでもビットキーが資金調達をなしえたのは、エンジェル投資家たちが事業可能性や革新的技術への理解をしてくれたからだ、と代表取締役CEOの江尻氏は言う。

何も持たないスタートアップが投資家からの信頼を得るために必要なのは、アウトプットと、人だ。メンバーやチームの大切さもさることながら、最終的なアウトプットの形を早いうちから見せれば、事業の面白さ、新規性、計画の緻密さを伝えることができる。ビットキーの創業は2018年8月だったというが、10月には既にハードウェアの試作機を手にデモを行っていた。

シード・アーリーステージの成功の秘訣
mikkelwilliam/gettyimages

スタートアップが成長する上で最も重要なのが「PMF(プロダクトマーケットフィット)」の達成だ。これは「カスタマーの課題を解決し、満足させるプロダクトを提供し、それが適切な市場に提供されている状態」だ。

一般にシード・アーリーステージはPMFの達成を目指して仮説・検証を繰り返している段階である。この段階のヒト、すなわち人材の採用・離職問題は多い。自社の「あるべき姿」を模索している段階では、中心メンバーであっても認識や意見の不一致が発生することが多いのだ。中心メンバーの退職は珍しくないが、適切な人材を採用するための機会として必要だと考えることもできる。

カネの面では、

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要約公開日 2020.01.22
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