アフガニスタンの診療所から

未 読
アフガニスタンの診療所から
ジャンル
著者
中村哲
出版社
定価
740円 (税抜)
出版日
2005年02月10日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.0
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アフガニスタンの診療所から
アフガニスタンの診療所から
著者
中村哲
未 読
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定価
740円 (税抜)
出版日
2005年02月10日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
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レビュー

中村哲医師が銃弾に倒れた――2019年12月、悲報が日本中を駆けめぐった。彼は、35年間にわたってパキスタンとアフガニスタンで医療活動を行い、2019年12月4日、アフガニスタンで銃撃されて命を落とした。

本書は、著者の現地での活動や現地の人々との関わりを通して、日本の国際化の問題点にも言及している。著者と支援団体「ペシャワール会」は、従来の欧米の海外協力活動とは一線を画し、欧米の医療を現地に持ち込むのではなく、あくまで現地の人材を育成し、地元の医療の伝統を守って活動を続けた。そこには、日本からはうかがい知れない、多大なる苦労があったようだ。

欧米諸国は、国際的な活動を進めるにあたって、現地の文化や伝統は脇に置き、欧米の方法を他国に持ち込むことをよしとしている。それは日本の海外活動も例外ではない。著者のアフガニスタンでの活動は、日本の排他的な社会との戦いでもあった。

本書は、著者のアフガニスタンでの活動について記されているが、著者が直面した問題は、近代思想と近代文明に依存して生きる私たち自身の問題でもある。不安定な状態が続く世界情勢を前に、今、私たちは国際社会に生きる一人の日本人として、何を考え、何を問題視し、これからどうしていくべきか――本書はさまざまな問いを投げかけてくれた。

池田明季哉

著者

中村哲(なかむら てつ)
1946年福岡県生まれ。九州大学医学部卒。医師。ペシャワール会現地代表、PMS(平和医療団・日本)総院長。84年ペシャワールに赴任。ハンセン病を中心とした貧民層の診療に携わる。86年からはアフガン東部山岳地帯に三つの診療所を設立。2000年以降は、アフガニスタンの大旱魃対策のための水源確保事業を実践。2019年灌漑面積約1万6500ha。年間診療数約8万人(2006年度)。著書に、『医は国境を越えて』『医者、用水路を拓く』(以上、石風社)ほか。19年12月4日アフガニスタン・ジャララバードで凶弾に斃れる。享年73歳。

本書の要点

  • 要点
    1
    ハンセン病は、パキスタン全土で数万の患者を抱えながらも、専従医師はわずか5名で、北西辺境州には皆無だった。そのような状況を見捨てておくわけにもいかず、著者は、ハンセン病治療に従事することを決めた。
  • 要点
    2
    8年間におよぶソ連軍介入によって、もともと貧しかったアフガニスタンの国土は荒廃し、人口は半減して生産力は壊滅的な打撃を受けた。
  • 要点
    3
    著者らは、カラシャイ村に診療所を設置した。不安定な情勢や物資の確保など、問題は山積していたが、私心のない医療活動によって住民たちの信頼を得た。

要約

カイバル峠にて

帰郷難民の群れ
Gabriel-m/gettyimages

1992年6月、著者はパキスタンのカイバル峠をこえてアフガニスタンに入国しようとしていた。JAMS(日本―アフガン医療サービス=ペシャワール会)による「アフガニスタン復興のための農村医療計画」の進捗を確認するためだ。

1979年12月のカイバル峠の閉鎖以来、パキスタンとアフガニスタンの間の国境は鉄壁のように思われていた。だが、あっけないほどスムーズに国境を越えることができた。

閉鎖が解除されると、怒濤のような難民帰還がはじまった。酷暑のカイバル峠には「帰郷難民」の群れができており、多い日には1万人にものぼるほどであった。

皮肉なことに、この大移動は、国連や欧米難民援助団体の「帰還救援活動」が停止した直後に生じた。外部の者が手を出せば出すほど「難民帰還」が困難となり、ひきあげざるをえなかったからである。一方、著者が所属するJAMSは、このような事態を予測し、数カ月前からアフガニスタン内部に診療所を設置して新たな仕事に備えていた。

ヒンズークッシュの白い峰

1978年6月、著者は山岳会の遠征隊に参加して、はじめてヒンズークッシュの山々を眺望した。巨大な白峰が果てしなく連なる、すばらしい景色だ。

しかし、診療活動をとおして村人たちの生活が身近になるにつれ、気が重くなった。連邦政府の観光省からは住民の診療拒否をしないように申し渡されていたが、とてもまともな診療ができる状態にはない。薬品は隊員たちのためにとっておかなければならず、処方箋をわたしても現地で手に入るとは限らない。職業人として、この出来事は深い傷となって残った。

1979年にソ連軍による侵攻がはじまるまで、著者は繰り返しアフガニスタンを訪れた。そして、農村医療のために再びアフガニスタンを訪れ、「帰郷難民」の群れとともにカイバル峠を越えるのは、その13年後のことだった。

ハンセン病治療の理想と現実

ハンセン病という病

ペシャワールでの活動は「ハンセン病根絶計画」への参加からはじまった。現地にも、内科や外科の医師はいる。しかしハンセン病は、パキスタン全土で数万の患者を抱えながらも、専従医師は全国にわずか5名しかおらず、北西辺境州には皆無だった。数名のスタッフたちが悪戦苦闘している状況を見捨てておくわけにもいかず、赴任後の前半はハンセン病の仕事を中心に展開することになった。

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