マーガレット・サッチャー
政治を変えた「鉄の女」

未 読
マーガレット・サッチャー
ジャンル
著者
冨田浩司
出版社
定価
1,540円(税込)
出版日
2018年09月25日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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マーガレット・サッチャー
政治を変えた「鉄の女」
著者
冨田浩司
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定価
1,540円(税込)
出版日
2018年09月25日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
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おすすめポイント

練達の外交官の手によるマーガレット・サッチャーの伝記である。イギリスの現代史を語る時に、サッチャーの時代は避けて通れない。もっといえば、サッチャーの存在が大きすぎて、前後の歴代首相の印象がかすむほどである。本書を読むとサッチャーの残したものは、善いものも悪いものも含めて、今も現代の英国に生き続けていることがわかる。

著者は、サッチャリズムを経済の次元ばかりでとらえると認識を誤りかねないと指摘する。また、サッチャーの出自や精神性、生き方までも見てみないとサッチャリズムの全体像はわからないという視点は鋭い。多角的かつ広範囲に人物像を解剖してみて初めて、その業績について評価することができるはずだという信念が、本書の随所から感じられる。

そして、サッチャーの生き方をたどっていくことは、当時のイギリス社会をまざまざと描き出すこととほぼ同義だ。序盤には、下層中流出身のサッチャーが様々な苦労をしてキャリアの階段を上っていく様子が描かれる。サッチャーの政治思想の核にあったのは宗教的バックグラウンドであったという部分は、これまであまり語られてこなかったところであるだけに印象深い。首相就任後、苦しい時期を経た後に迎えたフォークランド紛争の開戦決断に至るまでの経過描写は圧巻だ。指導者として成熟し、その後、不本意ながら落日に向かう過程も細密で引き込まれる。読む者の胸に深く迫る伝記である。人文社会科学部門の優れた著作に贈られる、山本七平賞受賞作。

ライター画像
毬谷実宏

著者

冨田浩司(とみた こうじ)
1957年、兵庫県生まれ。東京大学法学部卒。1981年に外務省に入省し、総合外交政策局総務課長、在英国日本大使館公使、在米国日本大使館次席公使、北米局長、在イスラエル日本大使を経て、2018年8月からG20サミット担当大使。英国には、研修留学(オックスフォード大学)と2回の大使館勤務で、計7年間滞在。著書に『危機の指導者 チャーチル』(新潮選書)。

本書の要点

  • 要点
    1
    敬虔なメソジストの家庭で育ったサッチャーは、当時のイギリスが直面していた社会・経済の危機を、道徳的な問題ととらえていた。
  • 要点
    2
    イギリス初の女性首相となったサッチャーと、国の象徴であるエリザベス女王とは微妙な緊張関係にあった。
  • 要点
    3
    フォークランド戦争勃発時、サッチャーは強力な指導力を発揮することで、「戦う女王(ウォリアー・クイーン)」の称号を与えられ、長期政権の礎を固めた。その後、炭鉱ストライキにおける勝利、金融市場の「ビッグバン」改革などを通して、サッチャー政権は社会を大きく変革していく。

要約

【必読ポイント】サッチャーと信仰

宗教が生活の中心だった幼少期
baona/gettyimages

マーガレット・サッチャーは、とりわけ強い信仰心を標榜し、公の場で政治と宗教の関係を積極的に語った指導者だった。彼女にとって信仰は、単に自らの内面のことではなく、彼女が打ち出した国家改革策の倫理的な枠組みをなすものでもあった。

地方都市グランサムで下層中流家庭に生まれたサッチャーの幼少期は、敬虔なメソジストの父親の影響で、宗教を中心に生活が回っていた。日曜日の礼拝や、賛美歌のオルガン演奏、夕食会での宗教に関する議論など、日常には宗教が色濃く存在していた。しかし、オックスフォード大学に進学するとともに宗教は生活の中心的地位から後退し、政界進出後保守党党首に選出されるまでは、サッチャーが宗教について語ることも少なくなっていた。が、その後は政治と宗教の関係を明確な形で訴えるようになる。

1978年の「私は信ずる」という著名な演説は、個人の経済的自由を最大化し、国家の介入を最小化するというサッチャリズムのエッセンスを、宗教にからめて論じている。

サッチャリズムの核

サッチャーは、当時のイギリスの行き詰まりの根底にあるのは、社会主義思想が蔓延した結果、人々が国家からの扶助への依存を深めたことだ、と見ていた。したがって、こうした精神構造を改めない限り、経済・社会の再生は望めないと考えていた。

さらに、労働運動がキリスト教と深く関わりを持ちながら発展してきたという特殊な歴史的経緯もあり、戦後イギリスでは保守主義より社会主義の方がキリスト教的な価値を体現しているという知的風潮があった。こうした中、メソジズムで育ったサッチャーが、保守主義が宗教的な見地からも道徳的な高みを取り戻す必要性を感じたのは自然な流れだった。

そういうわけで、サッチャリズムを経済政策の次元でとらえることは誤りであるといえる。サッチャーの目には、当時のイギリスが直面していた危機は、政策論だけで片付けられない道徳的な問題と映っていた。そして、その解決のためには道徳的な処方箋が求められていると考えていたのだ。

政治指導者が女であること

女性からの反発も

サッチャーが、イギリス初の女性首相として政治における「ガラスの天井」を打ち破ったことは、国際社会に大きなインパクトを与えた。サッチャー以降、先進国の政治トップに女性が就くことは珍しくなくなり、女性の政界進出も加速した。

しかし、サッチャー自身の女性への態度には複雑なものがあった。結婚し、子どもを持つサッチャーにとって、女性が職業と家庭を両立させることに対する偏見が、男性のみならず女性自身にも根強いことに嘆いていた。加えて女性的な美徳を欠いた「ギスギスした」キャリア・ウーマンに対する敵意もあったようだ。進歩的な女性からみると、サッチャーの女性に対する態度が鼻持ちならないと映ったのは当然で、こうした女性からは辛辣な批判も多く寄せられた。

夫の支え、子供たちとの溝

10歳年上の男性、デニスと結婚したサッチャーだが、

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