本書の要点

  • 仕事やコミュニケーションがうまくいかないのは、相手やものごとに対するアプローチに問題がある。

  • 具体的で鮮明な脳内イメージがないと、合理的に動けないし、人を動かすこともできない。イメージの解像度を上げる工夫をすれば、ものごとはうまく進みやすい。

  • 「向いている、向いていない」の判断基準は、「褒められる」ということに左右されている。もし、じぶんが褒められていないと感じたら、ほかの人を褒めてみよう。その言葉は、ブーメランとなって自分に戻ってくる。

1 / 4

「うまくいかない」のは、あなたのせいじゃない

原因はアプローチの方法にある

いまの職場や学校がじぶんに向いていない気がする。じぶんとは違う世代と話が合わず、浮いた感じがする。SNSで発信しても共感してもらえない。こうした「うまくいかない」壁を前にして、原因は自分の「努力が足りないからだ」と考えてはいないだろうか。じつはそうではない。単に相手やものごとに対するアプローチに問題があるだけなのだ。コミュニケーションを通して、その問題を解決していくのが、「うまくやる」方法である。これは専門的には心理学や認知科学の領域でもあり、人の間に生まれる関係性をデザインしていく「コミュニケーションデザイン」という手法の1つだ。

コミュニケーションデザインがもたらす効果

VictoriaBar/gettyimages

コミュニケーションがデザインできるようになるには、周りの人を観察し、じぶん自身を理解し、世の中をいろいろな角度から見る目をもつことが大切である。するとどんな効果が期待できるのかというと、まず、人を見る目、じぶんを見る目が変わる。故に、世界の見方、考え方、コミュニケーションの作法が変わる。故に、空気を読むだけではなく、空気をつくれるようになる。故に、うまくやれるようになる。本書で展開する「うまくやる」授業によって、思考の拡張とコミュニケーションのアップデートができる。それにより、性別や年代、価値観の隔たりを超え、よりオープンマインドで、毎日が楽しめるようになる。

2 / 4

じぶん自身を、うまく掘り下げる

脳内の鮮明なイメージが人を動かす

「いい鞄が欲しい」と考えたとき、その鞄のイメージが大まかすぎてはいけない。手に入れる確率を高めるには、「いい鞄」の情報を足していくことが求められる。価格が高いのか。機能がすばらしいのか。デザインが美しいのか。どこのブランドなのか。どこで売っているのか。このように、鞄のイメージを鮮明化していき、解像度を高めていくのだ。デジタルカメラで撮影した写真と同様に、解像度が低いとイメージがボヤけてしまう。逆に、解像度が高いと、細かいところまで鮮明に見えて、リアリティーが増してくる。こうして欲しい鞄のイメージがはっきりとしてきたら、後はそれを手に入れるだけだ。人は具体的で鮮明な脳内イメージが先行しないと、合理的に動けない。ましてやじぶん以外の人を動かすこともできない。解像度を上げる工夫をして、じぶんが想像できる良いイメージを常に頭の中に用意しよう。そうすれば、ものごとはうまくやれる方向へと進んでいく。

じぶんのキャラクターを理解する

ArtistGNDphotography/gettyimages

いろいろな視点をもつことは、ものごとが「うまくいく」ための大事なポイントといえる。視点を増やすことは、カメラを増やすことと考えるといいだろう。カメラの数が増えれば、より客観的な解釈ができるようになる。相手からじぶんはどう見えるのか、鏡に映った自分をイメージするとよい。うまくイメージができないのであれば、友達に頼んで、じぶんが気づかないように、自身の様子をスマホで撮影してもらってもいい。そして、じぶんがどのようにビデオに映っているかを確認してみるのだ。著者は、ビデオに映るじぶんの姿をはじめて見たとき、その独特な動きや笑い方に驚愕したという。しかし、その違和感をそのまま受け入れることで、はじめて人の目から見たじぶんのキャラクターを、主観から分離してとらえられるようになる。ものごとは、いったんは感情に支配されず、フラットに捉えてみるのが望ましい。そのためには、じぶんはもちろん、相手の思考や癖、いろいろな情報を解像度高く読み取ってから、想像することが大切だ。このようにして固定観念をもたずに、相手との関係性を認識できるようになると、コミュニケーションは驚くほど上達するはずだ。

「向き・不向き」は置かれた環境がつくる

仕事などが「じぶんに向いている」と考えるのは、新しいことにチャレンジして、短期間で予想していた結果が出たときや、その分野の先人に評価されたなどの成功体験があったときではないだろうか。逆に、失敗した、思うような結果が出なかった、叱られたなどの経験を伴うと、人はその仕事が「向いていない」という判断を自ら下す。それらの判断基準は大きく次の3つである。(1)周りの人の判断(2)周りの人との比較による自己判断(3)周りの予測との比較シンプルに考えると、「向いている、向いていない」は、「褒められている、褒められていない」ということと同じだということだ。(1)は周りから(人から)褒められているか、(2)(3)はじぶん自身を褒めているかということになる。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2270/4156文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2020.02.15
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

わかる社会人基礎力
わかる社会人基礎力
島田恭子(編著)
うしろめたさの人類学
うしろめたさの人類学
松村圭一郎
ビジネスを変える100のブルーオーシャン
ビジネスを変える100のブルーオーシャン
日経BP総研(編著)
世界からコーヒーがなくなるまえに
世界からコーヒーがなくなるまえに
ペトリ・レッパネンラリ・サロマーセルボ貴子(訳)
ピック・スリー
ピック・スリー
ランディ・ザッカーバーグ三輪美矢子(訳)
僕たちは、地味な起業で食っていく。
僕たちは、地味な起業で食っていく。
田中祐一
2025年、人は「買い物」をしなくなる
2025年、人は「買い物」をしなくなる
望月智之
記録の力
記録の力
メンタリストDaiGo

同じカテゴリーの要約

壁打ちは最強の思考術である
壁打ちは最強の思考術である
伊藤羊一
しんどい世の中でどうすれば幸せになれますか?
しんどい世の中でどうすれば幸せになれますか?
橘玲樺山美夏
とりあえずやってみる技術
とりあえずやってみる技術
堀田秀吾
無料
肩書がなくても選ばれる人になる
肩書がなくても選ばれる人になる
有川真由美
子どもが本当に思っていること
子どもが本当に思っていること
精神科医さわ
忘我思考
忘我思考
伊藤東凌
ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科
ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科
堀田秀吾
ハーバードの心理学講義
ハーバードの心理学講義
ブライアン・R・リトル児島修(訳)
なぜあの人は同じミスを何度もするのか
なぜあの人は同じミスを何度もするのか
榎本博明
1つの習慣
1つの習慣
横山直宏