本書の要点

  • ブルーオーシャンは、5つの構造変化をとらえたイノベーションの先にある。その5つとは、「生存からQoL(クオリティ・オブ・ライフ)へ」「有形資産から無形資産へ」「クローズからオープンへ」「資源無限から有限へ」「テクノロジー集中から偏在へ」である。

  • いまブルーオーシャンが広がっている分野は、ヘルスケア、個人情報・ライフログの活用、働き方改革、シェアリング・サービス、ESG・SDGsだ。

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イノベーションのために

5つの構造変化

ビジネスを変える100のブルーオーシャン(競争相手のいない未開拓市場)は、5つの構造変化をとらえたイノベーションの先にある。その5つとは、「生存からQoL(クオリティ・オブ・ライフ)へ」「有形資産から無形資産へ」「クローズからオープンへ」「資源無限から有限へ」「テクノロジー集中から偏在へ」という変化である。それらの絡み合う変化を導き手に、顧客に新たな体験を提供することがイノベーションだ。まず、ヘルスケア分野では、さまざまな技術革新が起きており、ビジネスチャンスが広がっている。個人情報、ライフログの活用や働き方改革、離れた場所を結ぶコミュニケーションサービスなどの無形資産は熱い分野だ。また、シェアリングやオープンソース、双方向システムという形で、オープン性が高まりつつある。さらには、環境に配慮したESG(環境、ソーシャル、ガバナンス)、SDGsの考え方は、重要度を増す一方だ。どの分野でもベースにはテクノロジーがある。そうしたポイントを踏まえながら、本書は一つ一つブルーオーシャンを紹介している。

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人生の質を上げる

健康をデータで管理し、予防につなげる

ra2studio/gettyimages

最初に検討するのは、人の健康や生活にかかわるQoLの分野だ。多くの人に直接的に関係するため、現在でも多くのビジネスが動いている。企業も、単なる社会貢献にとどまらず、従業員を含めた人びとに幸福を感じてもらうための事業設計、経営戦略を考える必要に迫られている。では健康を管理するサービス、ビジネスではどのような動きが起きているのか。まず、メタボリックシンドロームやフレイルといった言葉に代表されるように、病気になる前から予防しようとする「未病」の考え方が進んでいる。具体的には、質のよい睡眠をとる取り組みを指すスリープマネジメントや、従業員の健康状態を把握するオフィス・ヘルスセンシング、寿命予測といった新市場が開拓されている。オフィス・ヘルスセンシングの市場規模は2025年で1兆1200億円が見込まれている。また、健康経営では、たびたび病欠をする「アブセンティズム」や、健康問題で効率の下がった状態で勤務する「プレゼンティズム」への対応を重視する。従業員のバイタルデータについて、生体情報から活動情報、環境情報などをセンシングできると、それが健康経営の推進に役立つ。こうしたバイタルデータは、医療適正化コンシェルジュのサービスにも活用できる。医療適正化コンシェルジュとは、過去の健康、医療、介護の情報をもとにした、個人向けの助言を意味する。個別のデータによって、特定の病気にかかる可能性を予測し、予防を促すことができれば、医療費の削減にも効果があるだろう。もちろん、繊細なプライバシーデータを扱うため、セキュリティの充実化や利用者との合意形成プロセスの精緻化には、細心の注意が必要といえよう。

生活を豊かにする

NatalyaBurova/gettyimages

生活をより豊かにすることをめざす分野も、ブルーオーシャンの宝庫である。たとえば、ライブエンターテインメントにおけるIR(統合型リゾート)。IRは、外国人観光客を満足させ、言葉の壁を超えて日本の文化を知ってもらうためのもの、ナイトタイムエコノミーの拡充としても考えられる。また、地方や田舎への期待も熱い。「アグリツーリズム」と呼ばれるものがそれだ。アグリツーリズムとは、都市部に住む人が、地方の農村・漁村へ旅行し、田植えなどの現場を体験することを指す。その背景にあるのは、地方創生や自然と触れることによる癒しへのニーズだ。すでに、体験型授業、「地域みらい留学」といった形でスタートしているものもある。今後はITを応用したVR(仮想現実)での体験も考えられるだろう。くわえて、人生の終わり、介護や終活をサポートする新しいサービスも登場している。たとえば、IT、AI(人工知能)を活用した完全介護ロボットや、葬儀・墓・資産などの準備と運用を、これまでにない視点で捉えたビジネスなどだ。

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人のデジタル化、超人化

個人情報をどう使うか

次に、人そのもののデジタル情報をどう活かしていくかというテーマに目を向けていく。今後は、個人が自分の情報を主体的に貸し借りできるようにしたり、人間の機能自体を強化したりする方向にも進み得る。人間とテクノロジーがどこまで一体化していくか。その見極めも大事になるだろう。

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要約公開日 2020.02.18
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