「買う」という行為は、面倒なものだ。電車や車、徒歩などで店に行かなくてはいけないし、出かけるためには身支度も必要だ。店に着いたら売り場を探し、品質や機能、値段をチェックして他の商品と比較検討して、自分が求めているものを選ぶ。買うものが決まったらレジの列に並び、支払わなければならない。さらには、買った商品を家に持ち帰る手間もある。こう考えると、モノを買うというプロセスは、面倒なことの積み重ねだ。
こうした買い物のわずらわしさを解消してくれたのが、ネットショッピングである。ネットショッピングは、買い物の中で最も面倒な「店に行く」というプロセスを省略してくれた。それだけでなく、決済が簡略化されている、値段や機能の比較がしやすいなど、革新的な要素は多い。EC市場規模は右肩上がりで、今後もその流れが進んでいくに違いない。
実際、アメリカでは、大型ショッピングセンターが次々と姿を消している。「アメリカの今を見れば日本の10年後がわかる」と言われるが、日本でも実店舗は消えていく一方だろう。
といっても、すべての店舗が消えることはありえない。時代遅れになりやすい店舗の客足が減る一方で、新たな役割を見つけた店舗は生き延びていくだろう。時代遅れになり消えていく可能性が高いと考えられるのは、都市部の百貨店や地方の大型スーパー、ショッピングモール、大型専門店などだ。
この結論に違和感を覚える向きもあるだろう。週末のショッピングモールは、駐車場に車を停めるのも大変なほど賑わっていることもあるからだ。だが実は、賑わっているのは一部の店舗だけだ。業界全体を見渡すと、すでに多くの施設が苦戦を強いられている。
大型商業施設が支持されてきたのは「品揃えのよさ」ゆえであった。だが、Amazonや楽天などといったECサイトであらかたのものを入手できるようになった今、「品揃えのよさ」はメリットになり得ないのだ。
消費者は、たくさんの商品の中からモノを選ぶことを面倒だと感じつつある。といっても最終的にはどれかを選ばなくてはいけないので、何らかの判断基準が必要だ。
過去には、その判断基準として、テレビCMや新聞広告などといったマス広告が役立っていた。しかし昨今、その基準が揺らぎつつある。特に若い人は、「AI」と「口コミ」に信頼を寄せるようになっているのだ。
ネットで買い物をするときに、「あなたにおすすめの商品」が表示されることがある。これはAIが、検索履歴や購買履歴などを参照して、数多の商品の中から、おすすめの商品を提示しているわけだ。消費者はこのレコメンドのおかげで、膨大なラインナップの中から商品を選ぶ必要がなく、機械が勝手に選んできたものの「可否を判断する」だけでよくなっている。
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