D2C

「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略
未読
D2C
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「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略
未読
D2C
出版社
NewsPicksパブリッシング

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定価
2,200円(税込)
出版日
2020年01月08日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

デジタルの波が小売の世界を飲み込み、いま大きなパラダイムシフトが起きていることにお気づきだろうか。私たちのコミュニケーションを根底から様変わりさせたデジタル革新は、顧客とブランドの関係性を変質させ、消費者の購買行動や動機を一変させた。この変化に対応しそこねた者は、業界最大手といえども静かに淘汰されている。

私たちの日常生活にSNSが浸透する以前は、メーカー側から一方的に発信される情報しか購入を決定づける材料がなかった。それが現代ではどうだろう。購入前にSNSなどをチェックし、他の消費者の使用体験を参考にして検討することができるようになった。また、プロダクトの品質にはほとんど差がなくなり、購入を決定づけるものはもはや機能性ではない。それはブランドの誕生秘話だったり、プロダクトを使うことで自分のライフスタイルが良くなることへの期待だったりしないだろうか。

こうした消費者の変化に反応し「テック×小売」という新業態を打ち立てたのがD2Cブランドだ。メーカーでありながら社内にデータサイエンティストを抱え、顧客データの分析を経営に活かす彼らは「テック企業」と呼ぶにふさわしい。その事業運営は、デジタル社会における顧客との関係性づくりやブランディングのあり方のお手本となるはずだ。

本書は小売業界の指南書となるだけでなく、今後の消費の主役となるミレニアル世代への理解を深め、彼らとのリレーションの築き方を知る良きガイドブックになるという点で必読の書に間違いない。

ライター画像
金井美穂

著者

佐々木康裕(ささき やすひろ)
Takramディレクター/ビジネスデザイナー

クリエイティヴとビジネスを越境するビジネスデザイナー。D2C含むリテール、家電、自動車、食品、医療など幅広い業界でコンサルティングプロジェクトを手がける。デザイン思考のみならず、認知心理学や、システム思考を組み合わせた領域横断的なアプローチを展開し、エクスペリエンス起点のクリエイティヴ戦略、事業コンセプト立案を得意とする。ヴェンチャーキャピタルMiraiseの投資家メンター、グロービス経営大学院の客員講師(デザイン経営)も務める。2019年3月、ビジネス×カルチャーのメディア「Lobsterr」をローンチ。

本書の要点

  • 要点
    1
    デジタルと小売を融合させたD2Cは、プロダクトよりも顧客データ分析を重視する。いわば、メーカーの皮を被ったテック企業である。
  • 要点
    2
    D2Cは、プロダクトではなく、ブランドの世界観を販売している。現代の消費者は「意味レベルの価値」を重視しており、差別化された世界観は企業の競争力の源泉となる。
  • 要点
    3
    D2Cは「モノからコト」から「コト付きのモノ」という新たな消費トレンドの流れを作っている。
  • 要点
    4
    D2Cのリアル店舗展開は、売上を重視するものではなく、PRやマーケティング施策の一環として捉えられている。

要約

D2Cブランドという新たな小売の世界

小売業界に起きたパラダイムシフト
Kwanchai_Khammuean/gettyimages

2018年、アメリカの寝具マットレスのチェーンである「Mattress Firm(マットレスファーム)」が倒産した。同社は、1986年に創業した、全米で3,300店舗を展開する業界最大手だった。Mattress Firmを倒産に追い込んだのは、創業わずか4年のD2Cブランド、Casperである。

アメリカの小売業界というのは、「鈍重で古い業界」だった。それはMattress Firmも例外ではない。テクノロジーの活用などはなから頭になく、オンラインでマットレスを購入する人間などいるはずもないと決めつけ、ぬるま湯に浸りきっていた。そうした業界でデジタルを活用し、テクノロジーと小売をかけ合わせた新たな業態を確立したのがCasperだ。

Casperは従来の小売メーカーと異なり、単にプロダクトを販売するだけでなく、雑誌やポッドキャスト番組などのメディア活用にも取り組むことで、ライフスタイルブランドとしての座を得た。業界の競争軸は、もはやマットレスの質だけではなくなったのだ。同様のパラダイムシフトが小売業界全体に広がっている。

小売のあらゆる分野で生まれた新しいプレイヤーは、自社製品を、自社独自のチャネル(ECやリアル店舗)で「直接販売」する。積極的にテクノロジーを活用する、メーカーの皮を被ったテック企業だといってもいい。この新しいプレイヤーの呼び名や表記はさまざまあるが、本書では「D2C」と表現する。

D2Cブランドの特徴

D2Cブランドと伝統的なブランドの最大の違いは、D2Cブランドの社内にはデータサイエンティストがいることだ。社員の10~20%にあたるデータサイエンティストが在籍し、創業当初から、大量のエンジニアやSNSマーケティングのプロを揃える。データ分析やSNSを通じたコミュニケーションを積極的に行い、また、それぞれの施策の結果を細かく分析していく。顧客とのコミュニケーションも、WebサイトやSNSを通じてなされる。

顧客との関係構築は、広告代理店などを介さずに、SNSを通じてダイレクトに行われる。オンラインで顧客データを取得できるので、リアル店舗ではよりパーソナライズされた接客が可能だ。「前回ご購入いただいたジャケットに合わせやすいシャツです」といったコミュニケーションを、店舗をまたいで行える。

企業の成長は非常に速く、指数関数的だ。Casperの場合、創業初年度に100億円、次年度200億円、3年目に400億円を達成した。むしろ急成長しなければ、競合に顧客の認知を奪われてしまい、競争を勝ち抜くことはできない。

D2Cブランドは、単に商品を売るだけの会社ではない。たとえばCasperは「マットレス屋」ではなく、睡眠を通じて新たなライフスタイルを実現する会社だ。Casperが発行している雑誌では、自社のプロダクトを差し置いて、ヨガやウェルネス、睡眠、健康などに関する記事が続く。

消費トレンドの中のD2Cブランド
Nastco/gettyimages

消費トレンドという大きな枠組みでD2Cを見ると、新たな側面が見えてくる。消費者の価値観が「モノ」から「コト=体験」に変化した今、なぜD2Cブランドは「モノ」を売るのだろうか。その動きは、あたかも時代に逆行しているように見える。だがD2Cブランドは、「モノからコト」から「コト付きのモノ」という新たな消費トレンドの流れを作っているのだ。

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