ニューロテクノロジー

最新脳科学が未来のビジネスを生み出す
未読
ニューロテクノロジー
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最新脳科学が未来のビジネスを生み出す
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ニューロテクノロジー
出版社
技術評論社

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出版日
2019年11月09日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
3.0
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おすすめポイント

ヒトの生活や行動は、脳という臓器によって大きく左右される。たとえば私たちが商品を購入する際、商品の情報を目や耳といった感覚器官を通じて認識し、その価値を学習し、ひとつのアイテムを選択する。そこでは複雑な脳の情報処理が行われている。

著者はこうした脳の働きの背景にある計算基盤や情報表現、計算処理を科学的に解き明かす「脳科学」、そしてその技術的応用分野である「ニューロテクノロジー」をビジネスの分野に取り入れることで、マーケティングや事業開発が大きく変化するとみている。本書ではライトな語り口と図解によって、はじめて脳科学という分野に触れる人にもわかりやすく、さまざまな研究事例や技術を紹介している。

脳科学はいまだ発展途上の学問だ。本書に取り上げられる事例はどれも私たちの生活に密着したものだが、脳科学はこれからますます進化を遂げ、私たちの生活により深く関わっていくことになるだろう。2020年代のビジネスにおいて、「ヒトを科学する」方法を理解することは大きな意味を持つ。ニューロテクノロジーを学ぶことは、現状維持を打破し、ビジネスを前進させることにも繋がっていくはずだ。

研究開発に携わる人にはもちろん、マーケティングや事業開発に関わるビジネスパーソンに、ぜひ読んでもらいたい一冊である。

ライター画像
池田明季哉

著者

茨木拓也 (いばらき たくや)
株式会社NTTデータ経営研究所 ニューロイノベーションユニット アソシエイトパートナー。1988年東京都に生まれる。早稲田大学文学部心理学科卒。東京大学大学院 医学系研究科 医科学修士課程(脳神経医学専攻)修了(MMedSc)。同・医学博士課程を中退後、2014年4月にNTTデータ経営研究所に入社。総務省「次世代人工知能社会実装WG」構成員(2017年、第六回)。早稲田大学商学部招聘講師(2018年)。国際会議「脳科学の事業応用」第一回実行委員長(2019年9月)。神経科学を基軸とした新規事業の創生や研究開発の支援に多数従事。分野は製造業を中心に、医療、ヘルスケア、広告、Web、人事、金融と多岐に渡る。趣味は仕事と日本酒。著書に『製品開発のための生体情報の計測手法と活用ノウハウ』(情報機構社、2017年)がある(第一章を担当)。

本書の要点

  • 要点
    1
    脳はヒトの生活を成り立たせるうえで、きわめて重要な臓器だ。消費者がサービスを受ける際も、脳の情報処理を経て選択をしている。ゆえに脳科学をビジネスに応用することには大きな意味がある。
  • 要点
    2
    脳科学のなかでも、脳に関する技術の応用に絞った「ニューロテクノロジー」は、臨床の現場やAIの開発にも応用され、日々発展を遂げている。
  • 要点
    3
    今後ますますニューロテクノロジーを活用した事業は増えていく。実際に事業に取り入れる際に注意しなければならない点はあるが、脳科学は現状のビジネスを大きく変えるポテンシャルを持っている。

要約

いま、なぜ脳が注目されているのか

脳科学とニューロテクノロジー
Vertigo3d/gettyimages

脳は観察するのが難しい臓器でありながら、人の生活を成り立たせるのに欠かせない存在である。脳や神経に関する疾患は、あらゆる世代において健康的な生活を脅かす重大な要因として知られており、ビジネスの分野でも脳科学を売りにした大規模な投資やベンチャーが増えている。なお本書でいう脳科学とは、基盤となる神経科学に加え、行動科学や心理科学、認知科学といったヒトのココロの情報処理を扱う部門、工学やコンピュータサイエンスのように実社会の応用に関わる部門を含む。

脳科学への投資が進む背景には、基礎研究の発展がある。神経学分野の研究がもたらす影響度は、ほかのすべての学問領域を14%上回っていることから、他分野に比べてインパクトの大きい領域といえる。

多くの企業は消費者の購買意欲を上げるため、製品の中身や広告に多大なコストをかけている。消費者が何にどのくらいの価値を感じ、その商品を選ぶかを理解するうえで、脳科学の知識は非常に有用だ。ヒトの心や行動に関する科学的なリテラシーを身につけるために役立つ。

さまざまな脳科学の「知見」「方法論」「技術」を、実社会における研究開発や人材育成、マーケティング、人工知能の設計に応用する。このような領域を、著者は「応用脳科学」と呼んでいる。なかでも注目しているのが、直接脳に関する技術を応用した「ニューロテクノロジー」だ。

人間の「ココロ」を知ろうとする人類の歴史

「ココロ」の問題を扱うにあたって重要となるのは、モノとココロの関係である。この2つの関わりは、古代ギリシャの時代からヒトの興味の対象であった。ココロに関する哲学がひとつの局面を迎えたのは、17世紀あたりから栄えた近代西洋哲学だ。たとえば哲学者デカルトは、ヒトのココロとモノについて考察し、モノとココロは別物だと結論づけた。

だがモノとココロを別物とする近代哲学の考え方は、脳科学の発展によって打ち破られつつある。複雑な「モノ」の世界の情報が、「ココロ」にどのような影響を与えるのかも解き明かされてきており、その知見はビジネス領域でも応用されるようになってきた。

【必読ポイント!】 マーケティングに脳科学を活かす

人がモノを好きになるしくみ

私たちは、昨日まで興味のなかった商品を好きになったり、幼いころには苦いとしか感じなかったビールをいつの間にか好んで飲むようになったりする。

たとえばお酒を好きになる前後のニューロンレベルの神経細胞の変化については、3つほどの仮説が挙げられる。1つ目は酒を見たら手に取る命令を出すニューロンが誕生すること、2つは酒を処理するニューロンと手に取るニューロンの間でシナプスが形成されること、そして3つ目は酒を処理するニューロンと手に取るニューロンの間の信号伝達効率が上がることだ。この3つのうち、伝達効率をよくすることが、記憶の実態を説明するものとしては、最もメジャーと考えられている。

脳はどのように情報を処理するのか
metamorworks/gettyimages

私たちが実際に消費者としてモノを選ぶ際、特に重要なのが商品の価値を見定める脳のプロセスだ。プロセスには3つの種類がある。

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要約公開日 2020.03.01
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