時間とテクノロジー
「因果の物語」から「共時の物語」へ

未 読
時間とテクノロジー
ジャンル
著者
佐々木俊尚
出版社
定価
1,800円 (税抜)
出版日
2019年12月18日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
4.0
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時間とテクノロジー
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「因果の物語」から「共時の物語」へ
著者
佐々木俊尚
未 読
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ジャンル
出版社
定価
1,800円 (税抜)
出版日
2019年12月18日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
4.0
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レビュー

音楽のストリーミング再生も、Netflixなどによる新旧映画の連続視聴も、もはや当然のものとして享受している現代人。そこでは過去の作品なのか最新作なのかといった区別すら、ナンセンスになりつつある。すべてが「今ここ」に揃う時代なのだ。

「過去」や「未来」のあいだに「現在」があるということを、私たちは当然のものとして捉えている。しかし本書を読み進めていくと、そうした時系列の観念ですら、決して自明のものではないということがわかる。

高度に発達してきた情報テクノロジーは、「前があって後がある」「原因があって結果がある」という「因果の物語」から人びとを解放する。知能を持った機械に囲まれて、すべての時間に属するものが目の前に同時に立ち現れるような状況は、SFの話ではない。すぐそこにある現実だ。

著者はこれまでに明かされてきた世界の「法則」や「物語」を逍遥(しょうよう)しながら、社会事象を動かしている仕組みを明らかにしようとする。そこには、目的意識やゴールに縛られる現代人への熱いエールも込められているような気がしてならない。

随所に張り巡らされた論理の伏線を眺めていると、まるで上質のミステリーを読んでいるかのようだ。難解な科学的理論であっても、著者は探偵のように解きほぐしてくれる。著者の手腕に感謝しつつ、気楽に楽しんでいただきたい本である。

石田翼

著者

佐々木俊尚 (ささき としなお)
1961年生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。作家・ジャーナリスト。毎日新聞社などを経て2003年に独立し、テクノロジーから政治、経済、社会、ライフスタイルにいたるまで幅広く取材・執筆している。『仕事するのにオフィスはいらない』『「当事者」の時代』(以上、光文社新書)、『広く弱くつながって生きる』(幻冬舎新書)など著書多数。総務省情報通信白書編集委員。共創コミュニティSUSONO運営。

本書の要点

  • 要点
    1
    現実世界は、複数の原因が重なりあって結果を生んでいる。ひとつの原因がひとつの結果に結びつくような「因果の物語」だけでは、もはや世界を説明することはできない。
  • 要点
    2
    「因果の物語」の代わりに立ち上がってきたのが「確率の物語」「べきの物語」そして「機械の物語」だ。ただし人間はこれらの物語を「自分ごと」だと感じられず、結局は「因果の物語」にとらわれてしまっている。
  • 要点
    3
    私たちは機械や他者、仮想や現実が偏在している時空間に生きている。あらゆるものにつながっているという感覚をもち、善き相互作用を育んでいく「共時の物語」が求められる。

要約

変化する過去

色あせず、改変される過去

過去を記録することは、文明の進展にとって必要なことだった。しかし現代では、過去のもつ意味そのものが変化しようとしている。

まず、過去は色あせなくなった。クラウドの登場により、過去は摩耗せずに蓄積されるようになった。また最新のAIによるフィルタリングを施した画像は、もはや人間の眼の能力を超えたクオリティを持ち、古いものと新しいものを見分けるのは困難だ。

一方で過去は、つねに改変される可能性をはらみ始めた。紙の本は大量にコピーされることで情報自体の改変や消滅を防いでいた。だがクラウドに保存されたデータは、読み込む際に機械を経由する。そのため機械の仕様や規格の多様化によって、情報自体が得られなくなるという状況が生まれた。

飽和する過去
Carole Newman/gettyimages

音楽や動画のストリーミング配信の登場により、単体の作品をモノとして捉える感覚が消滅しつつある。そして水平化された作品群が、ネットフリックスなどのプラットフォームと一体化し、視聴者の好み等に合わせ、垂直に統合される。

このようなプラットフォームでは、作品が改変されても、私たちがそれに気づかない可能性がある。モノとして所有しているわけではないからだ。過去の記録は揺らいでいき、ついには自分の記憶さえも正しいかわからなくなるかもしれない。まさにSF的な世界だ。

そして私たちは、そんな過去に郷愁を感じなくなっていく。たまに目にするからこそ懐かしく感じられていた過去は、いつでも現在進行形で共有できるようになった。過去の文化は消費されつくし、飽和状態になってしまっている。

過去と記憶

過去は押し付けがましくなり、忘れることさえできなくなっている。SNSのプラットフォームが消滅しない限り、そこに書き綴ったことはいつまでも残り続ける。

そもそも人が「忘れる」のは、忘却が高度な思考を可能にするために必要だからだ。人の脳は、さまざまな出来事の中から印象深いものだけを選んで記憶し、その中身も時間が経つにつれて変化していくメカニズムになっている。細かいことを忘れることで、抽象的な思考ができるのだ。

意識と関係が深く、最も高度な記憶として「エピソード記憶」がある。自分を中心とした時間軸において、自分が経験したことだと理解している記憶のことだ。これがあるから、自分のなかで過去から未来へとつながる「物語」を紡げる。またエピソード記憶は、物語によって知識を多くの人に伝えるうえでも役立つ。そして物語は、自分が主人公である情景をイメージさせ、自分が存在しているという「自分ごと化」に結びつく。

これまでの物語とこれからの物語

確率の物語
pxel66/gettyimages

私たちが物語を考えるとき、それが時系列の因果関係に沿っていることを期待する。これを「因果の物語」と呼ぼう。因果の物語はわかりやすく説得力がある。だがそれで複雑な世界のすべてを言い表せるわけではない。

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テクノロジー・IT リベラルアーツ
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佐々木俊尚
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2019年12月18日
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