どこからが病気なの?

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どこからが病気なの?
著者
出版社
出版日
2020年01月10日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書によると、医療とは、医学というサイエンスと医術という実学が融合したもので、言い換えるなら「正しさ」と「お役立ち」の両輪で成り立っているのだという。世の中の医者や科学者たちは、医学的に正しければ事足りると考えているかもしれないが、私たちが求めるのは「結局どうすればいいのか」といった具体的な行動の指針だ。そこにはすき間がある。そこを「万病に効く水」や「がんと戦うな」といったトンデモ情報が突いてくる。

著者はそうした現状を踏まえて、「知的好奇心を満たしたい人が失望しない程度に学術的に、オトク情報ハンターたちが喜ぶほどに実践的で、医者としての責任を果たせる程度に正確で、誰もが気軽に読みやすい」ものを目指して本書を執筆したそうだ。その試みは、見事なまでに成功している。

本書を読むと、人体の仕組みや病気が発生するメカニズムが、目からウロコが落ちるようにクリアになっていく。具体的な行動指針にも不足しないが、そうした行動を取るべき理由がきちんと説明されているため、非常に納得感がある。

具合が悪くなって、いつものかぜや腹痛とちょっと違うなと不安に襲われたら、まずはアプリ「Q助」を開こう。医者が様子をみましょうと言ったら、その意図を察して素直に従おう。病気にかかっても、原因を何かひとつのことに求めてくよくよしたり、自分を責めたりしないようにしよう。本書を読めば、このように、病気と適切な距離をとれるようになるだろう。

ライター画像
しいたに

著者

市原真(いちはら しん)
1978年生まれ。2003年北海道大学医学部卒。国立がんセンター中央病院研修後、札幌厚生病院病理診断科へ。現在同科主任部長。医学博士。インターネットでは「病理医ヤンデル」として有名。著書に『症状を知り、病気を探る 病理医ヤンデル先生が「わかりやすく」語る』(照林社)、『病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと 常識をくつがえす“病院・医者・医療”のリアルな話』(大和書房)、『いち病理医の「リアル」』『Dr.ヤンデルの病院選び ヤムリエの作法』(共に丸善出版)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    病気のなかには、すぐには病名を確定できないものもある。「様子をみる」というのは、時間軸を活用した医者の戦略だ。一度医者が出した薬が効かなかったからといって、別の医者に行くのは正しい選択ではない。
  • 要点
    2
    病気と人体の関係は、人体を都市にたとえるとわかりやすい。かぜの諸症状は、忍び込んだウイルスと防御部隊のバトルだ。血管はライフラインであり、これに負荷をかけるのが高血圧である。
  • 要点
    3
    複雑系である人体において、体調を崩す最大の原因は、ひとつの何かに偏りすぎてしまうことだ。

要約

【必読ポイント!】 病気ってどうやって決めるの?

病気だと決めるのは誰?
http://peterschreiber.media//gettyimages

あなたや私を病気だと決めるのは、本人、医師、そして社会だ。

私たちは、具合が悪いと感じると、これまでの経験に照らし合わせて、しばらく様子をみれば治まりそうかどうかを判断する。子どもが成長するにつれ、腹痛で泣かなくなるのは、「これくらいの痛みだったら、もう少ししたら波が引いて、治るはず」「痛み止めを飲んで寝ていたら、明日には治っているはず……」などと未来予測し、判断できるようになるからだ。そしてたいていの場合、その痛みは治る。

自分の未来を自分自身で予測し、それが当たり続けている限り、医者に会いに行く必要はない。だから「病気を決めているのは自分自身」ということになる。

病院の門をくぐることになるのは、これまでに経験したことのない痛みがあるときや、症状がどんどん悪化するのを自覚したときだ。経験したことがなければ、すでに経験が蓄積されているプロに、自分の体の未来予想図を描いてもらわなければならない。病院は、患者が自分で未来を予測できないときに行く場所であり、医者は、患者に代わって患者の未来を精度高く予測する人だ。

患者と医者以外の全てである「社会」もまた、病気かどうかを決めるファクターだ。「患者」が病気であるかどうかは、必ずしも「患者」だけの問題ではない。「患者」は病気だと感じていなくても、社会的な生活が困難になると予想された場合に、周囲にいる人々が「患者」を「患者」として対処するケースがある。

病院に行くべきかを決めるには?

具合が悪くなったときにまず大切なことは、「すぐに病院に行くべきか、あるいは家でじっくり様子をみてもいいのか」を判断することだ。この判断において、自分の経験だけをよりどころにするには限界がある。そこで著者は、総務省消防庁のアプリ「Q助」を活用することを勧めている。

Q助を開くと、ざっくりしたものから徐々に小さなものへと、次々に質問が表示される。この質問に答えることで、救急車を呼ぶべきだ、少し待って翌日に病院にかかれ、などといった指示を受け取れる仕組みだ。

Q助は、病名を絞り込むためのアプリではない。しかし、今どう行動すればいいかは確実に指示してくれる。まるで名医の問診を受けているように、最初の行動までにかかる時間をぐっと短縮できるのだ。

医者はどのように病名を確定させている?
byryo/gettyimages

名医と呼ばれる人たちは、患者を診察するにあたり、そもそも思考をしていないことがある。

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要約公開日 2020.05.17
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