僕たちがスタートアップした理由

閉塞感を打ち破る若者たちのバンド感覚で起業の時代
未読
僕たちがスタートアップした理由
僕たちがスタートアップした理由
閉塞感を打ち破る若者たちのバンド感覚で起業の時代
未読
僕たちがスタートアップした理由
出版社
フォレスト出版
出版日
2012年10月26日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「起業すること」は、今でもなおハードルの高い選択肢なのだろうか。

本書はその疑問に対して、起業は以前に比べてはるかに簡単になったことから、(起業に年齢は関係ないが)出来るだけ早く起業した方が良い、と説いている。

近年の劇的なIT技術の進歩に伴い、起業に係るコストは大幅に下落している。システム面ではオープンソース化によりWebサービスを構築する工数は短縮化され、広告面ではTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを巧みに活用することにより、無料で世界中にサービスを告知することが可能となった。IT企業にとって必須となるサーバー費用も昔に比べればケタ違いに安くなっている。また、「コワーキングスペース」と呼ばれる施設では、都心でも1席当たり月額3万円程度で借りることができ、そこに会社を登記することも可能だ。 資金面でも、「シードアクセラレーター」と呼ばれる、創業から間もない複数のベンチャーに少額の投資を行って育成するベンチャーキャピタルが盛んに活動し始めている。本書はそのシードアクセラレーターの1社であるMOVIDA JAPANが説く昨今の起業環境と、その下でスタートアップ(起業)した若手起業家たちのリアルストーリーをうかがい知ることが出来る。

起業を真剣に考えている、あるいは起業という選択肢に関心はあるものの躊躇してしまっているような方にとって、その背中を押してくれるような一冊であると言えよう。

ライター画像
大賀康史

著者

監修 孫 泰蔵
MOVIDA JAPAN株式会社、代表取締役。一九九六年、東京大学在学時にYahoo!Japan立ち上げプロジェクトに参画することをきっかけに学生起業家としてインディゴを創業、その後様々なインターネット関連企業の立ち上げを行い、インターネットベンチャーの草分けとして活躍する。二〇〇二年、インターネットのブロードバンド化とともにデジタルコンテンツの世界へと事業領域を広げ、日本最大級のオンラインゲーム会社ガンホー・オンライン・エンターテイメントを創業し、二〇〇五年には株式市場への上場を果たした。その後も様々なベンチャーの創業や海外の企業との大型ジョイントベンチャー立ち上げなど、一貫して新しいベンチャーの立ち上げに従事してきた。二〇一一年、今度は世界中の起業家やベンチャーを支援・育成することに人生を捧げるべくシードアクセラレーターをスタート。ベンチャーが次の時代を切り拓き、人々のライフスタイルをリードするような社会を創っていきたいと考えている。
著 MOVIDA JAPAN株式会社 Seed Acceleration Div.
商号はMOVIDA JAPAN株式会社(モビーダジャパン株式会社)。二〇〇九年五月設立。「二〇三〇年までにアジアにシリコンバレーのようなベンチャー生態系をつくる」をミッションに、スタートアップ企業への投資および育成を専門とするシード・アクセラレーターとして活動する。

本書の要点

  • 要点
    1
    直近一〇年間のIT関連コストの劇的な低下を主因として、スタートアップはお金がかかり、大学生が就職せずに起業するのは難しい、という時代から変化した。
  • 要点
    2
    スタンフォード大学では、最も優秀な学生の層は起業し、次に優秀な層は今後伸びると判断した起業に従業員番号1桁で入ることを勧められる等、日本の就活の考え方と逆であり、「カジュアル起業」がブームとなっている。
  • 要点
    3
    経営者は修行僧のように高みを目指すのだけでなく、チームアタックにより頂上を目指すという、比較的カジュアルな起業スタイルがあるのではないか。

要約

スタートアップをめぐる3つの傾向

iStockphoto/Thinkstock
やりたいことを先に延ばして結局やらないよりも、先にやった方がリスクが少ない。

この1、2年で目立ってきた就職と起業を巡る新しい傾向として、次の3点が挙げられる。

①やりたいことがあるから起業した。

②新卒就職は2番目の選択肢だった。

③起業しやすい環境が整ってきた。

言うまでもなく、起業家にとっては「やりたいこと」が一番大事なことであり、それを実現するために起業するのであるが、これまではこの当たり前のことが出来なかった(その理由は後述する)。しかし、最近はこの当たり前のことをシンプルにやってみようと考える学生がたくさん現れてきた、というのがスタートアップをめぐる新しい傾向であり、著者であるMOVIDA JAPANはそんな若者たちの味方となることを目指している。

彼らはもちろん、すべての学生が起業するべきだ、などと主張しているのではない。学生時代にやりたいことを発見した若者は、周囲と同じく就職するのではなく、ぜひスタートアップにチャレンジしてみてはどうかと考えているのである。彼らは大企業の多くが採用している「新卒一括集団採用」を、学生が「卒業直後を逃すと就職する機会がない」という不安を抱いている原因となった、前世期の遺物であるとみなしている。一方で若者は「一流企業に入社すれば一生安泰」が神話に過ぎないということも認識しており、大企業に就職しても不安だが、新卒時に就職しないのはもっと不安、という2つの不安を抱えたまま、「自分が本当にやりたいことは何か?」と真剣に考えることなく就活を始めてしまうのだ。もうそんな時代ではないことを、採用する側もされる側もどちらもよく分かっているにもかかわらず。

MOVIDA JAPANの支援先の1つで、ソーシャル旅行サービスを手掛けるtrippiece(トリッピース)の代表取締役・石田言行氏は大手広告代理店である博報堂から内定を辞退して起業を決めた。同じく、オンラインギャラリーサービスのCreatty(クリエッティ)を立ち上げた大湯俊介氏は、コンサルティング会社への就職よりも起業の道を選択した。この二人には社内起業や2~3年の社会人経験を積んでから起業することも可能だったはずである。しかしながら、大湯氏はこう答える。「3年後にもらえる年収を捨ててまで起業に踏み切れるのか」「やりたいことを先に延ばして結局やらないよりも、先にやっちゃったほうがリスクが少ないんじゃないか」と。彼らはあくまで自分のやりたいことを最優先の選択肢と捉えているのである。

【必読ポイント!】 バンド感覚のカジュアル起業

iStockphoto/Thinkstock
なぜお金がなくても起業できるのか

学生起業家の事例を見ると、「スタートアップはお金がかかるから学生には無理、起業した人はお金持ちの息子で、特殊な育ちだから就職しないで起業できるのだろう」と考える人がいるかもしれない。しかしながら今は①起業への参入コストが劇的に下がったこと、②若者の起業を支援する動きが出てきたこと、という2つの変化によって起業に対する敷居は大幅に低下した。

起業への参入コストは、この数年間でサーバーの利用代金が驚くほど安くなり、動画をYouTubeなどにアップロードしたり、FacebookなどのSNSに写真や動画を投稿したりするのは無料、楽天・Amazonを通じてEコマースを始めることも月に数千円から数万円で出来る。以前はサーバー投資などに多額の資金が必要であったことを考えれば、一〇年前に比べIT機器関連コストは一/二〇~一/一〇〇になった。また、IT機器だけでなく、コワーキングオフィスと呼ばれる、少人数のスタートアップに向けた共同オフィスを使えば、家賃も削減できる。若者の起業を支援する動きとして、シードアクセラレーションと呼ばれる、起業支援・育成の仕組みが挙げられよう。起業したばかりのビジネスは、植物でいえばまだ種(Seed)と言え、その種の成長を加速させる(Accelerate)ことが彼らの仕事である。本書の著者であるMOVIDA JAPANのシードアクセラレーション事業では、選考を経て選ばれたシードビジネスに対して一件当たり五〇〇万円の創業資金を供与しているほか、スタートアップの成長を加速させる「人的ネットワーク」と「事業立ち上げノウハウ」を提供するMOVIDA SCHOOLを開催している。

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要約公開日 2013.10.31
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