グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」

体育教師がハーバードで見つけた天職
未読
グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」
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体育教師がハーバードで見つけた天職
未読
グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」
出版社
ダイヤモンド社
出版日
2013年04月11日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
3.0
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おすすめポイント

アメリカ大卒生の人気就職先ランキングに、毎年上位に登場する「ティーチ・フォー・アメリカ(TFA)」という非営利活動法人(NPO)をご存じだろうか。

TFAの活動は端的に言うと、ハーバードやスタンフォードなど一流大学を卒業した優秀な人材を選抜、研修後に貧困地域や教育困難校に教師として2年間派遣するプログラムを運営している。TFAのプログラムは全米の教育問題を解決するだけでなく、TFA参加者当人も大きくスキルアップするのが特徴だ。GEやマッキンゼーなどの名だたる企業の内定者は、TFAに参加するのであれば、2年間の入社猶予を得られるという。

そして、このTFAのモデルを日本に導入しようとしているのが、著者松田氏が率いるティーチ・フォー・ジャパン(TFJ)だ。松田氏は大卒後、熱血体育教師となり、その後ハーバードへ留学。そしてTFA創立者との出会いをきっかけに、日本版TFA=TFJを立ち上げ、日本の教育界にイノベーションを起こそうとしている非常にアツい人物だ。本書では、氏がどのような思いでTFJを立ち上げるに至ったのか、そしてTFJが何を目指しているのかが記されている。

社会起業に興味がある人だけでなく、「働き方」や「仕事」について何か悩んでいる人や「教育」に少しでも問題を感じているなら読んでほしい。

著者

松田 悠介
全米で就職ランキング第1位になったティーチ・フォー・アメリカ(TFA)の日本版「ティーチ・フォー・ジャパン(TFJ)」創設代表者。大学卒業後、体育科教諭として中学校に勤務。体育を英語で教えるSports Englishのカリキュラムを立案。その後、千葉県市川市教育委員会 教育政策課分析官を経て、ハーバード教育大学院修士課程(教育リーダーシップ専攻)へ進学し、修士号を取得。卒業後、外資系コンサルティングファームPricewaterhouseCoopers にて人材戦略に従事し、2010年1月に退職、現在に至る。世界経済会議Global Shapers Community メンバー。 経済産業省「キャリア教育の内容の充実と普及に関する調査委員会」委員。

本書の要点

  • 要点
    1
    著者自身が中学校時代にいじめられたが、それを乗り越えさせてくれたのが体育教師だった。その経験が元で「子どもの半歩先を照らす」「子どもときちんと向き合う」大人になりたいと体育教師を目指した。
  • 要点
    2
    自分の学校を作りたいとハーバード留学中にTFAと出会う。このしくみは全世界23カ国で取り入れられた画期的なモデルで、教育問題が解決でき、教師は自己成長ができる。これを日本でも取り入れると決意。
  • 要点
    3
    帰国後、紆余曲折を経て起業。「本気」で取り組む大切さ、NPO運営の苦労、キャリアに悩む若い世代へのアドバイス、日本での教育の現状など問題提起と解決の糸口が示される。

要約

TFAは、なぜ、グーグル、ディズニーよりも就職先として人気なのか

iStock/Thinkstock
ハーバードで見つけた僕の天職

それはまったくの偶然だった。何かに導かれたように、僕はアメリカで「天職」に出会った。当時25歳の僕はハーバードに留学していたが、慣れない英語の授業についていくので精一杯。場所を選ばず、寝る間も惜しんで課題に取り組んでいた。

その日も空いている教室で課題をやっていたが、偶然、ティーチ・フォー・アメリカという教育系NPOを立ち上げた女性の講演会がここであるという。僕も課題のノートを閉じて彼女の講演を聞いてみることにした。

TFAはハーバードやスタンフォードといった大学を卒業する優秀な学生や既卒生を選抜し、独自にトレーニングをしたうえで、彼らを貧困地域や教育困難校と言われる学校に2年間教師として派遣する。その後、卒業生は投資銀行やコンサルティングファームといった人気企業のほか、政治や産業を問わず、さまざまな業界でリーダーとなって活躍する。また、卒業生の66%はその後も教育関係のフィールドに残り、教育界に貢献し続けるのだ。「優秀な人材を巻き込み、すべての子供たちに、質のいい学習環境を提供するのが私たちの使命です」彼女がこう言ったとき、僕はこれだ、と思った。

日本でも導入すれば、きっと必ずいい影響が出る。これだ。このしくみを日本にも取り入れる。ウェンディを見送りながら、僕は自分の考えにすっかり興奮していた。

Digital Vision./Photodisc/Thinkstock
TFA卒業生が身につけている3つの能力

2010年、全米就職人気ランキング(人文学系)で、グーグル、ディズニーを抑えて一位になったのがTFAだ。ハーバードを卒業する5人に1人はTFAへの就職を希望するが、採用されるのはその10分の1という狭き門だ。

企業はTFAの卒業生を非常に高く評価している。GEやグーグルなど名だたる企業が内定者に対して、入社の猶予を与えている。2年間TFAの活動を行えるのだ。

企業がTFA卒業生に対して特に高く評価しているのは、①リーダーシップ、②コミュニケーション能力、③問題解決能力の3つの能力だ。

困難校に派遣され、クラスをまとめる。生徒とはもちろん親との信頼関係もしっかりと築き、さらに毎日のように出てくる課題を解決する。こうしたことを経験していくことで、有名企業が欲しがる、次世代を担う優秀な人材に成長するのだ。

アメリカではTFA以外にもNPO団体が就職ランキング上位にきている。終身雇用が崩れ、自己成長の場としてNPOが注目を集める時代は、日本でも、もうすぐそこまで来ている。

ティーチ・フォー・ジャパン(TFJ)の立ち上げ

いじめと暴力の日々から救ってくれた先生との出会い

僕は中学生のとき、いじめを体験した。殴る蹴るは当たり前。担任の先生や親にも相談できなかった。でも僕は幸運だった。所属していた陸上部の松野先生が気にかけてくれたのだ。

「なぜいじめられるんだろう」松野先生は僕に問いかけた。僕が考えた原因は「身長が低い」「筋肉がない」などの理由だ。先生に問われて「身長を高くするには」など。自分で考えるようになった。牛乳を飲む、十分な睡眠、トレーニングなどにより、僕は毎年10cm伸び続け、身体が大きくなると、いじめはぱったり止まった。

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要約公開日 2013.10.31
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