ヤバい経営学
世界のビジネスで行われている不都合な真実

未 読
ヤバい経営学
ジャンル
著者
フリークヴァーミューレン 本木隆一郎(訳) 山形佳史(訳)
出版社
東洋経済新報社
定価
1,600円 (税抜)
出版日
2013年03月14日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.0
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ヤバい経営学
世界のビジネスで行われている不都合な真実
著者
フリークヴァーミューレン 本木隆一郎(訳) 山形佳史(訳)
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出版社
東洋経済新報社
定価
1,600円 (税抜)
出版日
2013年03月14日
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総合
3.7
明瞭性
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革新性
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レビュー

企業の経営は常に合理的な手法やプロセスによって運営されるものなのだろうか。

本書のテーマはタイトルにもある通り、「世界のビジネスで行われている不都合な真実」を明らかにするものだ。数々のアカデミックな研究に基づいて、企業の化粧された外面の下にある企業の非合理的な側面、ヤバい真実を明らかにしている。

経営戦略は合理的なプロセスで決定される、買収は企業価値を向上するために実施する、経営者はストックオプションを報酬として受け取る、経営不振のときは人員削減を行う、企業はイノベーションをおこす必要がある、といった当たり前のように語られ、当たり前のように行われているはずのことに対して著者は疑問を投げかける。

では、どうすればよいのか。本書はビジネスのヤバい側面を数十個もの観点から指摘しているが、明確な解決策が書いてあるわけではない。「文句をつけているだけではないか」と思う読者すらいるだろう。イギリスで著者は「疑問を投げかける天才だ」などとも呼ばれているくらいだ。だからといってこの疑問に価値がないかといえば、そんなことは全くない。むしろビジネスの世界に足を踏み入れてから、慣習に従って当たり前のように行われていることを問い直すことで、新たな気付きのチャンスを与えてくれるだろう。「バイアス」から離れて経営を学べる一冊であるというところに本書を読む意義がある。

著者

フリーク・ヴァーミューレン
ロンドン・ビジネススクール准教授
専門は戦略論とアントレプレナーシップで、主にMBAとエグゼクティブMBAプログラムで教鞭をとっている。東芝、BP、フィアット、IBM、KPMG、ノバルティス、ボーダフォンなど、大企業の経営層のアドバイザーを務めるとともに、一般紙・専門誌への寄稿多数。
Academy of Management Journalの最優秀論文賞を受賞。現在は同誌を含めた経営ジャーナル4誌の編集委員を務める。ロンドン・ビジネススクールでは、ベストティーチャー賞と最優秀授業賞を受賞。

本書の要点

  • 要点
    1
    成功者のインタビューや自伝では、企業経営は常に合理的なプロセスに基づいて決められたかのように語られているが、そういった企業を現場レベルで深く調査すると、ちょっとした運や些細な出来事がきっかけとなり戦略が描かれている。
  • 要点
    2
    既存の経営施策で常識となっていることの多くは実は役に立たないものが非常に多い。
  • 要点
    3
    表面的な経営学の常識に流され意思決定を行うと、痛い目をみることになる。企業買収はその典型例である。

要約

【必読ポイント!】 世界のビジネスで行われている不都合な真実

Chad Baker/Digital Vision/Thinkstock
結局、戦略なんて存在しない?

「大成功に導く戦略、または非常に革新的な戦略というものは、合理的なプロセス、もしくは経営トップの独断から生まれることはない」という考えがある。私自身もこの考えに大いに賛成だ。このような考え方が正しいという十分な証拠はないが、数多くの企業や戦略の研究を通じて、このような考え方は正しいという印象を持っている。

企業にインタビューを行うと、戦略がどのように作り出されたのかについて、初めのうちは非常に論理的かつ合理的な回答を聞くことができる。しかし、組織をさらに詳細に調べ、管理職やベテラン技術者にヒアリングを行っていくと論理的・合理的ではなくなることがある。ちょっとした運や、思いがけない出来事のために、会社が新しい方向に進み始めただけのように見えることがあるのだ。

キューバのフィデル・カストロは、ハバナでアメリカの通信衛星からの信号を受信することでCNNを見ていた。そのことをCNN創業者のテッド・ターナーに話したことをきっかけにグローバル企業を目指し始めた。サウスウエスト航空は航空業界の競争激化によって飛行機を一機売却せねばならず、一機少ない状態で同じ路線を運航するためにLCCモデルを生み出した。

徹底的な分析や、革新的な思考プロセスの結果として戦略が生まれたと説明したいという思いは、おそらくは「合理的なプロセスの結果である」と言ったほうが、「いやぁ、偶然思いついてしまったんですよ」と言うよりも、なんとなく格好良いというところからやってくるものであろう。

iStockphoto/Thinkstock
不況時に目を向けるべきはコストより売上

一九六六年の「フォーチュン100」に載っている企業のうち、二〇〇六年に何社が生き残っているか。当時と同様に上場企業として残っているのはわずか19社だ。多くの調査や統計によって、さまざまな業界の超優良企業が、ビジネス環境の根本的な変化にうまく対応できず、ダメになっていくことが明らかになっている。これは私たちが「成功の罠」と呼ぶ現象だ。

それではこの成功の罠から抜け出すためにはどうすればよいのだろうか。不況などで苦しんでいる会社は、業績が落ち込んだ時に萎縮してしまう。これはアカデミックな研究では、「対脅威萎縮効果」と呼ばれている。苦しい会社はコアビジネスに集中し、強みを強化しようとする。逆に、コアビジネス以外は切り離して、コストを切り詰め、嵐をなんとかやり過ごそうとするのだ。

コスト構造を改善すること自体は決して悪くはないのだが、会社はコストだけではなく、売り上げにも目を向けなくてはならない。うまくいっているときは、一番重要なビジネスに力を入れたほうがいいかもしれないのに、会社は手を広げすぎることが多い。逆に問題があるときは、収入源を増やすほうがいいかもしれないのに、一つのことに集中しすぎてしまう。

調子の悪い会社は、大企業の契約を追いかけたり、全く新しい製品や顧客を開拓したりするのではなく、多くの小企業の会社を狙うべきだ。これまで通り大企業に行っていた営業手法を踏襲できるうえ、将来に向けた顧客基盤を作ることにもつながるからだ。

iStockphoto/Thinkstock
ほとんどの買収は失敗に終わる、間違いなくそうなのだ

なぜ経営者は、会社を大きくすることにこんなにも取りつかれてしまうのか。まるで、「大きいことは素晴らしい」かのようだ。この論理が企業買収を行う時の言い訳になることに私は引っかかる。「この買収により我々は業界最大の企業になれる」という文句に、どんな意味があるのだろう。

ここで企業買収に関するデータを紹介したい。株式市場で価値を生み出すかどうかという点において、七〇~八〇%の買収は失敗に終わっている。「ジャーナル・オブ・ファイナンス」に掲載された研究では、企業統合が完了して五年たった後、買収を行った企業の価値は一〇%も失われている。

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