奇跡の職場

新幹線清掃チームの働く誇り
未読
奇跡の職場
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新幹線清掃チームの働く誇り
未読
奇跡の職場
出版社
出版日
2013年12月10日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

私はかつて頻繁に新幹線を使っていたが、座席が汚いと思ったことは一度もない。そもそもそのようなことを意識すらしたことがなかった、というのが本音ではあるが、なぜあんなにもきれいなのだろうか。その秘密は新幹線の清掃を扱う株式会社JR東日本テクノハート(通称テッセイ)と呼ばれる会社にある。

新幹線に乗るとき、ホームでパリッとした制服を身にまとった「お掃除の天使たち」。新幹線が折り返して出発するまでの時間はわずか12分。お客様の降車・乗車時間を考慮すると車内清掃に避ける時間はわずか7分間しかない。その7分間で、ありとあらゆる社内の清掃をわずか22人のチームで行うのである。最近では、その神業とも言える清掃の技術が国内外のテレビや雑誌などで頻繁に取り上げられているため、ご存じの方もいることだろう。

ところで、テッセイのスタッフたちはなぜあんなにも強い現場力を持っているのだろうか。本書のテーマはまさしく「強い現場力を持つ奇跡の職場を生み出す手法」である。本書はその現場力を築いた同社元取締役の矢部輝夫氏が書いた一冊だ。矢部氏がどのような取り組みを8年間にわたって行ってきたのか、その全貌が記されている。現場の実行力の重要性を認識しているマネージャー層、経営者層には大いに参考になるに違いない。

ちなみに「現場力」の有効性を説く遠藤功氏もテッセイの心温まるサービスについて書いた「新幹線お掃除の天使たち」(あさ出版)という本を執筆しており、こちらもオススメである。

著者

矢部 輝夫
株式会社JR東日本テクノハートTESSEIおもてなし創造部長。1966年、日本国有鉄道入社。以後電車や乗客の安全対策の専門家として40年以上勤務し、安全対策部課長代理、運輸車両部輸送課長、立川駅長、運輸部長、運輸車両部指令部長などを歴任。2005年、鉄道整備株式会社(2012年に株式会社JR東日本テクノハートTESSEIに社名変更)取締役経営企画部長に就任。従業員の定着率が低く、事故やクレームも多かった新幹線清掃の会社に「トータルサービス」の考えを定着させ、日本国内のみならず海外からも取材が殺到するおもてなし集団へと変革した。

本書の要点

  • 要点
    1
    テッセイの仕事は「3K(きつい・汚い・危険)そのもの」であるにもかかわらず、スタッフがみな表情が明るく、やる気にあふれている理由は、会社が現場ありきの「全員経営」を目指しているからだ。
  • 要点
    2
    現場の課題とその改善策は、現場のスタッフが一番よく知っている。組織のチャレンジは、トップダウンで始まり、ボトムアップで達成される。
  • 要点
    3
    お客様と仕事を通じてコミュニケーションを取れること、会社が日々の努力をしっかりと評価してくれること。それによってスタッフはやりがいや生きる意味を感じる。そうすれば、どんな会社でも奇跡の職場を生み出すことができる。

要約

なぜ「3K」の仕事が奇跡の職場になったのか?

7分で新幹線をきれいにする集団
iStock/Thinkstock

テッセイの新幹線清掃、その最大の特徴は「掃除の速さ」にある。駅のホームに到着した新幹線車両が折り返して発車するまでの時間はわずか12分。降車・乗車時間を除くと、清掃に使える時間はわずか7分間しかない。

清掃と言っても、座席の下や物入れにたまったゴミをかき集め、座席の向きを進行方向に戻し、100席すべてのテーブルを拭き、座席カバーを交換し、忘れ物をチェックし、トイレを掃除し・・・と実に多くの作業をわずか7分の間で行っているのだ。

清掃するチームは1チーム22名だが、基本的には100席ある1車両を1人で清掃している。各チームは通常1日約20本の車両清掃を行っており、テッセイのスタッフが掃除する座席、拭くテーブル数は1日に合計約12万席にもなる。しかし、テーブルが汚れているというクレームは年にわずか5件程度しかないという。テッセイの仕事はまさに圧倒的なスピードと精度を持っているのだ。

スタッフがやる気にあふれる職場

バブル全盛期、日本では「3K(きつい・汚い・危険)」という言葉が流行り、この言葉は敬遠されがちな仕事に対して使われてきた。著者は、テッセイの仕事を「3Kそのものだ」と主張している。しかし、テッセイのスタッフはみな表情が明るく、やる気にあふれている。矢部氏はその理由を会社が現場ありきの「全員経営」を目指しているからだと分析している。

「礼に始まり、礼に終わる」というのはテッセイのこだわりであるが、テッセイが提供しているサービスは単なる清掃ではない。「お客様に気持ちよく新幹線をご利用いただき、かけがえのない旅の思い出をつくっていただきたい」という思いが、テッセイのスタッフ全員に浸透しているのだ。

テッセイの親会社、JR東日本の石司副社長はテッセイに関して、「サービス、おもてなしに関してはテッセイがJRグループの1周も2周も先を行っている。もはや我々の力ではその勢いを止められない」と語っているそうだ。

本書に描かれているのは、そうした「3K」の職場でも生き生きと働ける現場の仕組みの数々だ。ハイライトではその一部しか紹介しきれていないため、興味を持った方はぜひ本書を手に取っていただければと思う。

【必読ポイント!】成功の種は現場に隠れていた!

現場の課題と改善策は現場が一番知っている
iStock/Thinkstock

矢部氏がテッセイへの異動を言い渡されたのは平成17年の話である。矢部氏は高校卒業後、旧国鉄に入社、以後安全管理を専門として働いてきた。テッセイへの異動が決まった時、矢部氏の胸には「なんでこんなところに」という相当な違和感があったという。というのも、当時のテッセイの評判はあまり芳しくなかったそうだ。

しかし、テッセイに入社してすぐに気付いたのは、テッセイの実情は外からのイメージとはかけ離れていたということである。

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要約公開日 2013.12.30
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