9割の社会問題はビジネスで解決できる

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9割の社会問題はビジネスで解決できる
出版社
定価
1,760円(税込)
出版日
2021年06月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書がテーマに掲げるのは、ソーシャルビジネスだ。貧困や環境問題など、社会から取り残された問題にビジネスとして取り組むものだ。ソーシャルビジネスを成功させるのは簡単なことではない。社会の仕組みそのものに切り込んでいく必要があるうえに、ビジネスとして成立させ継続的に収益を生み出さないと、持続的な解決につながらない。

本書の著者、田口一成氏が立ち上げたボーダレス・ジャパンは、ソーシャルビジネスしかやらない会社だ。自らソーシャルビジネスを生み出すことにとどまらず、社会起業家を育成・支援している。田口氏が試行錯誤しながら生み出した社会起業家を支える仕組みは、グッドデザイン賞の受賞や、テレビ東京の番組で特集されるなど社会的にも評価されている。本書を一読すると、ビジネスの力で社会を変えようとする意気込みが力強く伝わってくる。

漠然と社会をより良くしたいと考える人は少なくないだろう。本来、人は仕事を単なる金儲けの道具とは考えておらず、社会に貢献したいという気持ちを少なからず持っているのではないか。一方で、自分の仕事がどのように社会に役立っているのか分からず、満足感を得られていない人もいるだろう。

社会を変えるための一歩を踏み出したい――。本書はその気持ちを強力に後押ししてくれるはずだ。

ライター画像
香川大輔

著者

田口一成(たぐち かずなり)
1980年生まれ。福岡県出身。大学2年時に発展途上国で栄養失調に苦しむ子どもの映像を見て、「これぞ自分が人生をかける価値がある」と決意。早稲田大学在学中に米国ワシントン大学へビジネス留学。卒業後、株式会社ミスミ(現・ミスミグループ本社)を経て25歳で独立し、ボーダレス・ジャパンを創業。現在、世界15カ国で40のソーシャルビジネスを展開し、従業員は約1500名、グループ年商は55億円を超える(2021年4月現在)。
2018年には、「社会起業家の数だけ社会問題が解決される」という考えのもと、社会起業家養成所ボーダレスアカデミーを開校。2020年には、誰もが参加できる地球温暖化対策として、自然エネルギーを広めていくための電力事業「ハチドリ電力」を自ら立ち上げた。
次々と社会起業家を生み出すボーダレス・ジャパンの仕組みは、 「グッドデザイン賞(ビジネスモデル部門)」「日本でいちばん大切にしたい会社大賞・審査委員会特別賞」を受賞。
また個人としても、日経ビジネス「世界を動かす日本人50」、Forbes JAPAN 「日本のインパクト・アントレプレナー35」に選出。
『ガイアの夜明け』『カンブリア宮殿』(ともにテレビ東京系)など、メディア出演も多数。いま最も注目されている起業家の一人。本書が初の著作となる。

本書の要点

  • 要点
    1
    ボーダレスグループは、社会問題を解決するソーシャルビジネスしかやらない会社。世界15カ国で40事業を展開。
  • 要点
    2
    「社会問題を解決するビジネス」は非効率を含んでビジネスをリデザインするため難易度が高い。そんなソーシャルビジネスを次々と生み出す仕組みと、そこに至るまでの過程が紹介されている。
  • 要点
    3
    ソーシャルビジネスの作り方、事業がスタートしてから考えるべきポイントなど、従来のビジネスとの違いも解説される。
  • 要点
    4
    最終章では、著者の展望が記されている。ビジネスという手段の使い方次第で私たち一人ひとりにできることがあると思わせてくれる、希望にあふれた一冊だ。

要約

【必読ポイント!】ソーシャルビジネスを生み出すための仕組み

ソーシャルビジネスしかやらない会社

2007年に創業したボーダレスグループは、ソーシャルビジネスしかやらない会社だ。2021年4月現在、世界15か国で40の事業を展開している。ソーシャルビジネスが取り扱うのは、「儲からない」とマーケットから放置されている社会問題だ。

資本主義社会におけるビジネスの本質は、効率の追求である。しかしソーシャルビジネスは、効率性の低さを理由に対象とされにくい人々や地域の問題を扱う。そうした非効率も含めて、経済性が成り立つようビジネスをリデザインしなければならない。

社会問題の解決は、政府や自治体、NPOの役割だと考える人も多いだろう。しかし、持続的な社会問題の解決は、ビジネスのリデザインにより消費者に受け入れられる仕組みが必要となる。慈善活動や公的な取り組みだけでは限界があるのも事実だ。

社会起業家を支える仕組み
Nastco/gettyimages

ソーシャルビジネスは、非効率を含んでビジネスをデザインする必要があるため、従来型のビジネスより難易度は上がる。ボーダレス・ジャパンは、社会起業家の数だけ社会問題は解決するとの前提に立ち、自らを社会起業家のためのプラットフォームと定義する。

社会問題を解決したいという想いがあっても、ノウハウも自信もないと踏み出せずにいる人もいるだろう。そこでボーダレスグループでは、新卒、第二新卒の場合には、3人一組に1000万円を渡し、1年間起業を体験する場を提供している。1年後には、自らのビジネスプランを完成させ、グループ各社の全社長が参加する「社長会」で、全会一致の賛同が得られたら、会社が設立され、自身の描いたプランを実装していくこととなる。

ボーダレスグループは、事業開始後も伴走型の支援を継続し、マーケティングやバックオフィス業務をサポートしたりして、社会起業家たちを全面的に支える。

孤立を避けながら自立を促すために

ボーダレスグループの資金源は、グループ各社の余剰利益である。余剰利益をグループで共通のポケット=財布に入れ、新たなソーシャルビジネスへの支援に充てているのだ。なんとか利益を出せるようになった起業家は、自分が受けた恩を次のチャレンジャーに送る。この仕組みは「恩送り」と呼ばれ、グループ内の相互扶助エコシステムの柱となっている。

一方、ボーダレスグループの各社の経営は独立している。採用や投資、報酬などは各社の裁量に任されている。ボーダレスグループの重要事項は、全社長が参加する「社長会」で決定される。各社社長は等しく1票を持ち、全員賛成が原則だ。一人でも反対すれば却下され、やり直しとなる。

事業が黒字化した後も、営業利益が対前年度比で3カ月続けて下回ると、社長はリバイバルプランを示し、他の社長からの指摘や助言を踏まえて案を練り上げていく。経営者同士のコミュニケーションを重視し、全社長によるオンライン会議は月1、2回開かれ、孤立を避けながら自立を促している。

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要約公開日 2021.10.12
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