人体大全
なぜ生まれ、死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか

未 読
人体大全
ジャンル
著者
ビル・ブライソン 桐谷知未(訳)
出版社
定価
2,970円(税込)
出版日
2021年09月15日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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なぜ生まれ、死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか
著者
ビル・ブライソン 桐谷知未(訳)
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定価
2,970円(税込)
出版日
2021年09月15日
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4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
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おすすめポイント

ある科学者に「いまいちばん危険な病気はなにか」と尋ねたところ、「インフルエンザ」と即答された――本書には、このような記述がある。本書の原著が出版されたのは2019年10月で、取材が行なわれたのは新型コロナウイルスのパンデミックが始まるほんの少し前のことだったというから、なんとも予言的なエピソードではないだろうか。

『人体大全』と名付けられたこの本は、23章にわたって人体のあらゆることが語られている、まさに「大全」と言える一冊だ。科学的な事実に基づいているが、もちろん専門書ではない。人体の不思議さとすばらしさについて、数々のトリビアを交えながら楽しく解説していく。

頻繁に出てくるのが「よくわかっていない」という言い回しだ。「指紋はなんのためにあるのか」よくわかっていない。「あくびにはどのような役割があるのか」よくわかっていない、といった具合だ。にもかかわらず、読んでいると次から次へと新しい知識に出会い、よくわかったという感慨が浮かんでくるから不思議だ。よくわかっていないこと以外は、よくわかっていることがよくわかった、とでも言い表せばよいのだろうか。

中には、わたしたちが信じ込んでいたことがマヤカシだったという指摘も多い。たとえば、ヒトは脳の一部しか使っていないといわれるが、まったくそんなことはない、などなど。読んだ先から誰かに話したくてたまらなくなるような知識と、極上の読書の楽しみを提供してくれる本だ。

ライター画像
しいたに

著者

ビル・ブライソン(Bill Bryson)
1951年、アイオワ州デモイン生れ。イギリス在住。幅広いテーマでベストセラーのあるノンフィクション・ライター。主な著書に『英語のすべて』、『アメリカ語ものがたり1・2』、『究極のアウトドア体験』『ドーナッツをくれる郵便局と消えゆくダイナー』『人類が知っていることすべての短い歴史』、『シェイクスピアについて僕らが知りえたすべてのこと』、『アメリカを変えた夏1927年』などがある。王立協会名誉会員。これまで大英帝国勲章、アヴェンティス賞(現・王立協会科学図書賞)、デカルト賞(欧州連合)、ジェイムズ・ジョイス賞(アイルランド国立大学ダブリン校)、ゴールデン・イーグル賞(アウトドア・ライターならびに写真家組合)などを授与されている。

本書の要点

  • 要点
    1
    人体は途方もない数の元素によって構成されているが、それら自体が生きているわけではない。こうした物質を集めて生命ができているのは、不思議なことだ。
  • 要点
    2
    現在の科学が人体について解明できていることは、実はきわめて少ない。しかし、人間の体は日々何も意識することなく、必要な酸素や栄養を摂取し、細菌やウイルスといった外敵から身を守り、排泄し、生殖して種として繁栄しているという、奇跡的な存在である。
  • 要点
    3
    出産が女性に与えるリスクを代表として、疑問の残る変化もあるが、人体は現生人類が30億年の進化の過程で偶然に獲得したものである。

要約

科学的に説明できない人体の仕組み

物質たちの不思議な協調行動

人体は途方もない数の元素によって構成されている。

生命の基本単位は細胞で、細胞には、リボソーム、タンパク質、DNA、RNA、ミトコンドリアなど、その他たくさんの微細で謎めいた物質が詰まっている。そうした物質自体は“生きている”とはいえないし、細胞もただの小部屋としてそれらを収めているだけだ。しかしどういうわけか、こうした物質すべてをひとつに集めると生命が生まれる。その仕組みは現在の科学では説明がついていない。

注目すべきは、そこには“指揮者”がいないということだ。細胞の各成分は他の成分からの信号に反応し、ぶつかったり押し合ったりしているだけにみえる。しかしそうしたあらゆる動きが、細胞内だけでなく全身でみても円滑な協調行動をつくりだしているのだ。

完璧ではないが優秀な人体
mustafahacalaki/gettyimages

人体はよく機械にたとえられるが、機械よりはるかに優れていると言ってよい。定期修理や予備部品の取りつけなしで1日24時間、数十年間にわたって働き続け、わずかな燃料で稼働し、柔らかく、それなりに美しい。熱心に生殖に励み、冗談を言うことも、誰かや何かに愛情を感じることもできる。

人体はタフで寛容でもある。ジャンクフードを口に放り込み、煌々と光るディスプレイの前でだらだら過ごすことも許してくれる。心臓発作を起こすことはほとんどないし、喫煙者でさえ6人に5人は肺がんにならない。毎日、あなたの細胞の約5個ががん化していると推定されるが、免疫系がそれをすかさず殺してくれる。わたしたちの体は、ほぼ休みなく、ほぼ完璧な協力態勢で働いてくれる、37兆2000億個の細胞から成る宇宙なのである。

ただし、人体は決して完璧ではない。顎が小さすぎるせいで親知らずが収まらないし、骨盤を小さくしすぎたから、他の動物に比べて出産には耐えがたい痛みが生じる。それでも、わたしたちがいくつかの弱点に打ち負かされずに生き延びてきたことは奇跡だ。あなたは、30億年にわたる進化が微調整を積み重ねた結果、いまこの形で生きているのだ。

【必読ポイント!】 人体の驚くべき仕組み

微生物のマイホーム「皮膚」

皮膚はおそらく、人体で“最も融通の利く”器官である。中身を保持し、悪いものを締め出すことで体を守り、打撃を和らげ、ヒトに快感と温かさと痛みをもたらし、日光から体を守り、自ら修復もする。加えて、外観の美しさの源でもある。

皮膚の機能のなかでも、汗腺の果たす役割は非常に重要だ。汗をかいて体の余分な熱をすばやく放散することで、最も温度に敏感な器官である脳を守っている。わたしたちの体は生きた“エアコン”のようなものなのだ。

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