人生の扉を開く最強のマジックの表紙

人生の扉を開く最強のマジック

スタンフォードの脳外科医が教わった


本書の要点

  • 欲しいものがなんでも手に入るというルースのマジックは、「からだを緩める」「頭の中の声を止める」「心を開く」「なりたい自分を描く」ことから成る。ただし、本当に欲しいものを見つけるには、心を開いて、心の声を聞かなくてはならない。

  • 心を開く「心のアルファベット」の最初は共感(COMPASSION)だ。共感とは、他者の苦しみに気づき、その苦しみをやわらげようとする意識である。

  • 共感は本能である。人の脳には、お互いを助けたいという願望が埋め込まれている。

1 / 4

ルースのマジック

ルースとの出会い

長いあいだ、脳は固定的で変化しないものと考えられていた。しかし、いまでは脳は非常に柔軟で、刺激に順応し変容するものであることがわかっている。専門用語では、これを脳の「神経可塑性」という。この特性を少年時代の著者ジムに身をもって理解させてくれたのは、手品用品専門店「マジックショップ」で出会ったルースという女性だ。彼女との出会いは1968年にさかのぼる。「ジム、どう? 本物のマジックを習いたい?」この問いがジムの運命をガラリと変える契機となった。当時のジムは、誰からも求められないと感じていた。誰の役にも立たず、誰も気づかない場所に置きっぱなしにされているかのようだった。ジムの父親はアルコール中毒で何日も家を空けることが多く、母親はうつ病を患っていた。翌月の家賃の心配も絶えない。いつアパートを追い出されるかとびくびくしていた。周りの誰もが自分のことで精一杯だったのだ。

身体を緩めること

pinstock/gettyimages

そんなジムにルースはあるマジックを授けてくれた。マジックは四つの教えから成る。一つ目の教えは、「からだを緩める」こと。そして二つ目は「頭の中の声を止める」こと。呼吸に意識を集中して、浮かんでくる思考を遮断することによって、自分の考えから自分自身を切り離す。そして次の10カ条の言葉を繰り返すことである。「僕には価値がある。愛されている。大切にされている。僕は他人を大切にする。自分のためにいいことだけを選ぶ。他人のためにいいことだけを選ぶ。僕は自分が好きだ。他人が大好きだ。僕は心を開く。僕の心は開かれている」。最後は「なりたい自分を描く」ことだ。そうすれば欲しいものがなんでも手に入るという。だが、その前に三つ目の教えである「心を開く」ことが欠かせない。ルースは次のように忠告している。「このマジックを使う前に、心を開いて、何が欲しいかをよく知らなくちゃならないの。本当に欲しいものを知らずに、欲しいと思い込んでいるものを手に入れたら、欲しくないものが手に入ってしまうの」。

お金が欲しい

ジムは大人になってから、こう振り返っている。12歳の少年はこの「心を開く」ことの意味をあまりよく理解できないままスキップしてしまったと。欲しいものがいっぱいあったため、早く最後のマジックにたどり着きたかった。何より貧困から抜け出すためのお金が欲しかったのだ。ジムが挙げた欲しいものは次のものだった。「アパートを追い出されないこと、好きな子とのデート、大学に行く、医者になる、100万ドル、ロレックス、ポルシェ、豪邸、島、成功」。最初の願いごとを頭の中で繰り返すうちに、それが現実になった。強く願えばそれがかなうことを12歳のジムは確信した。

2 / 4

富と成功、そして挫折

マジックの正体

「強く思えば、望んだものが手に入る」。これは神経科学と脳の可塑性の強力な例である。意識を向けることには大きな力があり、それは脳を変え、学習や成果や夢の実現を助ける部分を強化する。ルースは、誰も面倒を見てくれない貧しい子という自画像からジムの意識を逸らせて、心がいちばん欲しているものに集中させた。これがルースのマジックの正体だ。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2705/4011文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2021.10.21
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

世界で活躍する人の小さな習慣
世界で活躍する人の小さな習慣
石倉洋子
がんばらない戦略
がんばらない戦略
川下和彦たむらようこ
気くばりがうまい人のものの言い方
気くばりがうまい人のものの言い方
山﨑武也
なぜ、あなたは他人の目が気になるのか?
なぜ、あなたは他人の目が気になるのか?
根本裕幸
自己肯定感のコツ
自己肯定感のコツ
植西聰
「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない
「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない
坪田信貴
TIME SMART
TIME SMART
柴田裕之(訳)アシュリー・ウィランズ
破壊的イノベーションの起こし方
破壊的イノベーションの起こし方
松本勝

同じカテゴリーの要約

ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科
ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科
堀田秀吾
悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方
悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方
小川仁志
なぜ、あの人との会話は嚙み合わないのか
なぜ、あの人との会話は嚙み合わないのか
米澤創一
1つの習慣
1つの習慣
横山直宏
精神科医が教える! 心がスッと軽くなる93の処方箋
精神科医が教える! 心がスッと軽くなる93の処方箋
樺沢紫苑
社会は、静かにあなたを「呪う」
社会は、静かにあなたを「呪う」
鈴木祐
DIGITAL STANCE スマホに支配されない生き方
DIGITAL STANCE スマホに支配されない生き方
ピョートル・フェリクス・グジバチ
不機嫌を飼いならそう
不機嫌を飼いならそう
藤野智哉
時間・自己・幻想
時間・自己・幻想
マルクス・ガブリエル大野和基(インタビュー・編)月谷真紀(訳)
不条理な世の中を、僕はこうして生きてきた。
不条理な世の中を、僕はこうして生きてきた。
宮下友彰
無料