ある八百屋さんでは、普通はあまり伝えないあることを伝えているのだという。それはいったいなんだろうか。
答えはなんと、「今日おすすめしない野菜や果物」だ。おすすめしないことを正直に伝えれば、その商品は売れ残る。しかし、それでいいのだという。常連さんばかりのその店で、「おいしくない野菜や果物」が買われてしまったら、店の評判が落ち、お客さんを失うかもしれない。だから悪い点も正直に伝えているのだ。
著者がこの話を聞いたとき、この八百屋さんの伝え方には「伝わる技術」が凝縮されていると感じた。まず、「ダメなものを伝えることで良いものが引き立つ」という「比較の法則」が使われている。そして、正直に話すことで「信頼感」が生まれ、相手に言葉を受け止めてもらいやすくなる流れが生まれている。
伝わり方を変えるには、「伝わる技術」を身につけることが一番だ。自分が主体になって「伝える」のではなく、相手を主体にして「伝わる」ようにする。この技術は、実はいたるところで使われている。ちょっとしたコツを押さえるだけで、日常生活や仕事など、さまざまなシーンに活用できるだろう。
人は伝えてもらわないとわからない。しかも、うまく伝えないと伝わらない。言葉だけでなく、態度や表情も重要な要素だ。
付き合い始めの頃はしょっちゅうパートナーに「愛してるよ」と言っていたのに、年月を重ねるうちにその気持ちを口に出さなくなったとしよう。心の中で愛が深まっていたとしても、相手は「もう愛されていないんじゃないか」と思うかもしれない。「言わなくても伝わる」「前に伝えたから大丈夫」は通用しない。言葉はもちろん、態度や表情も含めてちゃんと伝えなければ伝わらない。
人は正しさではなく、「伝わったこと」で判断する。伝わらないものは存在していないのと同じだ。心の中のような見えない部分は判断材料になりにくい。
著者の知人に、「地道に一生懸命仕事をしていたのに、仕事は頑張らずに上司にゴマをすっている社員のほうが評価が高かった」という愚痴をこぼす人がいた。
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