リスク、不確実性、利潤

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リスク、不確実性、利潤
ジャンル
著者
フランク・H・ナイト 桂木隆夫(訳) 佐藤方宣(訳) 太子堂正称(訳)
出版社
定価
4,950円(税込)
出版日
2021年07月29日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.0
革新性
4.5
応用性
4.5
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リスク、不確実性、利潤
リスク、不確実性、利潤
著者
フランク・H・ナイト 桂木隆夫(訳) 佐藤方宣(訳) 太子堂正称(訳)
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4,950円(税込)
出版日
2021年07月29日
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おすすめポイント

本書の原著『Risk, Uncertainty and Profit』は、フランク・H・ナイトによって1921年に出版されたものだ。「シカゴ学派」の第一世代として有名な経済学者であるナイトは、自由主義市場経済体制を擁護し、ケインズ主義的経済介入(市場に政府が積極的に介入することで経済はうまくいくという主張)に異議を唱えた。その後、シカゴ学派の中心的存在を担ったミルトン・フリードマンもナイトに多大な影響を受けたとされている。

『Risk, Uncertainty and Profit』が意義ある書物として評価され続けている最大の理由は、本書内でリスクと不確実性の違いを明確にし、「不確実性」という概念を確立したことだ。そして測定できない不確実性こそが、進歩と利潤の源泉であると説く。

ナイト氏の文章は入り組んでおり、翻訳者による手助けがあるとしても、決して初学者が読みやすいものとはいえない。それでも100余年にわたって読み継がれているということは、それだけ現代にも大きな価値をもつということだ。

社会が変化するスピードは確実に速くなっており、新型コロナウイルスや気候変動など、懸念は絶えない。2016年に行われた「ダボス会議」で、「Volatility(変動)」「Uncertainty(不確実)」「Complexity(複雑)」「Ambiguity(曖昧)」の頭文字をとった「VUCA(ブーカ)」という言葉が使われたことは記憶に新しい。本書こそ、不確実な世界に生きる現代の私たちが取り組むべき一冊なのかもしれない。

ライター画像
小林悠樹

著者

フランク・H・ナイト(Frank Hyneman Knight)
1885-1972 20世紀を代表する米国の経済学者。自由主義市場経済体制を擁護し、ケインズ主義的経済介入に異議を唱える「シカゴ学派」の始祖として知られる。主な著書に『フランク・ナイト 社会哲学を語る』(黒木亮訳、ミネルヴァ書房)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    「リスク」とは測定可能な不確実性を意味し、「不確実性」は確率計算できない真の不確実性を意味する。
  • 要点
    2
    不確実性を減少させる方法は、「事例の集合化」と「専門化」だ。自由企業体制では、この2点によって可能な限り不確実性を低減させようとしている。
  • 要点
    3
    利潤は費用や労働者に対する報酬をすべて支払い終えた後に残った収益のことを指す。不確実性のもとにおける企業家の責任の行使でしか、利潤は生じない。
  • 要点
    4
    対処すべき不確実性の問題に適した人物をあてがい、その人物の判断力を啓発していく。その能力こそが経営者の本質的な特徴である。

要約

リスクと不確実性の区分

測定可能なリスクと、測定不可能な不確実性

現実社会において、何かを生産する「費用」と生産物の「価値」は偶然同じになる場合もあるが、たいていは「利潤」という差異が現れる。そして経済学においてこの利潤をどう捉えるかは、完全競争と現実の競争との違いにも関わってくる問題だ。その本質は、本書のタイトルにもなっている「リスクと不確実性」の関係から見出せる。

リスクと不確実性とは特に区別されることなく、日常的にも経済的議論でも広く用いられ、同時に曖昧さを包含している。しかしリスクには、測定可能な量を意味する場合と、そうではないものの2つがある。そこで、測定可能な不確実性を「リスク」と定義し、「不確実性」という用語は測定不可能で非数量的なもののみに限定する。この「不確実性」こそが、現実世界の競争と理論上の競争との違いを適切に説明し、利潤の理論の基礎となるのだ。

理論経済学の問題
z_wei/gettyimages

理論経済学は、単純化された条件のもとで何が起こりうるかという点を議論するものである。だがそれは、理論物理学ほどの有効性は持ち合わせていない。その原因は、理論経済学が自身の本質と限界を厳密かつ明瞭に示しえていないからだ。もちろん、仮定の上で成り立つ完全競争に加えて、競争が完全ではないような状況についても同時に言及されてきた。しかし、完全競争が現実の競争とどれくらい乖離しているのか、「結論を現実に当てはめるにはどのような修正が必要か」という点については、体系的な視点は確立せぬままである。

本書が書かれる以前、利潤についての議論の中心にあったのはJ・B・クラーク教授の「利潤の動態理論」、F・B・ホーレー氏の「リスク理論」であった。ただしクラーク氏は利潤とリスクとの関係について何も探究していないし、ホーレー氏はリスクを既知の数量として扱って、特別に定義が必要なものと考えていない。企業家精神の本質に責任とリスクを想定したホーレー氏であっても、計算や統計的方法によって確定できるリスクと、測定できない不確実性との間の根本的な違いを明示することに失敗している。

ゆえに、それらの理論のうちにある正しい原理を調停しつつ、不確実性の意味の違いとその競争的経済関係における重要性を探究することが、本書の第一の主題となる。

不確実だからこそ知性的な判断が行われる

不確実性の世界

人が生きているのは常に変化を伴う世界であり、いうなれば「不確実性の世界」である。ビジネスについてもそうだが、まったくの無知や完全情報ではなく、部分的な根拠や価値に基づいて私たちは行動している。だからこそ、不確実性の意義、ひいては認識とは何かについて問う必要があるのだ。

心の本質は未来思考である。意識ある生命は、ある状況が起こる前にそれに反応できるからだ。そうして人は世界を知覚し、そこから推測した「イメージ」に対して反応する。無論、その推測は誤ることもある。自身の行動が引き起こす結果さえ正確に知ることはできないし、そもそもイメージ通りに行動できるわけでもない。

あらゆる推論は類推によって成り立っている。したがって、過去によって将来を判断する。「同じ種類の出来事は同じように作用する」という類似性を見出して分類する。ただし、将来の状況は無数の要因に影響されるので、すべての対象を検討することは決して現実的ではない。だからこそ、科学者が研究する論理的思考ではなく、私たちは日常的に推論に基づいた決定、確率判断を行っているのだ。

確率と知性的な判断
p1images/gettyimages

推測が偶然に左右されやすく確率が不明瞭な場合、「どのような行動が最適か」を決めるのは容易ではない。

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