Unlearn(アンラーン)

人生100年時代の新しい「学び」
未読
Unlearn(アンラーン)
Unlearn(アンラーン)
人生100年時代の新しい「学び」
未読
Unlearn(アンラーン)
出版社
出版日
2022年01月24日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

人は誰しも、何かしら自分だけのこだわりを持っている。自分はこういうタイプの人間で、こういう生き方のスタイルだというこだわりが、その人の個性を生み出すこともあるだろう。しかし、あまりにも自分をパターンにはめ込みすぎると、自分が変わらなければいけないときに、その必要性に気づくことができないかもしれない。そうなれば、周囲の変化に適応できず、漠然と「うまくいかない」という感覚を抱くことになるだろう。

そんなときに必要とされるのが、本書のテーマである「アンラーン」だ。字面を見ると、「学ばないこと」という意味に見えるかもしれない。しかし、実際に意味するところは、学びをやめることでも、学んだことをすべて捨て去ることでもない。自分の思考を整理して、不要なものを切り捨てて新たな学びと成長のための余白を生み出すことだ。さまざまな情報が氾濫し、常に何かを学ぶことが推奨される現代において、社会の変化に対応し、新たな学びを得ることで、より良い人生を送るために必要な考え方といえるだろう。

本書は、経済学者と元陸上競技選手の二人の著者による、対談と共著のパートで構成されている。それぞれ、ユニークな経歴を持つ著者たちの実際の経験に基づいた説明は、強力な説得力がある。

「うちの会社はこうだから」「前例がないから」といった言葉が聞こえてきたら、それはアンラーンのタイミングだ。変化し続ける環境の中で、よりより生き方を見つけたいと思ったら、本書が心強い伴走者になってくれることだろう。

ライター画像
大賀祐樹

著者

柳川範之(やながわ のりゆき)
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授。
中学卒業後、父親の海外転勤にともないブラジルへ。ブラジルでは高校に行かずに独学生活を送る。大検を受け慶應義塾大学経済学部通信教育課程へ入学。大学時代はシンガポールで通信教育を受けながら独学生活を続ける。大学を卒業後、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。
主な著書に、『法と企業行動の経済分析』(第50回日経・経済図書文化賞受賞、日本経済新聞社)、『40歳からの会社に頼らない働き方』(ちくま新書)、『東大教授が教える独学勉強法』『東大教授が教える知的に考える練習』(草思社)などがある。

為末大(ためすえ だい)
1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2021年12月現在)。
現在は執筆活動、会社経営を行なう。
Deportare Partners代表。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。YouTube為末大学(Tamesue Academy)を運営。国連ユニタール親善大使。主な著作に『Winning Alone』(プレジデント社)、『走る哲学』(扶桑社新書)、『諦める力』(プレジデント社、小学館文庫プレジデントセレクト)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    アンラーンとは、これまでに学んだ知識や身につけた技術を振り返り、さらなる学びや成長につながる形に整理し直すことで、長いスパンで活躍し続けられるようになるための方法である。
  • 要点
    2
    人間は周囲の環境に適応するために、思考をパターン化して固定化する。あまりにも固定化し過ぎると変化に対応できなくなるため、定期的に思考を整理して自分のクセを見直す必要がある。
  • 要点
    3
    ルーチンやパターンを意識化して、本当に必要かどうか見直し、これまでとは違うことに積極的に挑戦したり、自分との違いが大きい人と接したりして、パターンを抜け出すことが大切だ。

要約

アンラーンとはなにか

大人にこそ不可欠な「新しい学び」、アンラーン

本書は、東京大学で経済学を教えている柳川範之教授と、元・陸上競技選手で現在はスポーツの枠を超えた幅広い活動を行う為末大氏の共著である。柳川氏は父親の仕事の都合でブラジルに滞在し、学校に通わず独学で高校の勉強をしていた。また、為末氏は陸上選手時代コーチをつけずに練習し、引退後はビジネスパーソンにキャリアチェンジを行った。変わった形で自発的な「自分なりの学び」を経験してきた二人は、キャリアを考え、いくつになっても学び続ける素養として、これまでの学びに重視されてきた「インプット」以上に重要なものがあると考えている。それが「アンラーン(unlearn)」だ。

アンラーンを分かりやすく言い換えると、「これまでに身につけた思考のクセを取り除く」ことだ。人は、環境に適応して発想や選択をある程度パターン化することで、スムーズに物事を進められるようになっている。しかし、特定の環境に適応し過ぎると、環境が急変してパターンが通用しなくなった際に、「やったことがない」「前例がない」とすぐに対処することができなくなってしまう。パターン化された思考のクセは、柔軟な発想を妨げ、成長を止めてしまうことがある。そうならないために、思考のクセを捨て、より良い学びを実践しなければならない。そのための技術が、アンラーンだ。

同じパターンだけでは、うまくいかなくなるときが来る
BartekSzewczyk/gettyimages

為末氏によると、アスリートには競技能力を高めるプロセスで、アンラーンが必要とされる。たとえば、自転車に乗れるようになった人は、無意識にペダルを漕ぐようになっている。しかし、トップの自転車選手になりたければ、無意識でできるようになったペダリングをいったん忘れて、意識的にラーニングし直すことで、動きを調整しなければならない。この「競技能力を高める」ことを一般人に置き換えると、「社会で生き抜く能力を高める」ことになるだろうと柳川氏は指摘する。

アスリートが「ついてしまった変なクセ」を直さなければいけないように、ビジネスパーソンも「ついてしまった思考のクセ」を直さなければいけないときがある。たとえば、効果的なプレゼンの方法を身につけ、思い通りに仕事を運んだ経験をした人は、次回からも同じ方法でプレゼンしようとするものだ。いつの間にか「プレゼンのやり方」がパターン化し、無意識に「いつもの」プレゼンをやり続けるようになる。しかし、本来はプレゼンに絶対的な正解はない。パターン化されたものがたまたまうまくいっていたとしても、テーマや相手、マーケットなどが変われば、やがて必ずうまくいかないタイミングが訪れる。このとき、プレゼンで無意識に行っていることを意識的に認識し直し、修正するのが、アンラーンだ。

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要約公開日 2022.03.10
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