ミッション・エコノミー
国×企業で「新しい資本主義」をつくる時代がやってきた

未 読
ミッション・エコノミー
ジャンル
著者
マリアナ・マッツカート 関美和(訳) 鈴木絵里子(訳)
出版社
NewsPicksパブリッシング 出版社ページへ
定価
2,310円(税込)
出版日
2021年12月22日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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国×企業で「新しい資本主義」をつくる時代がやってきた
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マリアナ・マッツカート 関美和(訳) 鈴木絵里子(訳)
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定価
2,310円(税込)
出版日
2021年12月22日
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革新性
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応用性
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おすすめポイント

政府はイノベーションの旗振り役となる「ハイリスク初期投資家」である。

こう聞くと「え、本当?」と疑う人も多いのではないだろうか。政府は、腰が重くて縦割り行政で非効率といったイメージが付きまとうきらいがある。イノベーションと聞けば、テスラを創業したイーロン・マスクのような起業家が思い浮かぶはずだ。

しかし本書を読むと、政府はイノベーションにおいて極めて重要な役割を果たしてきたとわかる。過去に政府がハイリスク初期投資家として辣腕をふるった最たる例が、月面着陸を成功させた「アポロ計画」だ。NASAは月面着陸というミッションを達成するため、民間企業を巻き込みながら新たな技術を次々に開発していった。その時に生まれた技術は後のIT革命にもつながった。前述のイーロン・マスクのテスラも、成功した背景には政府のバックアップがあった。ただし、政府のバックアップを受けて成功したテスラの富は、市民に分配されていない。本書はその問題点についても触れている。

山積みの社会課題を解決するため、政府はアポロ計画の時のような「ミッション志向」で民間企業と共に市場を「共創」する方向性を説く。同時に、市場で創出された富は市民に還元される仕組みを、設計していく必要があると強調する。

本書を読むとこれまでの政治・経済に対する見方が一変するはずだ。

ライター画像
若旦那

著者

マリアナ・マッツカート(Mariana Mazzucato)
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン経済学教授。同大学イノベーション&パブリックパーパス研究所創設所長。世界保健機関(WHO)「万人の健康のための経済会議」議長。
現代を代表する経済学者としてリベラル派・保守派を問わず近年絶大な人気と信頼をほこり、イタリア、スコットランド、南アフリカなど各国政府の経済アドバイザーを務める。2020年、WIRED誌「資本主義の未来を築くリーダー25人」、Fast Company誌「ビジネス界の最もクリエイティブな50人」、GQ誌「英国で最も影響力のある50人」に選出。同じく2020年、NHK「コロナ危機 未来の選択」に出演し、大きな反響を呼んだ。著書に『企業家としての国家』(薬事日報社)ほか。日本では本書が一般書としては初の本格紹介となる。

本書の要点

  • 要点
    1
    官民が手を取り合って課題解決に取り組む「ミッション志向」が今の社会課題の解決に求められている。
  • 要点
    2
    「企業こそが価値を創造する」という根強い思い込みが存在する。しかし実際は価値創造とそのためのリスクテイクに政府の役割が重要だ。
  • 要点
    3
    民間企業が敬遠するハイリスクの初期投資を政府が行うことにより、社会全体に化学反応を起こした事例は数多い。その最たる例がアポロ計画である。
  • 要点
    4
    政府支出を失敗の修正ではなく、市場の成長への投資と捉えること。そして「平等な競争環境の確保」ではなく、市場の方向性を共創し、競争環境をその方向に誘導することがカギとなる。

要約

【必読ポイント!】次なる「アポロ計画」への視座

「ミッション志向」で挑め

1962年9月、ジョン・F・ケネディ大統領は演説で「人類がこれまでに着手した中で、最も危険で困難で偉大な冒険に乗り出す」と発表した。7年後の1969年7月20日、アメリカは月面着陸を成功させた。かの有名な「アポロ計画」である。

アメリカ政府はアポロ計画に280億ドル(2020年の価値に置き換えると2830億ドル)を投じた。国家予算の4%に当たり、米航空宇宙局(NASA)、大学、請負業者など40万人以上が携わった。

アポロ計画は政府が主導権を握り、コンピュータや電気機器、栄養学や材料など、中小企業から大企業までありとあらゆる民間企業と連携して取り組んだ。団結してひとつの方向に向かう原動力となったのは「自分たちは大きなミッションの一部だ」との気概だった。

今の社会課題の解決には、官民が手を取り合って臨む「ミッション志向」が求められている。感染症の世界的流行、環境問題など「やっかいな」問題は、テクノロジーのイノベーションだけでなく、社会と組織と政治のイノベーションがなければ解決できない。

政府の役割は「救済」「再分配」ではない
Henrik5000/gettyimages

世間の根強い思い込みに「企業こそが価値を創造する」というものがある。政府の仕事はゲームのルールを決め、規制し、再分配し、市場の失敗を直すことだと思われがちだ。

公的機関は自ら社会課題を解決しようとはせず、公共事業の民営化や外注を進めてきた。民間企業主導の方が効率的と誤解し、節約になると期待しているのだ。

しかし実際は、価値創造とそのためのリスクテイクに政府の役割が求められる。たとえばシリコンバレーの確立は、国家によるハイリスク投資のたまものだ。民間部門が尻込みするリスクの高いテクノロジー開発に対し、初期に投資したのは政府だった。

インターネットの誕生につながる投資を行ったのは、国防総省内の国防高等研究計画局(DARPA)である。ワールド・ワイド・ウェブの発明の母は、欧州原子核研究機構(CERN)だった。他にも、GPSはアメリカ海軍の資金で開発され、SiriはDARPAの資金によるものだった。タッチスクリーンディスプレイの開発資金は当初CIAが提供した。

イノベーションのプロセスに公的機関の関与は欠かせない。大胆な公共投資がなければ、長期かつ多額で先の見えない事業への投資に、民間企業は躊躇するはずだ。公共部門がリスクを背負った後にこそ、生まれてくるチャンスに民間企業は飛び乗ってくる。

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