行動経済学の使い方

未 読
行動経済学の使い方
ジャンル
著者
大竹文雄
出版社
定価
902円(税込)
出版日
2019年09月21日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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行動経済学の使い方
著者
大竹文雄
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定価
902円(税込)
出版日
2019年09月21日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
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おすすめポイント

誰かの行動を変えるのは難しい。いくら言っても子どもは勉強しないし、部下は現状に安住しているように見える。この程度ならしつけやリーダーシップ論で解決できるかもしれないが、国家のリーダーが国民全員を説得し、行動変容を呼びかけるとなると話は別だ。実際、新型コロナウイルスへの対応では各国のリーダーにそのような役目が期待された。リーダーや専門家は熱意あふれる演説を行ったが、もしかしたら本当に必要なのは、行動経済学の知見だったのかもしれない。

本書のテーマである行動経済学とは、人間がしばしば不合理な意思決定をすることを前提に、よりよい行動へ誘導する「ナッジ」の設計などを研究する経済学の一分野だ。たしかに私たちには、ダイエットやテスト勉強をぎりぎりまで先延ばしする、同じ額でも所得税より消費税の負担を重く感じるなどといった特性がある。このような特性は、伝統的な経済学では説明のつかないものだった。

ナッジとは、これらの不合理な特性を逆手にとって、私たちの行動をより良くするものだ。テスト勉強なら必要な勉強時間を配分して計画を立てるのが合理的だが、計画通りに行動できる保証はない。それなら毎日の勉強を習慣化できるよう、行動を工夫したほうがいい。これもナッジのひとつだ。

本書を読めば、自分と他者の行動を気持ちよく変化させるヒントが得られるだろう。思うように物事が進まないとイライラする前に、ぜひ手に取ってほしい。

ライター画像
ヨコヤマノボル

著者

大竹文雄(おおたけ ふみお)
1961年京都府生まれ.1983年京都大学経済学部卒業,1985年大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了,1996年大阪大学博士(経済学).大阪大学社会経済研究所,同大学院経済学研究科教授などを経て,
現在―大阪大学感染症総合教育研究拠点特任教授
専攻―行動経済学,労働経済学
著書―『日本の不平等』(日本経済新聞社)により2005年日経・経済図書文化賞,2005年サントリー学芸賞,2005年エコノミスト賞を受賞.ほかに『経済学的思考のセンス』『競争と公平感』『競争社会の歩き方』(いずれも中公新書),『経済学のセンスを磨く』(日本経済新聞出版社),『医療現場の行動経済学』(平井啓との共編著,東洋経済新報社)などがある.
2006年日本経済学会・石川賞,2008年日本学士院賞受賞

本書の要点

  • 要点
    1
    行動経済学は、従来の経済学とは異なり、人間を完全に合理的な存在とはみなさない。行動経済学において人間は、利得よりも損失を大きく感じる、嫌なことを先延ばしにする、直感に頼るなどといった特性があるとされる。
  • 要点
    2
    ナッジとは、行動経済学的な知見を使うことで、人々をよりよい行動に誘導するものだ。法律による規制や金銭的な見返りを用いることなく、行動変容を実現する。
  • 要点
    3
    同じ報酬でも、意味のある仕事ができたと認識するだけで仕事への意欲が増す。

要約

行動経済学の基礎知識

従来の経済学と行動経済学の違い

従来の経済学では、人間というものを、自分の利益を最大にするために情報を最大限に利用し、合理的な行動計画を立てて実行する生き物とみなしてきた。行動経済学は、その人間像をいくつかの点で変えている。

1つ目は、不確実性のもとでの意思決定の仕方だ。行動経済学では、プロスペクト理論と呼ばれる考え方で意思決定すると考えられている。

2つ目は、行動タイミングに関する意思決定の仕方だ。従来の経済学とは異なり、人間は、決めたことであっても気が進まなければ先延ばしして後悔することも多いとされている。このような先延ばし行動は、現在バイアスという特性を用いて説明される。

3つ目は、人間の利他性についてだ。伝統的な経済学は利己的な人間を前提としていたが、行動経済学では、人間は利他性や互恵性をもっているとする。

4つ目は、直感的な意思決定についてだ。行動経済学では、人間は計算能力が不十分であり、直感的な意思決定をするものだとしている。この直感的意思決定をヒューリスティックスと呼ぶ。

要約ではこの4点のうち、プロスペクト理論と現在バイアスについて取り上げる。

プロスペクト理論
Hakase_/gettyimages

あなたは、降水確率が何%以上だったら傘をもって出かけるだろうか。雨に濡れるリスクを避けたい人は、降水確率が低くても傘をもって出かけるだろう。一方、濡れるリスクを気にしない人は、降水確率が高くても傘をもたずに出かけるだろう。

伝統的な経済学では、人間は、何かが起こる確率と、それが起こったときの利得を掛け合わせて意思決定すると考えられてきた。しかし実際には、私たちはすべてについてそうした計算をしているわけではない。

一方、行動経済学において、リスクのもとでの意思決定には、確実なものを強く好む「確実性効果」や、同じ額を得るのと失うのでは、失う方を何倍も嫌うという「損失回避効果」という2つの特徴がある。これらの特徴をまとめて、プロスペクト理論と呼ぶ。

現在バイアス

伝統的な経済学では、「太った人は合理的な意思決定の結果太っていて、太ることを望んだ結果だ」と考える。「食欲が満たされる嬉しさ」と「それによって将来太るという損失」を天秤にかけて、前者が後者を上回る限り食べ続けるものと考えるのだ。

しかし実際には、ダイエットの決意が固くても、食欲を優先することはあるはずだ。いざ計画を実行する時になると、目先の楽しみを優先し、計画を先延ばしにしてしまう――。このような人間の対応を、行動経済学では「現在バイアス」という。

とはいえ、すべての人が現在バイアスのもとで先延ばし行動をとっているわけではない。自分に現在バイアスがあることを自覚し、給与を天引きして貯蓄に回す、スナック菓子を買い置きしないなどの「コミットメント手段」を利用している人が多いからだ。

ナッジとは何か

ナッジとスラッジ
Image Source/gettyimages

ナッジとは、これまで紹介してきたような意思決定の歪みを、行動経済学的特性を用いてよりよいものに変えていこうというものである。一般的には、人々の行動を変えようとするとき、法的に規制して罰則を設けたり、税や補助金による金銭的インセンティブを使ったりすることが多い。しかしナッジは、法的な規制も金銭的インセンティブも用いないで行動変容を引き起こす。例えばカフェテリアで果物を目の高さに置いて、果物の摂取を促進するといったことだ。

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