14歳で“おっちゃん”と出会ってから、15年考えつづけてやっと見つけた「働く意味」

未読
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14歳で“おっちゃん”と出会ってから、15年考えつづけてやっと見つけた「働く意味」
出版社
ダイヤモンド社

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定価
1,760円(税込)
出版日
2020年09月01日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

ホームレスの人に対する世間の目は冷たい。自己責任のひと言で片づけたり、仕事なら探せばいくらでもあるだろう、と怠けのせいにしたりする。しかし本書を読むと、一度住まいを失うとそこから自力で這い出すのはほぼ不可能であることがわかる。そんな現実を前に、著者はホームレスの自立支援活動を一貫して続けている。

きっかけは、14歳のときに炊き出しのボランティアに参加したことだった。そこから、ひとりの若者の冒険が始まった。そう、そのストーリーは「冒険」と呼ぶのがふさわしい。要約では順風満帆なサクセスストーリーになってしまうが、実際は多くの壁にぶつかり試行錯誤、挫折とリカバリーの繰り返しである。その都度頭がちぎれるほど考えてきた。仲間との出会いや別れもある。それらが、コミカルな表現を交えながら、リアリティをもって描かれている。

経歴を見ればわかるように、著者は成功した社会起業家としてすでに高い評価を得ている。ただ本書を読むと、起業はあくまで手段であり、思いはホームレスの人たちの支援で終始貫かれている。その先にあるのは、失敗しても誰でも安心して立ち直れる社会だ。そうした社会では、著者のように、人生を賭けた大きな挑戦に飛び込む人がもっともっと増えてくるだろう。

それにしても、ここまで本人を駆り立てているものは何だろうか。それは「知ったなりの責任」という言葉に込められているように思う。形ばかりの責任感や正義感というより、自分が生きるリアルに対して誠実たれ、というある種の潔癖さ、潔さを感じた。

ライター画像
しいたに

著者

川口加奈(かわぐち かな)
認定NPO法人Homedoor(ホームドア)理事長
1991年、大阪府生まれ。14歳でホームレス問題に出合い、ホームレス襲撃事件の解決を目指し、炊き出しやワークショップなどの活動を開始。17歳で米国ボランティア親善大使に選ばれ、ワシントンD.C.での国際会議に参加する。高校卒業後は、ホームレス問題の研究が進む大阪市立大学経済学部に進学。19歳のとき、路上から脱出したいと思ったら誰もが脱出できる「選択肢」がある社会を目指してHomedoorを設立し、ホームレスの人の7割が得意とする自転車修理技術を活かしたシェアサイクルHUBchari(ハブチャリ)事業を開始。また2018年からは18部屋の個室型宿泊施設「アンドセンター」の運営を開始する。これまでに生活困窮者ら計2000名以上に就労支援や生活支援を提供している。世界経済フォーラム(通称・ダボス会議)のGlobal Shapersや日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」、フォーブス誌による日本を変える30歳未満の30人「30 UNDER 30 JAPAN」、青年版国民栄誉賞とされる日本青年会議所主催の「第31回 人間力大賞グランプリ・内閣総理大臣奨励賞」など、受賞多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    一度ホームレス状態になると、仕事・貯金・住まいという「負のトライアングル」にはまり、そこから抜け出すのはほぼ不可能だ。
  • 要点
    2
    ホームレスの人の就業支援と大阪市の放置自転車という2つの課題を同時に解決するのが、シェアサイクル事業だ。
  • 要点
    3
    支援のイメージは民間が提供するセーフティネットである。まずは、心身ともに落ち着ける環境の中で、今後どうしていきたいかを考える時間を持ってもらう。
  • 要点
    4
    さまざまな支援メニューを用意して、その中からオーダーメイドでその人の状況に合わせて自由に支援プランを組み立てていく。

要約

おっちゃんたちは、こうして暮らしている

知ったなりの責任

日雇い労働者の街、大阪「釜ヶ崎」。著者は14歳の中学2年生のときに、好奇心に駆られてホームレスの人たち(親しみを込めて「おっちゃん」と著者は呼ぶ)への炊き出しのボランティアに参加する。

当時の著者は、ホームレスになるのは自己責任で、その人が悪いからだと思っていた。そこで、元ホームレスのおっちゃんに「勉強して、がんばっていたらホームレスにならなかったんじゃないですか?」と、なんとも直球の質問を投げかけた。すると、貧乏で高校には行けず、中学を出てからずっと釜ヶ崎で働いていた話をしてくれた。著者は自分が「がんばる」かどうかを選べる立場にいることを思い知った。

こうして現実のおっちゃんたちを知ったからには、「知ったなりの責任」を果たしたいと感じた。

7割の人たちは働いている
danefromspain/gettyimages

次に参加したのが「夜回り」だ。夜回りとは、ホームレスの人が寝ているところに、お弁当を配って回る活動である。

そこで衝撃的な数字を知った。年間213人。2004年当時、大阪市内の路上で凍死したり餓死したりした人の数だ。

ホームレスの人は怠けていると思われがちだが7割近くの人たちは働いている。主な仕事は缶や段ボールといった廃品の回収だ。集めて回るのは家庭からゴミが出たあとの夜中になる。通勤通学の朝の時間帯に見かけるホームレスの人が、寝ていたり、中にはお酒を飲んでいたりすることが多いのはそのためだ。

廃品回収は、10時間かけて1000円にもならないような仕事である。それでも、ホームレスの人たちにはその仕事しかない。100円のカップ酒が唯一の楽しみなのだ。

さまざまな差別にもあい、青少年による襲撃や凍死、餓死とも隣り合わせ。路上の生活は想像以上に過酷である。

人生の転落を防止する柵になりたい

高校進学後も仲間を募って、炊き出しや夜回りなどの活動を続けた。米国ボランティア親善大使にも選ばれた。それでも、当事者たちの現実は何も変わっていなかった。

夜回りのとき、あるおっちゃんから言われた「わしにもできる仕事ないかな」というひと言がずっと心に引っかかっていた。ホームレスの人が働くには大きな壁がある。ホームレス状態から抜け出したくても抜け出せない。そうした現状の根っこには何があるのか考えるようになった。

大学は、ホームレス問題に熱心な大阪市立大学に進んだ。そして2年生のときに、友人2人と「ホームドア(Homedoor)」という団体を立ち上げ、あるNPO法人が主催する社会起業塾に史上最年少での入塾を果たした。

ホームドアには、居場所としてのホームの入口という意味と、人生からの転落を防止する柵になりたいという思いを掛けている。

【必読ポイント!】 シェアサイクル始まる

路上生活の負のトライアングル

活動を続けるなかで、一度ホームレス状態になるとそこから抜け出せない「負のトライアングル」とも呼ぶべき3つの要因があることに気づいた。「仕事」と「貯金」と「住まい」だ。それぞれが相関しており、どれか1つだけを手に入れようとしても、他の2つを持っていないと難しくなってしまう。

ホームレス生活は、実は出費が多い。必ず外食になってしまうし、500円があればコインランドリーやコインシャワー、銭湯を利用したい人も多い。最低限のことにお金を使って初めて、貯金の余裕が生まれるのだ。そして、まとまったお金がないと住まいは借りられない。

日雇いではない仕事をしようにも、携帯電話がなければ、面接に行っても採用通知を受け取る電話番号がない。いざ就職となっても、マイナンバーや給与口座のために住所が必要になる。そこで家を借りようとしても住民票が求められる。

自力で路上から脱出することは不可能に近いのだ。

どんな人でも抜け出せるように
bowie15/gettyimages

そのとき構想したのが、「6つのチャレンジ」と呼ぶ支援のステップだ。このステップを刻んでいく仕組みは、今でもホームドアの中核をなす理念となっている。

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要約公開日 2022.05.04
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