本書は「チャレンジ‼オープンガバナンス(Challenge Open Governance: COG)」という企画を通して生まれた対話を集めたものだ。COGは、自治体とタッグを組んだ市民や学生チームが、地域の課題解決のアイデアを応募する、コンテスト形式のプレゼン大会だ。2016年の初回以来、著者はこのCOGの審査委員を務め、運営事務局や参加者の方の熱意や創意工夫に心打たれ、「これこそが民主主義だ」と思うようになった。
本書の目指すところは、この感動を多くの人に知ってもらい、市民と行政が協働で地域の課題解決に取り組む「オープンガバナンス」に、多くの人に加わってもらうこと、さらには日本に真の意味での政治参加の文化を定着させることである。
本書の主なポイントは三点ある。
第一のポイントは「デジタル化時代の民主主義」だ。かつて郵便と印刷術が人々の平等化につながったように、現在のデジタル化の進展も民主主義の新たな可能性を開くかもしれない。いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)も、単なる技術的変化ではなく、政治や経済、社会のあり方を変えてこそ意味がある。
第二は、「日常に根差した民主主義」である。選挙だけが民主主義ではない。地域の社会的課題を市民自ら解決していくことこそが民主主義だ。「政府」や「役所」もそのための手段にすぎない。わたしたちは民主主義を自分たちのものにする必要があるのだ。
第三のポイントは「社会を変える人の力」である。著者がCOGなどの場で出会った平場で発揮される強いリーダーシップを持っている人たちは、自らの情熱と行動、そして魅力的な「言葉」で人を動かしていた。そこにはその人の人格に根ざす「人間力」のようなものが重要な働きをしているように感じられた。
本書を手に取った皆さんには、新たな民主的な政治参加の文化の確立に加わり、日本社会にふさわしい新たな民主主義論を共に生み出してもらいたい。
SDGs(持続可能な開発目標)に掲げられたさまざまな問題を解決していくことは、私たちの最大の課題だ。自分たちが実際に何をすればいいかを考えるにあたって、著者は学生団体VONS(Volunteer by Okinawa Next generation and Students)の創設者である平敷雅(へしきみやび)さんと、NHKの報道番組「クローズアップ現代」で23年間キャスターを務めた国谷裕子さんと議論を交わした。
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