模倣と創造

13歳からのクリエイティブの教科書
未読
模倣と創造
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13歳からのクリエイティブの教科書
未読
模倣と創造
出版社
出版日
2022年03月31日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

模倣と創造。要約者は、その2つは相反するものだと思い込んでいた。

YouTubeに代表されるフィールドの誕生によって、多くの人が表現をしやすくなった現代。次々に公開されるものの中には既視感のあるものも多い。それらを臆することなく社会に発信できる人たちに対して批評家めいた見方をしつつ、どこか羨ましさを感じてしまってもいた。

要約者は中学生まで絵画教室に通っていたが、気がつくと「好きに描く」から「上手に描く」に重心が移っていき、しまいには「上手に描けないから嫌い」に至った苦い思い出がある。目の前にあるものを見たとおりに描くのは案外難しいものだ。思うように描けないことにモヤモヤし、模倣することに後ろめたさと気恥ずかしさを覚えて、「好き」の気持ちが薄れてしまったのだろう。

本書は、「創造」のプロフェッショナルである著者、佐宗邦威氏が、「『まねる』を1週間だけ続けてみる」「あなたの経験の星座をつくろう」など、クリエイティブになるための習慣・考え方を教えてくれる一冊だ。特に印象に残ったのは「創造する力とは希望をつくる力」「模倣は、創造の道の第一歩」という言葉だ。中学生のときにこうした言葉を知っていたらとも思うが、今からでも遅くはない。まずは著者の教えどおり、一日ひとつ好きなイラストをまねて描いてみることから始めたい。

本書で紹介される習慣・考え方を取り入れれば、観察力や表現力が培われ、目の前の仕事がもっとクリエイティブなものになるだろう。創造的でありたいすべての人に、ぜひ手にとってほしい一冊である。

ライター画像
Keisuke Yasuda

著者

佐宗邦威(さそう くにたけ)
株式会社BIOTOPE代表/チーフ・ストラテジック・デザイナー。多摩美術大学特別准教授/大学院大学至善館特任准教授。東京大学法学部卒業、イリノイ工科大学デザイン研究科(Master of Design Methods)修了。P&Gマーケティング部で「ファブリーズ」「レノア」などのヒット商品を担当後、「ジレット」のブランドマネージャーを務める。その後、ソニーに入社。同クリエイティブセンターにて全社の新規事業創出プログラム立ち上げなどに携わる。ソニー退社後、戦略デザインファーム「BIOTOPE」を起業。企業の経営者に伴走したミッション、ビジュアルデザインや企業文化のデザインが得意領域。山本山、ぺんてる、NHKエデュケーショナル、クックパッド、NTTドコモ、東急電鉄、日本サッカー協会、ALEなど、バラエティ豊かな企業・組織のイノベーション支援を行なっており、個人のビジョンを駆動力にした創造の方法論にも詳しい。教育現場にて、創造的学びを教えるビジョンのアトリエ・ワークショップをライフワークにして行なっている。
著書に『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』(クロスメディア・パブリッシング)、『直感と論理をつなぐ思考法』(ダイヤモンド社)、『ひとりの妄想で未来は変わる』(日経BP)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    創造力は希望をつくる力だ。創造は日常をより楽しいものにし、人生をより自分らしいものにしてくれる。
  • 要点
    2
    創造する力を身につけるためにまずすべきことは、模倣だ。観察と模倣の蓄積によってセンスが磨かれる。センスを磨くには、上質な体験に投資することも有効だ。
  • 要点
    3
    ユニークな経験を重ねてキャリアの星座をつくろう。キャリアの全体像が見えていなくても、一つひとつをやり切って、星座の一部をつくることが大切だ。

要約

内なる創造性を掘り起こす

自分のMini‐cに目を向ける

創造は「生き残るための手段」や「才能ある一部の人のもの」ではない。創造は、日常をより楽しくし、人生をより自分らしいものにしてくれる。創造力は希望をつくる力だ。

創造する力を身につけるためには、まねをすること、つまり模倣が重要だ。何かを観察して模倣する行為は、創造脳を動かす第一歩になる。

もうひとつ重要なのは、創造を仰々しいものととらえないことだ。創造性研究の分野では、創造性をBig‐C(大文字の創造性)とMini‐c(小文字の創造性)の2つに分ける。Big‐Cは、社会に大きな影響を与え、高く評価される、スティーブ・ジョブズやパブロ・ピカソなどの創造性をいう。一方Mini‐cは、絵を描く、動画を撮る、新しいレシピを試すなど、誰もが日常的にやっている創意工夫を指す。

Big‐Cの前には無数の名もなきMini‐cがある。現代は、アプリを使って、誰もが気軽にMini‐cを発揮できる時代だ。自分自身のMini‐cに目を向けてみよう。

模倣――まねる

観察する
masa44/gettyimages

本書では、創造の本質が、模倣・想像・創造の3つの段階に分けて紹介される。第1段階の「模倣」で大切なのは、小さな違いまで観察し、感性のセンサーを働かせることだ。感性のセンサーが働くようになると、自分のなかに「美しい」「いいな」などといった感覚のデータベースがつくられていく。

まずは、目の前のりんごを1分間、目をそらさずじっくり観察してみよう。デッサンするつもりで観てみると、ものの見方の解像度が上がり、「こっちのりんごはつやがあるな」「この曲線のほうがきれいだな」などと、対象の細部まで感じられるようになる。

手を動かす

著者がこれまで出会ってきたデザイナーやクリエイターは、決まって手書きの習慣を大事にしていた。ペンと紙を使って手を動かすのは、「考えたものを描き出す」のではなく「描くことで考える」行為だからだ。

基礎トレーニングとして、一日ひとつ、好きなイラストをボールペンで写してみよう。ボールペンを使い切るまでこのトレーニングを続ける。

手を動かしていると、細部が気になったり、イラストの個性に気づいたりと、手で考える感覚を実感できるはずだ。まずは、自分が心惹かれるものを「まね」て、良い創作物の型を身体で覚えることから始めよう。「まねる」のコツがつかめると、自分の好みもはっきりしてくるはずだ。

良いものを体験する

センスとは、良いものを感じた総量だ。センス磨きは、「いまどんな心地なのか?」を常に自分に問いかけることからスタートする。自分の感覚に目を向ける習慣がつくと、センスの経験値が蓄積し始めるのだ。

センスを磨くためには、上質な体験に投資することが大切だ。著者の場合は、

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要約公開日 2022.07.01
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