「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?

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出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2020年03月21日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書のテーマは「良い人材が健全に定着する組織を作る方法」だ。ポイントは、社員の「プラスの感情」ではなく「マイナスの感情」に焦点を当てていること。その理由は、不満や不公平感といったマイナスの感情は、人のココロに強く作用し、長期にわたってさまざまな影響を及ぼすからだそうだ。

個人や組織に蓄積したマイナスの感情は、最終的には「離職」につながる。経営・人事は、リモートワークやフレックス制の導入など、社員の働きやすさに配慮した施策をほどこし、離職を防ごうとするものの、なかなかうまくいかないのが実情だろう。

本書の著者は、産業医として活躍する上村紀夫氏だ。本書では、医療・心理・経営の知識に加え、「産業医面談で得られた従業員の声」「従業員サーベイで得られる定量データ」「コンサルティング先の経営者や人事担当者の支援・交流で得られた情報」をもとに、マイナス感情の発生要因やメカニズム、離職の防ぎ方などについて詳細に解説している。

組織で働くうえでマイナス感情が皆無という人はいないだろう。本書にあたれば、そうした一人ひとりのマイナス感情はどのように生まれ、どうすれば解消できるのかが、客観的に捉えられる。その意味で、経営・人事に限らずすべてのビジネスパーソンにとって、自身の働き方を考えるうえで一読の価値がある書だといえるだろう。

ライター画像
しいたに

著者

上村紀夫(うえむら のりお)
株式会社エリクシア代表取締役・医師・産業医・経営学修士(MBA)。1976年兵庫県生まれ。名古屋市立大学医学部卒業後、病院勤務を経て、2008年ロンドン大学ロンドンビジネススクールにてMBAを取得。戦略系コンサルティングファームを経て、2009年「医療・心理・経営の要素を用いた『ココロを扱うコンサルティングファーム』」として株式会社エリクシアを設立。これまで30000件以上の産業医面談で得られた従業員の声、年間1000以上の組織への従業員サーベイで得られる定量データ、コンサルティング先の経営者や人事担当者の支援・交流で得られた情報をもとに、「個人と組織のココロの見える化」に取り組む。心理的アプローチによる労使トラブル解決やメンタルヘルス対策の構築、離職対策のコンサルティング、研修、講演などを行う。

本書の要点

  • 要点
    1
    組織が病む原因は、「マイナス感情」、つまり不満や不公平感の蓄積にある。マイナス感情の発生対象は、「心身コンディション」「働きやすさ」「働きがい」の3つだ。
  • 要点
    2
    不活性化しやすい組織には、3つのタイプがある。ストレス耐性が低めの社員が多い「砂の城」系組織、働きやすさを無視して働きがいを追求する「やりがい搾取」系組織、働きやすさを過度に追求する「ぬるま湯」系組織だ。
  • 要点
    3
    離職防止施策の対象として優先すべきは、組織のけん引役である「優秀人材」よりも、3~5年後に優秀人材になることが期待されている「ハイポテンシャル人材」だ。

要約

「組織の病巣」を解剖する

組織の病の原因は「マイナス感情の蓄積」

近年、多くの組織が病んでいる。社員の不調、生産性・モチベーションの低下、職場の雰囲気の悪さ、採用の苦戦、離職……そうした組織の病の原因は、「マイナス感情」、つまり不満や不公平感の蓄積にある。マイナス感情はプラス感情よりも強烈で、長期にわたってさまざまな影響を及ぼす。

マイナス感情は、個人レベルで蓄積するだけでなく、組織全体にも蓄積していく。インフルエンザウイルスが感染し、発症し、他の人に伝染していくのと同様、マイナス感情が生まれると、離職やメンタル不調などの症状が出て、周りのメンバーにも影響していく。

マイナス感情の発生対象

社員のマイナス感情の発生対象は、「心身コンディション」「働きやすさ」「働きがい」の3つだ。著者はこれらを合わせて「個人活性」と呼ぶ。個人活性は、人が活き活きと働けるかどうかを決める重要な要素だ。

「心身コンディション」と「働きやすさ」と「働きがい」は、ピラミッドのように積み重なっている。心身コンディションが土台となっており、これがグラつくと、働きやすさと働きがいも崩れる。

ケーススタディー:業務負荷が急増するケース
Doucefleur/gettyimages

マイナス感情が蓄積していくパターンとして、本書では6つのケーススタディーが紹介されている。そのうちの一つが、業務負荷が急増して疲労が溜まり、精神的な限界を迎えるケースだ。

業務負荷が増えていくと、疲労が溜まって「心身コンディション」が悪化する。そのような状況が続くと、「どうして私たちだけ」と不公平感が出たり、人間関係がギスギスしたりと、社内の雰囲気が悪くなり、徐々に「働きづらさ」が悪化する。

すると今度は「働きがい」の低下が起こる。仕事に対して後ろ向きになっていき、メンタルダウンや離職が引き起こされるのだ。

対策としては、業務量を削減するのが一番だ。難しければ、心身コンディションを保つ方法を模索しよう。会社側としては、疲労が溜まっている社員を早期発見し、「心身コンディション」の悪化を食い止めることを最優先にしたい。管理職による現場での声掛けや、過重労働時の心身健康を確認する問診票の作成、産業医面談の実施などが挙げられる。同時に、目先の「働きづらさ」を解消するために、業務管理改善のための管理職教育や、業務の偏りで生じる不公平感をなくすなどといった施策が考えられる。

離職の3つのタイプ

マイナス感情が蓄積していくと、最終的には離職が発生することになる。離職には、会社都合のもの(解雇など)と個人都合のもの(家族の転勤や出産育児など)を除けば、次の3つのタイプがある。

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要約公開日 2022.07.15
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