スタンフォードの眠れる教室

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スタンフォードの眠れる教室
出版社
出版日
2022年04月15日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

2017年、「睡眠負債」という言葉がユーキャン新語・流行語大賞のトップ10に選ばれた。本書の著者、西野精治氏は、日本で「睡眠負債」を流行させた立役者だ。米国スタンフォード大学の医学部教授として、睡眠・覚醒の研究を行ってきた専門家である。

著者によると、「睡眠負債」は、単純に「眠りが足りない」という問題ではない。睡眠不足による脳と体へのダメージは、借金のように徐々に積み重なって弊害が出てくるという。

睡眠は、心身の健康のみならず、仕事のパフォーマンスにも直結している。要約者自身も睡眠に課題を抱えていた。なかなか寝つけない日が多く、仕事の効率が落ちてしまうことが多かったのだ。本書を読んで、睡眠の質を改善するヒントをいくつも得ることができた。

著者は本書で、睡眠に関する49の質問に答えてくれる。特に印象に残ったのが、入眠直後の90分間の深い睡眠「黄金の90分」だ。「黄金の90分」が、睡眠の質を高め、健康に近づくためのカギを握っているという。

では、「黄金の90分」を確保して脳と体をリセットし、スッキリ目覚めるにはどうすればいいか。ポイントは「覚醒スイッチをオン・オフすること」にあるようだ。

本書を読めば、新たな「モーニング・ルーティン」と「ナイト・ルーティン」を得て、質のよい睡眠を確保できるようになるだろう。睡眠に問題意識を持っている人や、仕事のパフォーマンスを改善したい人にとって、本書はうってつけの一冊に違いない。

著者

西野精治(にしの せいじ)
スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠・生体リズム研究所(SCNラボ)所長。医師、医学博士。株式会社ブレインスリープ最高研究顧問。
1955年大阪府生まれ。1987年、当時在籍していた大阪医科大学大学院からスタンフォード大学医学部精神科睡眠研究所に留学。突然眠りに落ちてしまう過眠症「ナルコレプシー」の原因究明に全力を注ぐ。1999年にイヌの家族性ナルコレプシーにおける原因遺伝子を発見し、翌2000年には研究グループの中心としてヒトのナルコレプシーの主たる発生メカニズムを突き止めた。
2007年、日本人として初めてスタンフォード大学医学部教授に就任。睡眠・覚醒のメカニズムを、分子・遺伝子レベルから個体レベルまでの幅広い視野で研究している。
2019年、ブレインスリープを創業。現在は最高研究顧問を務めている。
1963年にウィリアム・C・デメント博士により創設された「スタンフォード大学睡眠研究所」は、世界の睡眠医学を牽引しており、数多くの睡眠研究者を輩出していることから「世界最高の睡眠研究機関」と呼ばれている。

本書の要点

  • 要点
    1
    入眠直後の「黄金の90分」には、「脳と体の休息」「記憶の整理・定着」「ホルモンバランスの調整」「免疫力アップ」「脳の老廃物を取る」という、5つの重要な生理現象が行われている。
  • 要点
    2
    脳をリラックスさせる習慣の中から、自分に合うものを組み合わせて「ナイト・ルーティン」を作ろう。
  • 要点
    3
    入浴だけで寝つきにくい人は、目や耳を温める商品を活用したり、首に温かい蒸しタオルを当てたりと、副交感神経を優位にする習慣を試してみるといい。

要約

寝られなくても大丈夫!「黄金の90分を制す」授業

Q. 朝も昼も眠くて困っています。

睡眠は時間だけでなく質も重要だ。いくら長時間寝ていても、質がよくないと健康に悪影響がある。「朝の目覚めが悪い」「寝ても疲れが取れていない気がする」「日中、ぼんやりして集中できない」「イライラしがち」「昼間や夕方に眠くなる」のうち1つ2つ当てはまっていたら、あなたの睡眠の質は低いといえそうだ。

睡眠中には脳の老廃物が取り除かれる。質の悪い睡眠は、たとえるなら、汚れた皿で食事を続けるようなものだ。次に寝るまで体と脳のメンテナンスができないので、かなりイヤな一日になってしまう。

ただし、科学的に睡眠の質を判定するのはかなり難しい。設備の整ったクリニックに最低1〜2泊して、睡眠ポリグラフの機器を装着し、専門医に観察・分析してもらってようやく評価できるものだ。だからまずは、自分の感覚を頼りにしてほしい。先ほど挙げた5つの自覚症状があるなら、睡眠の質を見直そう。

Q.「黄金の90分」とはなんですか?
Gumpanat/gettyimages

著者は、入眠直後のおよそ90分間、一番深いノンレム睡眠が出てくる時間を「黄金の90分」と呼ぶ。この90分間には、「脳と体の休息」「記憶の整理・定着」「ホルモンバランスの調整」「免疫力アップ」「脳の老廃物を取る」という、5つの重要な生理現象が行われている。

「黄金の90分」には、成長ホルモンが大量に放出される。これは、子どもだけの話ではない。大人であっても、「黄金の90分」に成長ホルモンが分泌され、肌の調子が整う、骨が強化されるといった効果が期待できる。

なお「黄金の90分」は就寝時間とはさほど関係ない。何時に寝ても、最初の眠りが「黄金の90分」だ。「日付が変わる前に寝ないと黄金の90分にならない」「午後10時から午前2時までがお肌のシンデレラタイム」は誤りである。

仕事や育児、介護などで忙しい人や、シフト制で働く人にとって、日付が変わる前に寝たり、理想の睡眠時間を確保したりするのは難しいだろう。「7時間の理想の眠り」は無理でも、「最初の深い眠りである黄金の90分の確保」を目指してほしい。

【必読ポイント!】まずはここから!「心地よい入眠」の授業

Q.寝つきが悪くて困っています。

いざベッドに入っても寝つけない人は、過緊張・過覚醒の状態が続いているケースが多い。

日中は誰でも緊張・覚醒している。仕事や勉強、複雑な会話や機器の操作ができるのは、脳と体の覚醒スイッチが「オン」になっているからだ。このスイッチは、眠る頃には自然と「オフ」になるものだが、寝つきが悪い人は、布団に入ってもずっとオンのままなのだ。

寝つきを良くするには、覚醒スイッチをオフにする必要がある。

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要約公開日 2022.07.12
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