技術的発明と社会的発明のギャップ
テクノロジーと人間の労働の代替
人類はこれまで技術的発明の才を存分に発揮し、驚異的な進化の歴史をたどってきた。さまざまなイノベーションにより生活水準は向上し、平均寿命が大きく伸びた。その恩恵は同時に経済と社会のあり方を様変わりさせ、私たちはいま、まったく新しいタイプの創意工夫、つまり「社会的発明」の必要性に迫られている。AIとロボット工学の分野では、コンピュータの4つの法則(ムーアの法則、ギルダーの法則、メトカーフの法則、ヴァリアンの法則)が相互に影響し合い、指数関数的な技術的進歩を遂げてきた。自動運転車は普及するときが近づきつつある。また、製造現場のロボット導入はいっそう進むだろう。人間が生産ラインに立つと人間のスピードがボトルネックになるからだ。
人間が機械に勝てる領域を目指す

近年、機械学習(ML)により飛躍的進歩を遂げたAIは、その触手を人間の守備範囲ともいえる認知プロセスの領域にまで伸ばしはじめた。グーグル傘下のAI企業ディープマインドは、「アルファ・ゴ(Alpha Go)」を開発した。そしてこのプログラムに、囲碁の対局に勝つことを追求するよう指示した。すると、プログラムみずから目標に向かって判断して動き、囲碁の世界タイトル保持者に勝利を収めたのだ。テクノロジーの進化はそれを活用する人々の仕事のあり方を変質させる。人間の労働との代替リスクはレジ係やトラック運転手のほか、弁護士や会計士などの専門職にも及ぶ。私たち人間が機械に勝てる分野はあるのだろうか。